*ブラザーコンプレックス12*
*パラレル設定
*商社マンライル
許せる方のみど〜ぞ
久しぶりに寄った隣町の本屋。
さっきまでは晴れていたのに、急に雨雲がやってきたらしい。
本屋を出てヤバイなと思っているうちに降り出してきた。
あっという間に土砂降りになり、傘を持っていない俺は仕方なく軒下に飛び込んだ。
「半端ない降り方じゃねーの、これ」
コンクリに跳ね返る水滴が大きい。
立っているだけで足元はびしょ濡れになってしまう。
兄さんに迎えにでも来てもらおうか
そう考えて携帯を取り出すが、今日は遅くなると言われていたのを思い出した。
「…しばらく待つかぁ」
ここから駅までは少し遠い。
しかも裏道にいるためタクシーも通らない。
止む気配など微塵も見せず、30分近くが経とうとしていた。
「……あぁああっもう…!走るか?」
「ライル?」
イライラが沸点に達し、ガバリと顔を上げたところで目の前にいた人物。
「うわっ?あ、せつ、な?」
「…雨宿りか?」
「あー、おう。刹那は仕事帰り?」
「いや、今日はオフだったんだ。足元大丈夫か?」
「アンタこそ、足元びしょ濡れだぜ」
「今回は傘があまり役に経たないな」
「困ってんだよ、俺傘なくて。こっから駅まで走ってもびしょ濡れだろ?そんな格好で帰宅ラッシュにゃ乗れねーし」
「もうしばらくは止まないそうだ」
「げぇ、マジか…」
「…ニールは確か、遅いんだったな」
「そ。いつもなら呼ばなくても来るのに、今回に限ってね」
どうしたもんかと肩を竦めるが、目の前で突っ立っている人物がふと気になり視線をやった。
「刹那、俺に付き合わなくていいぞ。アンタん家この辺なんだろ?早く帰った方がいいよ」
「いや…しかし」
「遠慮すんなって、と、うお!」
突如震えた携帯にびっくりして、落としてしまう。
カラカラと滑っていった携帯を追って思わず飛び出した。
そして運悪く… 目の前を走り去ったバイクが、盛大に水溜まりの泥水を俺にぶっかけてくれた。
「………………」
「……ラ、ライル」
しばし呆然としていた俺に耐え兼ねたのか、刹那が傘を差し掛け立ち上がらせる。
「…信じらんね…」
前髪を滴り落ちる水や、ぐっしょり濡れた全身を見遣った。
「とりあえず、こっちに」
「あ、ああ、悪い」
携帯は防水加工で無事だが、スーツはそうもいかない。
しかも泥水だ。
あまりの運の悪さに頭を抱えたくなる。
「あぁああぁぁ…さいっあくだ…」
「…俺の家までここから10分程度かかるんだが…。来ないか?」
「…は?」
「上がれ」
「いや、上がれって言われてもだな」
「どうした?」
「床汚れるだろ」
「…俺は構わないが」
「俺が構うよっ!」
「了解した」
刹那は部屋の奥からタオルを持って戻ってくる。
真新しいタオルに頬が引き攣った。
「…気持ちはありがたいが…やりにくいなーアンタ」
「なんの話だ?」
「なんでも。サンキュ」
「とりあえず下を脱いでしまえ」
「はい?」
「下をそこで脱げば風呂に行ってから上を脱いでも床は汚れない」
「いやいや、風呂て」
「そのままでは風邪をひくだろう」
「そこまでしてもらっちゃ悪ぃよ」
「遠慮するな。俺がしたくてしている。お前に風邪をひかせたらニールにあわせる顔もない」
「…そ?じゃあ、ありがたく」
恥ずかしいが仕方ない。
玄関でズボンと靴下を脱ぎ軽く畳む。
「脱衣所に洗濯機がある。スーツは洗えないが下着とシャツは洗っておくから、 脱いだら洗濯機に入れておいてくれ」
「…あーもーお言葉に甘えますよ」
兄の同僚で、しかも年下の青年に色々と世話を焼かれるのはどうかとも思ったがどうにも刹那は天然らしく、こっちが気を遣うのがバカらしく思えてやめた。
「中にあるものは何を使ってくれても構わない。泥がついてるから、洗髪もした方がいいぞ」
「どーも」
ほとんど何もないバスルームで、熱めのシャワーを被りながらこれからどうしようかと考える。
とりあえずスーツは泥ついててもいいから乾いたらおいとますることにして
「ライル」
「んー?」
「シャツと下着とバスタオルを置いておいた。俺の服じゃキツイだろうが我慢し てくれ」
「は?え、ちょ、下着って」
「買い置きの新品だ」
「そーゆう問題じゃねぇって、おい、刹那…」
ドアを開いて顔を出すが刹那の姿はもうなかった。
ガックリと肩を落とし、ドアを閉める。
「…なんか、情けねーな俺…」
「シャワーとか、服とかありがとな」
「あぁ」
刹那のシャツは小さく、前はしめられないから腕を通しただけ。
露出度は高いが男同士だから気にしないだろう。
だが刹那はそんな俺をジィッと見詰めてきた。
「どした?」
「……いや、ズボンも貸せればよかったんだが…」
「あ?あぁ…野郎の生足なんか見たって楽しくねーもんな!」
「いや、真っ白で眩しい」
「………アンタ変」
「そうか?コーヒーを滝れるが、ミルクや砂糖は…」
「ブラックで」
「了解した。そこに座っていてくれ」
“刹那は不思議っ子” 俺の頭の中の刹那ページに書き加える。
CBの社員にまともな人間はいないのだろうかと考えてしまった。
もちろん実兄もまともでない。
コーヒーの良い香りが漂いだし、刹那がキッチンからカップを二つ手に戻ってきた。
「ニールには連絡を入れておいた」
「え、マジで?」
「仕事を終えたら迎えに来るよう言っておいたから、それまでゆっくりするといい」
「いやいや、スーツ乾いたらおいとまするつもりだったんだけど」
「遠慮する必要はない。ニールは車だから、わざわざ汚れたスーツを着て帰ることもなくなる」
「いや、でも…」
「……俺と一緒にいるのが…嫌、なのか…?」
困ったように眉を下げ言われた言葉。
慌てて首を左右に振りそれを否定する。
まだ訝しむ刹那に今度はこちらが困り果てた。
「嫌なんじゃなくて、そこまで迷惑かけらんねーというか…」
「迷惑などと思ってない。それに一度お前とゆっくり話もしたかったんだ」
「そう…なの?」
俺なんかと何を話したいのかわからないが、そこまで言ってもらえちゃあ拒否するのはさすがに悪い。
俺は大人しく刹那の話し相手になることを決めた。
暫く他愛もない会話を楽しんでいると、刹那が不意に身を乗り出す。
「な、なに?」
「いや、ココ…」
刹那が伸ばした手の行方を見守っていると、それは太ももに到達した。
ギョッとして身を引く。
「おいっ?!」
「虫刺されか?」
「はぁっ?!」
刹那の人差し指が示した場所には、赤茶色になった虫刺されのようなモノがあった。
それの正体にすぐさま気付いた俺は顔に熱が溜まるのを感じる。
顔を真っ赤にして何も言えない俺を刹那が不思議そうに覗き込んだ。
「どうした?」
「い、いやっ?!なんでもねぇよ!いつの間に刺されたんだろうな!」
「薬がある、持ってくるから待っていろ」
「あーお構いなく…」
キスマーク、だということに気付かなかったらしい刹那がそそくさと席を立った 。
薬なんて必要ないが必要ないと言うとまた厄介なことになりそうなので口を噤んでおく。
「ほら」
「わーっ何すんだバカ!自分で出来る!!」
「そうか?」
「ア、アンタはもう少し常識を学んだ方がいいぜ!」
「…そうか、すまない」
ガバッと開かされた足を慌てて閉じ、手から薬を奪い取り叫んで注意すると、刹那はうなだれてしまった。
慌てて言葉を続ける。
「…あーいや…ありがと」
「いや、俺も悪かった」
「男同士なのに過剰反応する俺も俺だよな、悪い」
「気にしてない、だから気にしないでくれ」
そう言って表情を和らげる刹那を見て、俺も肩の力を抜く。
きっと刹那は純粋なんだろうなぁ
何も知らない、汚れのない子供と同じで。
会話は思ったよりも弾み、インターホンが鳴り響くまで時間なんて気にしていなかった。
「来たみたいだな」
刹那がそう言いドアを開けると、血相を変えた兄が飛び込んできた。
「ライル!!」
「あ、兄さん。お迎えありがとさん」
「ちょ、おま!なんつーカッコしてんだよ?!」
大股で近寄ってきた兄の腕の中に閉じ込められる。
「う、くるし…」
「太もも眩しいし!シャツの丈合ってねぇし!…ってまさか…お前っ、刹那と… 」
ガツン。
あまりにも兄の発言にイラッときたので力の限り頭に拳を喰らわせてやった。
「いだい?!」
「刹那に失礼だ、謝れよ」
「ラ、ライル…ごめん…。刹那、悪かったな」
「俺は気にしていない。というかなんのことだ?」
「あーまぁ、いいからいいから。でもなんでそんなやらしいカッコしてんだ?」
「スーツが泥で汚れてんの。刹那が親切に色々貸してくれた」
「パンツは新品だ」
「や、そこ強調しなくても気にしてねーから…」
「そっかぁ、すぐ迎えに来てやれなくてごめんなぁ」
「仕事だろ、謝んなって。それに泥んこになったのは自分のせいだからさ」
兄の腕の中から抜けだし、ソファーに腰掛ける。
ちょうどそこに刹那が兄の分のコーヒーと、おかわり分を持ってローテーブルに置いた。
「少し休んでいけ、上がってすぐに来たんだろう」
「おぉ、サンキュー刹那!」
俺の隣に座った兄が熱いコーヒーを啜りながら俺の頭を撫でる。
「…シャワーまで借りたんだっけ?」
「…兄さん、またなんか言ったら怒るからな」
「いや、ハハハ…言わないさ、あぁ、言わないとも…」
確実に苛々してる。
本当にこのお兄ちゃんは独占欲が強くて困る。
「ん?これ…」
いきなりグッと下腹部に顔を近付けられて思わずのけ反った。
「うおっ、なんだよ!」
「…あーっこれ!そっかそっか、んふふふ〜」
「なに…」
「これこれ、俺の所有痕!」
ガバリと両足を開かれる。
俺は素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「なにすんだバカ兄貴ッッ!!」
「所有…こん?」
「あははそうそう、キスマーク」
「ばかああああ!!」
せっかく騙せていたのに!
悲鳴を上げながら兄の首に手をかけて揺さ振る。
「ぐるじ〜ライル〜」
「きすまーく…虫刺されではないのか?」
「虫刺されだよ!」
「キスマークってのはちゅーって吸ってできる痣みたいなもんだ!」
「なに言ってくれてんだゴルァ!」
「なるほど」
刹那の知識に“キスマーク”という項目が追加される。
俺はガックリと肩を落としうなだれた。
「さいあく…」
「まぁまぁ、さーて帰るか!」
“ライル”が自分の所有物だと刹那に主張できたニールは
とても満足そうだった。
本当に、困った兄さんだ。
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ブラコンシリーズ第12弾!
今回は刹那と絡めてみました^^
せっさんは天然ぽいイメージあります。
多分ただ単に必要な知識と不必要な知識を分けて得ているからだと思うのですが
兄さんが異常な独占欲を発揮した日でした^^
ライルにとってはやっぱりツいてない日でしたね
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