*ブラザーコンプレックス11*
*パラレル設定
*商社マンライル
許せる方のみど〜ぞ
会社から帰宅して、ダラダラとベッドで寛いでいたところに 携帯が鳴った。
「なに?にいさ…」
『はぁい、スメラギでぇ〜す!お兄さんはこちらで預かりましたぁ〜っ。今から 指定する場所にすぅぐに来ないとぉ、お兄さんは大変な目に遭うからね!それじ
ゃあ!』
ブツッ
無機質な電子音が耳元で響く。
一方的に話され、一方的に脅迫され、思考が追いつかない。
しばしの沈黙の後、携帯にナビソフトが送られてきたことによって我に返った。
「…えーと?兄さんが大変な目に遭うのはどうでもいいが…。スメラギって、あ の偉い人だよな?偉い人の脅は…誘いを断っちゃ兄さんの顔が立たねーよな」
今の時刻は18時過ぎ
仕方ない、と、重い腰を上げた。
「あ」
「…待っていた」
ナビに従いやってきた場所は、4駅先の駅前の居酒屋の前。
薄暗い中無表情で突っ立っていたのは、兄の同僚の刹那だ。
「よぉ、刹那」
「すまない、スメラギの悪ふざけに巻き込んでしまって」
「いや、大丈夫だよ。で?兄さんがどんな目に遭ってるって?」
年齢の割には大人びた青年に笑いかけ、連れだってエレベーターに乗る。
「……悲惨な目に…」
沈痛な面持ちで答えられ、思わず息を飲んだ。
俺ちゃんと来たのに酷い目に遭ってんのか?
「え、えー…。そんなに?」
「そうだな…変ではないが…おかしい…。あとティエリアが怖い」
「は?なにそれ」
「アンタも覚悟した方がいい。俺には守ってやることはできない…」
俺はここに来たことを早くも後悔していた。
「あーらぁ!いらっしゃーい!」
「………なにこれ」
広い座敷の部屋に招かれ、目した光景は確かに悲惨なものだった。
なにが悲惨って、男どもが。
「ロックオ〜ン、可愛い子が来たわよぉ?」
「へぁ?」
騒ぎの中心にいた兄…どうみても兄、がこちらを振り向く。
アルコールのせいかトロンとした瞳が大きく見開かれた。
「…っ、らいる〜〜〜ぅ!!」
「…悲惨だ」
勢いよく立ち上がり、こちらに走り寄ってくる姿に頭痛を覚える。
悪意を感じる短さのスカートをはためかせ、兄は俺に抱き着いてきた。
そう、このバカはセーラー服を着ていたのだ。
「ぐぇ」
「らいるーらいるーらいるーん!」
「きしょ…やめ、離れろ…」
「なんでだよぅ、ツレないぜ?可愛いなぁ〜俺のらいるん」
らいるんってなんだよ。
突っ込む気力すらない。
「ロックオンス・トラトス!弟!そのままこちらを向きなさい」
すごい剣幕で言われ、反射的に声の方向に顔を向けると、ティエリアが一眼レフを構えていた。
「は?」
「ぅへへ〜、ぴーぃす」
「…いい画が撮れました」
俺達をレンズに収め、ご満悦したらしいティエリアはデータを確認しながらニヤニヤする。
…そうだな刹那、確かにティエリアが怖ぇな。
しがみつく兄を引きはがしながらスメラギさんの所に向かう。
説明を求めたい、権利はあるはずだ。
「いつも兄がお世話になってます。つか、なんですかコレ」
「あはははは、いやねぇ?宴会と言えば女装じゃない?」
「…そうですかね?」
「だからぁ、女装させたらおもしろそうな子達に女装させたのよ、ねっ、クリス !」
「はい!着付けとメイクは私とリンダさんでやりました!」
意気揚々と返事をするクリス。
騒ぎの中心地帯には、犠牲になった男達がうなだれていた。
「あっ、ライル!こんばんわ〜」
「なんでアンタはそんなにノリノリなんだ…」
「え?なんですかぁ?あ、僕のこれチャイナ服って言うんですよ〜」
教えてもらわなくてもわかる。
アレルヤはスリットの深い深紅のチャイナドレスを着ていた。
他にも、メイド服を着たラッセ。
割烹着を着たイアンさん。
ナース服を着たリヒティ。
などなど。
………とにかく悲惨だ。
「らーいるん!アレルヤとお喋りずるーい!」
「アンタは気持ち悪過ぎるっ…!」
「刹那にも一度着せたんだけどね、反応が薄くてつまらないしー。ティエリアは代わり映えないしで」
「つか男の女装とかキモイだけだろ!」
「あららぁ〜、そう感じるのは男だけよぅ。私達はすごぉく楽しんでるわよ?ね っクリス♪」
「そうですよ〜!あっ、ライルさんにもしてもらいますよー!」
「……はっ?!」
「うふふふふ。なんのために貴方を呼んだと思ってるのよ。さぁ!やっちゃいな さい!」
「了解!!」
「うそ、ちょ、まっ…!」
「観念しろ、弟!」
「ティエリアッ?!なんでアンタも加わってんだ!!せ、刹那!助けろ!」
「…すまない」
スッと視線を逸らされ絶望する。
無理矢理隣の部屋へ連れていかれた俺は、見事生贄になったのだった。
「わぁ…なんていうか、ライルさんって色っぽいんだね」
「そうねぇ、なんだかやたらと違和感ないわねぇ」
「それは貴女方の目が悪いだけです」
「やーだー、私視力いいんですよ!」
「ふふふ、私はあまりよくないけど、貴方が綺麗なのには変わりないのよ?」
「……はぁ…」
鏡に映った自分を見ても、キモチワルイの一言に尽きる。
膝上20a程のミニスカートは、しゃがめば確実に中身が見えるだろう。
「はい、これで完成!」
頭にふわりと被せられた濃紺の帽子。
小物も全て揃った俺の服装はというと。
「美人なミニスカポリスの完成ね」
……そう、ミニスカポリスだった。
「じゃーん!!ライルさんの登場ですよー!みなさん拍手拍手!」
「きゃー待ってました!」
リンダさんに背中を押され、嫌々ながらもあの広間に戻る。
大歓声の中に足を踏み入れれば、水を打ったように静まり返る広間。
「……おい、茶化すなりなんなりしてくれ。耐えられねぇから」
自分を凝視する面々に居心地が悪くなり、自ら口火を切った。
弾かれたように立ち上がる兄。
「ライルッ…!」
「なん…」
「俺を逮捕してくれぇえぇぇえぇッッ!!」
「……は?」
スライディングしながら俺の足に縋り付く兄は正直本気で気持ち悪い。
「きっめぇぇ!離れろ!」
「あっイタ!あ、でもなんかイイ!」
「うわあああ変態!」
「つ、つか…中身見ぇぐあ!!」
見上げてきた兄の脇腹を思い切り蹴った。
というか、さっきからフラッシュとシャッター音が引っ切りなしに響いているんだが。
「なんで俺がこんな目に…」
「ライルライル、こちらにいらっしゃい♪お酌して欲しいわ〜♪」
「…もうどうにでもなれだ。もちろん俺も飲んでいいんだよな?」
「もちろんよ、しかもタダ」
「よし、飲むぞ」
素面でこの格好なんてしてられない。
兄の上司に対する敬語も止め、隣にドカリと座った。
まぁ、胡座をかいた瞬間スメラギさんにひっ叩かれたけども。
初めて足を通したストッキングが気になって仕方ない。
なんだか痒いような気もして、気がつけば足を掻いていた。
「う〜、痒い」
べったりと俺に引っ付く兄はもう無視して、酒を煽る。
「…これ、脱ぎた…」
「ダメよ」
「……はぁ、マジないよ俺…。新入社員歓迎会の時もこんな目には遭わなかったのに…」
「ライル」
「ん?どした、刹那」
目の前にちょこんと正座した刹那は、ミルクを持っていた。
この場にはあまりにも不釣り合いなソレを見て、思わず頬が緩む。
「とてもよく似合ってる。正直驚いた」
「……は?」
ほんわかした気持ちは一気に急降下し、心に冷風が吹きすさぶ。
「綺麗だ」
「……………なんのフォローのつもりか知らないが、フォローになってないぜ」
「違う。本当にそう思ったんだ。ロックオンよりも似合っている」
「あははは!そうよね!なんだか色気があるのよね〜!ロックオンのは普通に笑 える女装なんだけど、ライルのは冗談にならないっていうか?」
冗談にして下さいマジで。
ハイペースで飲んでいたおかげで、やっと頭に熱が溜まってきたのに冷めた。
もの凄く。
「もう帰りてぇ…」
「らいる〜?どうした?」
「わっ、ちょ、兄さ…」
起き上がった兄が俺の頬を両手で包み、トロンとした眼差しで覗き込んできた。
「なんだよっ」
「気持ち悪いのかぁ?飲み過ぎちゃだめだぞぉライル」
「酔ってねぇよ!酔ってんのは兄さんの方!」
「らいるー、つかれてるだろー」
「ちょ、こらっ」
俺の沈んだ空気を感じとったのか、兄はむぎゅむぎゅと俺を抱きしめ背中を撫でてくる。
「兄さん…」
少し嬉しくなったところに、フラッシュの嵐。
「……ティエリア、いい加減にしてくんねーか」
「お構いなく。そのまま続けて下さい」
「なにを続けんだよっなにを!」
「私の口から言わせる気ですか、破廉恥な」
「はれっ…!ちくしょうっ…!声は男なのに見た目のせいで…!」
罪悪感を感じてしまう。
普通に暮らしていたらまず出会わないであろう、このCB社のメンバー。
頼もしいし愉快だし、いい奴らではあるんだが…
ここまでお近づきになりたくなかった。
「…はぁ。なぁ…兄さん?」
「んー?どうした?」
「俺もう疲れたな…。帰ろ…?」
「っ…!」
甘えた声で兄に囁き身を寄せると、予想通り兄はがばりと立ち上がった。
「すまんみんな!おれもう帰る!」
「ちょっと〜夜はこれからじゃなぁい」
絡んでくるスメラギさんの腕から逃げ、俺を立ち上がらせ出口へと走る。
「悪い!また今度!」
「ちょ、ちょちょちょっと待て!!着替え!!」
「えー?着替えんの?」
「アンタは救いようのない馬鹿か?!俺ら電車乗ンだぞ!!」
「公然猥褻罪で捕まりますよー」
同じく公然猥褻罪な格好のリヒティが怠そうに言ってきた。
「アンタに言われたくねぇよ」
「よーし、じゃあ着替えっかぁ」
「あ…?コラ兄さん!」
その場でガバリと上を脱ごうとした兄を止める。
ここにはまだ若い女の子達もいるんだぞ!
「なんだよー?」
「…向こうで、着替えような?」
「あ〜…もう足痒かった!ストッキングこわっ」
「らいる〜着替えた〜」
「はいはい、じゃ帰ろ…何持ってんだ?」
「別に…ちょっと荷物」
紙袋を提げた兄はそそくさと広間へ戻っていく。
嫌な予感がしたが、核心はないのでとりあえず問い詰めずにいた。
「んじゃ、お先ぃ!」
「お疲れ様っス〜」
「残念ねぇ、また一緒に飲みましょ、ライル!」
「まぁ機会があったら」
まだ宴会を続けるメンバーに挨拶をし、店を出る。
酔っ払いの兄は上機嫌で、俺の腕に腕を絡めて鼻歌を歌っていた。
これだけあからさまに酔っ払いなら、多少密着度が高くても怪しまれないだろう 。
週末で終電間近の電車内には、似たような酔っ払いがそこかしこにいる。
「ライル、楽しかった?」
「ん〜、まぁ、会社の連中と飲むよりはリラックス出来た、かな?」
「そか、良かった」
トロンとした瞳と、甘えた声音で擦り寄るニールは不覚にも可愛く見えた。
軽く頭を撫でてやれば、更にだらしなく緩む顔。
「らいる〜あいしてる〜」
「はいはい、そりゃどうも」
抱き着いてきた兄をさすがに恥ずかしいので引きはがした。
家に着いたら、二人で一緒に風呂に入ってさっぱりして、調子に乗った兄にちょっとやらしいことをされて
なんとかのぼせる前に風呂を出て寝室に辿り着けば、そこには
「………兄さん?」
「ん〜?どうした、ライル」
「…アンタ、これ…」
「え?えへへ?今夜はライルに逮捕されたいな、なんて?」
ベットの上に広げられていたのは、先程の衣装。
ヘラッと笑いながら言った兄の脇腹に肘鉄をくれてやった。
呻き声を上げてうずくまる兄を無視して、衣装と一緒に出されていた手錠を手に 取る。
「兄さん」
「いてて…ん?」
「お望み通り逮捕しちゃうぞ」
「え゛……ちょま、ライルったら笑顔が怖いぜー?」
逃げようと腰を浮かせた兄を取り押さえ、暴れる両腕をなんとか捕まえ手錠をかけた。
そして衣装を投げ付けさっさとベットに入る。
「ラーイルーゥッ!」
「うっせぇ、逮捕してやったんだから満足だろ?」
「やだー婦警ライルとえっちしたかったんだよー」
「バッ…!ふざけんなっ」
「うう…ライル…」
布団に入り込んできた兄が、器用にも手錠で繋がれた腕でイタズラを仕掛けてきた。
「もっ、バカ!」
「バカでいいから、ヤろう?ライル」
「コラ…にいさ…」
手錠をものともしない兄の愛撫に
結局俺は今夜も流されたわけで。
「次はセーラープレイな?」
「アンタやっぱりあの紙袋ッ…!」
あの時問い詰めて取り上げておけば!
後悔先に立たず。
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ブラコンシリーズ第11弾!
飲み会のテンションって大好きです!
酔っ払いがいればいるほどおもしろい^^
女装男子は似合ってないほうが笑えていいですよね。
でもライルは似合っちゃえばいいと思うよ!
兄さんは女装似合わない、雰囲気が兄貴!だから(笑)
ライルも決して似合ってるわけじゃないんだけど、不思議と違和感ナイ感じで
ライルは婦警が絶対似合うと思います!!
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