*いぬとの生活3*



*パラレル設定
*刹那17歳、バイト生活中
*ライル(186cm笑)に犬耳尻尾がついてます


許せる方のみど〜ぞ




「知らない人が来たら開けるな、宅急便でも出なくていいからな。鍵はチェーン も掛けるんだぞ。それじゃあ行ってくる」
「オーライ、行ってらっしゃい。バイト頑張ってな」

日曜日、いつもは入っていないのに、今日は休んだ人の代わりで刹那が急遽出る ことになった。
寂しいと思いつつも我慢して、刹那の頬に行ってらっしゃいのキスをし送り出す。

言い付け通りしっかりチェーンを掛けて、昼食の片付けをするべくキッチンへ向 かった。















ピン ポーーーン

昼寝をしていた俺の耳に届いた大きな電子音に飛び起きる。

直接玄関横のチャイムを鳴らしているのだろう。
警戒態勢になって玄関を見遣った。

「……ん?なんか…」

鼻腔を擽る匂いは、どこかで嗅いだことがある。
物音を立てないように玄関に近寄り、そっと覗き穴から様子を窺う。

そこには太陽の光を受けて輝く金色。

「……グラハム?」

刹那の隣人で友人の、グラハム・エーカーだ。
友好パーティとかいうのを無理矢理開いた彼とは面識があった。

脳内で刹那の言い付けが反芻される。
結果、玄関を開けた。

「やぁ!少年…おや?ライルじゃないか」
「どーも」
「ふむ、もしかして一人かい?」
「刹那はバイトに行ったよ」
「確か日曜日は入っていなかったのでは?」
「休んだ奴の代わりだって」
「それは不運な。君も一人で寂しいだろうに!良かったら私とドライブにでも行 かないか?」
「えっ?」

ニコニコ笑うグラハムが俺の両手を取って強く握った。

「君達を誘って三人で行こうと思っていたのだが、刹那は不在だからな。君一人でもぜひ誘われてくれたまえ!」
「え、と…でも俺留守番だから…」
「君は刹那に宅急便でも出るなと言われているだろう?訪ねて来ても出ないのでは留守番の意味はない。よって私とドライブに行ってもなんの問題もない!」
「えー…いや、でも…」
「大丈夫だ!刹那が帰るまでには帰ろう!君はドライブが好きだったはずだね。 冬の海でも見に行こうではないか!」

ドライブ、冬の海

グラグラと心が揺れた。
そんな俺の心が読めるかのように、グラハムはぐいっと俺の手を引く。

「さぁ、行こう。助手席に座ってくれ」
「…オーライ」

助手席、俺が車で1番好きな場所だった――。














「グラハムッ!スピード違反!!」
「なぁに、ギリギリセーフだ」
「あははっすげぇ!景色がびゅんびゅん流れてく!」

高速道路を走るグラハムの車は、風になったみたいに他の車を追い越していく。
前の主人は安全第一だったから、こんなスリルある運転はしたことがない。
身体にかかる小さなGが楽しくてしょうがなかった。

「あはは、やべー」
「楽しんでいただけているようで何よりだ」
「俺も運転できたらなぁ」
「…そうか、取得資格はないのだったな…」
「あーうん。あ、でも、前の主人がこっそり運転させてくれたよ。楽しかった」
「うむ、今度は私の車を運転させてあげよう。いつか三人で田舎にでも旅行に行って」
「ほんとか?すげぇ楽しみ!」
「…君の笑顔は眩しいな」
「え?アンタのが眩しいと思うけど…」

太陽みたいに自信満々で輝くグラハムの笑顔。
刹那の笑顔は花が綻ぶ瞬間みたいで。

俺は二人のそんな笑顔が大好きだ。

「君は気付いていないのかもしれないが、君が来てから刹那はよく笑うようになったのだよ」
「え…?」
「家庭事情が芳しくないからな、彼は。感情をあらわにすることは少なかったよ。しかし、君が来てからはよく笑う。怒るし、心配するし、ヒトとしての感情が豊かになった」
「…そう、なのか…?」
「あぁ。君の存在は、笑顔は、刹那を笑顔にしているんだ。素晴らしいことだよ 」

グラハムに言われた言葉を繰り返し吟味して飲み込んでいく。
次第に頬に熱が溜まるのがわかった。

「お、れ…刹那の役に立ててるのか?迷惑になってない?」
「何を今更。当たり前だろう!」
「……あは、なんか、やべっ…すげ…うれしっ…」

自然に目に溜まった涙をごまかすように上を向く。

実は少し心配だった。
刹那の迷惑になってはいないかと。

図体はデカイし、歳もいってて、家事も出来なくて、愛玩にもならなくて

上げたらキリがないほど自分に自信がない。
前の主人は俺が小さい頃から育ててくれたから、無条件に愛されてる自信はあった。

しかし刹那はどうだ。
ひょんなことから俺を飼うハメになって、後悔していないんだろうか。

ずっと悩んでいた。
でもグラハムのおかげで悩みが解消され、少しだが自信も湧いた。

「…刹那に、会いたいなぁ」
「ふむ、そうだな。海は今度にして引き返そうか?」
「いい、のか…?」
「もちろん。そもそも君を喜ばせたくて誘ったのだ。ドライブがてら海に行くよ り刹那の方がいいのなら、私には君を刹那の元に届ける義務がある」
「あ、う…あ、ありがと…」

なんだか一々グラハムの言葉はむず痒い。
なにはともあれドライブは中止し、マンションへ引き返すことになった。














「ただいま、ライル」

予定より早く上がれた。
急ぎ足で帰宅し、玄関を開けながらそう言えば、いつものように尻尾を振って待っているライルがいる…はずだった。

「……ライル?」

また寝てしまっているのだろうか?
リビングのソファーにライルの姿はない。
次いで寝室を覗くがそこにもいない。
部屋中を探し回りどこにもライルがいないことがわかってしまった。

急速に体温が下がる。

「ッ…ライルッ…ライル!」

ライルは飼い主の元から去ったことがある。
それは俺の元を去る可能性がないとは言い切れないということだ。

手放したくない。
ライルに傍にいて欲しい。

今までこんなにも何かに依存したことはなく、どうしていいかわからなくてパニ ックに陥る。

ただひたすらライルと呼びつつ部屋をうろついた。

「ライル…!そ、うだっ…外を…」

ガチャ、と玄関のドアノブに手を掛ける。
ふらふらと外に出て、向かう先など決まっていないがとにかくマンションを出ようと足を進めた。

「あら、刹那」
「っ…マ、マリー…ソーマ…」
「どうしたの?酷い顔をしているわ」
「大丈夫…?」

ちょうどエレベーターから出て来た隣人の女性と出くわす。
二人は俺を見て顔をしかめた。

「あぁ…大丈夫だ」
「でも…あ、ライルはまだ帰ってないの?」

マリーのその言葉に弾かれたように反応し、彼女の腕を取った。

「きゃっ」
「なにをするっ」
「ライルがどこにいるのか知っているのか?!」
「ど、どこにって…知らなかった、の…?」
「……てっきり貴方が彼に預けたんだと思ってた」
「彼?」
「グラハムさん、ライルと駐車場にいたのを見掛けたの」
「……グラハム、と…」
「知らなかったのか…。全くあの人は」

俺は全身から力が抜けて呆然としてしまった。
じわじわと沸き上がってくる感情は怒りだろうか。

「…すまない。ありがとう」
「いいの、大丈夫よ。彼らを見掛けたのは2時間くらい前だから…」
「飼い主の承諾なく連れ出すのは立派な犯罪だな。訴えられる」

ソーマが意地悪そうに笑いながら言った。
俺もそれに深く頷き同意する。

「あの変態…」
「とにかく、暫く待っていたら帰ってくると思うわ。だからそんな顔をしないで?」

マリーが優しく俺の頭を撫でる。
いつもなら戸惑うその行為だが、俺は酷く落ち着いた。

「……ありがとう。駐車場に行ってくる」
「そう、風邪引かないようにね」
「一発くらい殴ってやりなさい」

マリーとソーマと別れ、俺は地下にある駐車場へ向かった。










「もう着くよ、ライル」
「ん」

マンションが見えてきて安心する。
スルスルと地下へ潜って行く車内で、刹那はまだ帰っていないだろうなぁと少しだけ落ち込んだ。

「……おや、しまった」
「ん?どうした?」

グラハムの呟きに、俺も前方を見遣れば、そこには

「っ、刹那!」
「これはかなり嫌な予感がする」
「もう帰ってたんだ!」

隣で冷や汗を流すグラハムに気付かぬまま、1番会いたい人物がそこにいることに喜び揺れる尻尾。
駐車スペースに停まった車から飛び出して、刹那の元に走った。

「刹那っ!お帰り!」
「ただいま」

無言で両手を広げるから、そこに飛び込みくせっ毛にほお擦りをする。

「ライル、お座り」
「んっ?」

パッと離れ命令通りにしゃがみ込む。
見上げた刹那の瞳は揺れていた。

「……刹那?」
「悪い子にはお仕置きだ」
「いたっ!」

バチン、と頭頂部に鈍い痛みが走る。
今俺は刹那に叩かれた?

「えっ…あ…」
「誰が来ても出なくていいと言っただろう」
「…だ、て、グラハムは知らない人じゃ…」
「だからと言って俺に無断でどこかに行くな」
「…ごめ、なさい…」

刹那の声に怒気が含まれていることに怯え、ぺたりと伏せられた耳と力を無くした尻尾。
刹那は俺に対して初めて怒っていた。

「ごめんなさっ…ごめん、せつな、刹那っ…」
「すまない、少年」

そこに割って入ってきたのはグラハムだ。

「私が無理矢理連れ出した。叱らないでやってくれ」
「犯罪だぞこの変態」
「ふむ、ズバリと言うな」
「一発殴らせろ」
「勿論だ、その覚悟は出来ている」
「ちょっ…せ、刹那!待ってくれ、グラハムは俺が寂しいだろうからって連れ出 してくれたんだ!だからっ…」

バチン! と、俺の頭からした音より高らかにグラハムの頬が鳴った。
刹那はグーではなくパーでグラハムを殴っていた。

「…ライルに気を使ってくれたのは感謝する。だが今後一切無断でライルに近寄るな」
「…善処しよう」
「絶対に、だ。ライル」
「はっ、はい」
「お前も、俺以外の人に着いていかないでくれ……本当に、心配したんだ」

刹那の声が掠れていき、くしゃりと表情が歪められたかと思うと抱きしめられた。

「…刹那?」
「…傍にいてくれ…ライル…」
「刹那…ごめんなさい…」

小さく震える身体を抱きしめて、宥めるように背中を撫でる。

申し訳ない気持ちで一杯なのに
心のどこかで歓喜していた。




刹那は本当に、俺を必要として愛してくれているんだ――。









「旅行?」

やっと落ち着いた俺達三人は、刹那の部屋でお茶会を開いていた。

「そうとも!今度三人で旅行に行こう」
「アンタは本当に懲りないな」
「三人ならばいいだろう?」
「まぁ…三人なら…」
「ライルに車を運転させてやりたくてな!」
「運転…したいのか?」
「えっ、あ…う、うん」
「…そうか。わかった」
「俺、刹那と一緒じゃなきゃ行かないから」
「…あぁ、そうだな」
「どこにするかな、自然が豊かで、それでいて舗装された道路があって…」

一人あれやこれやと悩むグラハムを置き去りに、刹那はずっと俺の頭を撫でている。

「バイクは乗ってみたくないか?」
「バイクは…そうだなぁ、ちょっと怖いけど、刹那が教えてくれるなら」
「なら、教えてやる」
「ん、ありがと刹那」
「少年!私としてはこの辺りがオススメなのだが!」
「アンタが好きに決めてくれ。というか帰れ」
「ツレないなぁ少年!」

腫れた頬をそのままに目をキラキラと輝かせてプランを出すグラハムと
それを冷めた目で見ながら俺を撫でる刹那

「…なんか、幸せだなぁ」

ふわりと暖かくなる胸。
衝動のままに、俺は刹那の頬を舐めていた。

「らっ、らいる?!」
「くぅん、きゅぅん」
「おやおや、見せ付けてくれる」



色々なことが毎日起こるけれど

俺の尻尾は毎日毎日幸せそうに揺れている。





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グラハムもライルはお気に入りなようです^^

刹那は自分でも気付かないうちにライルにもの凄く依存しているという。
ちなみに刹那の家庭事情というのは
刹那は捨て子であり養子で、養父母はそれなりにお金持ち。
義理の姉であるマリナが孤児院と関わりがあり引き取られたみたいな。
養父母が刹那に腫れ物を扱うような態度をとるから、刹那は居心地が悪くてしょうがない。
でも感謝しているし迷惑もかけたくない。
そんな感じで芳しくないのです。


保護される立場に甘んじんなければならなかった刹那に
保護しなくてはならない存在であるライルができたというのは
刹那にとって凄く嬉しかったことです。

なんか段々刹×ライじゃなくて+になってきている…
純粋に家族愛で終わるような…
私の脳内がめちゃくちゃ平和だぞコレなにごとだ


あ、この作品のコンセプトは「ライルを幸せに!」です^^






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