*invitation*



*一期設定

許せる方のみど〜ぞ




アイルランドの空は、雲っていた。






本屋から出てきたライルの後を追う。
久しぶりに見るライルの姿は相変わらず自身と瓜二つで、口元が綻んだ。

『ライル…元気そうでよかった』

気付かれないように慎重に歩を進める。
絶対に会ってはいけないとわかっているから。

本当は今すぐその腕を捕まえて、抱きしめて、キスをしたいくらいなのに。
ニールは感情を抑え込むために強く拳を握った。





人通りが少なくなってきた場所で、ニールは足を止める。
ここまでだ、と自身に言い聞かせ踵を返そうとした。

「なんだよっ!」
「……っ?」

ライルの声が聞こえ、壁に身を隠しながら伺うと、三人の男に囲まれた姿を見付ける。
どうやら難癖をつけられたらしく、ニヤニヤ笑う男達にライルはその腕を掴まれた。

「ライル…!」

ニールの目の前は怒りで真っ赤に染まり、勝手に足が動く。
ツカツカと近付き、ライルの肩を抱いている男を振り向かせ手加減ナシにブン殴 った。
男達がドサリと倒れる仲間に気を取られている隙に、ライルの腕を目の前の男から奪い返す。

仕方なく多少乱暴にライルを自身の背後に引っ張り、残り二人に狙いを定めた。

「てめぇ!」

殴りかかってくる男をひょいとかわして鳩尾に一発くれてやる。
勢いのまま残りの一人のこめかみに回し蹴りを喰らわした。
三人は地べたに沈むが、意識はあるようで苦しげに唸っている。

「…逃げるぞ」
「っ、ちょ、え?あ、あんたまさか…ニール?」

ライルの問い掛けには答えず、腕を掴んで来た道を走って戻った。

「にい、さん!だろ?なぁ!」

背後から微かに男達の声が届く。
ニールは黙々と走り、大通りに出た。

路肩に停めた車目掛けてまた走る。
センサーで開けた助手席にライルを放り込んだ。

「う、わっ!」
「シートベルト」

自身も中に身を滑り込ませ、間髪入れずにアクセルを踏んだ。

「っっ!ちょ、ま…」

隣ではライルが四苦八苦しながらシートベルトを装着した。









「……もう、平気か…」

先程の場所からだいぶ離れた、狭い路地裏にゆっくりと停車する。
そこでようやく、ニールはライルに視線をやった。

「…ライル」
「………アンタ、運転、荒過ぎ……」
「え、だ、大丈夫かお前?!ごめんなっ」

ライルは苦しげな表情をして、ぐったりとシートに沈んでいた。

「きもち、わるい」
「ちょ、ちょっと待ってろ!なんか飲み物…!」

来た道を思い出しながら、自販機はなかったかと記憶を探る。

「…ある。よしライル、ちょっと待ってろよ」
「兄さん…?」

車から飛び出て道の途中にある自販機目指して走った。







紅茶のボタンを押しながら、今の状況を段々と脳が理解していく。
高鳴る胸と、禁を破ったことへの恐怖。

車に戻れば、ライルがいる。

「…………や、べぇ」

紅茶を持って、呟いた。





もういっそ、さらってしまおうか









「ほら、ライル」
「…ぁ、さんきゅ…」
「ごめんな、キツイ運転して」

ライルの視界に自分が映ったのを認め、ニールは目を細めた。
久しぶりの、感覚。

「…はぁ…兄さん…」
「ん?」
「兄さん…なんだよ、な…」
「……あぁ、そうだよ」
「アンタ今までどこにいた」
「……うーん…」
「はぐらかさなきゃなんないトコ?」
「まぁ、そう、だな」
「…毎年、墓に花束を置いてたの、アンタだろ?」
「…あぁ」
「なんで…なんで俺に声をかけてくんなかった?」

ライルの表情が歪んだ。
ニールはそっと目を伏せる。

「…仕方なく、て」
「仕方ない、何が?」
「お前のためだ」
「…俺のために、何をしてるんだ」

ライルの声は硬かった。
何かしら感づいているのかもしれない。
定期的に入れている多額の仕送りのことを考えれば、怪しいことこの上ないだろ う。

「…言えないんだ、ライル」
「………そう…」

悔しそうに、ライルは呟いた。
ニールから視線を外し、顔を背けてしまう。

「…俺、兄さんに、なんも言う資格ないからさ…」
「え…?」
「今更俺が何を言ったって変わらない。最初に逃げのは俺だから」

長い前髪でライルの表情が隠れた。
ニールはそんなライルの横顔を凝視する。

「…ごめん、な。兄さん。一度だけ、会えたら…言いたかったんだ。ごめん、俺 、ごめん…」
「なん、で…お前が謝るんだ…」

平和に暮らしていたんじゃないの?
俺はお前に自由をあげられたんじゃないの?
なんで俺なんかに謝るの?

俺なんか、お前には必要ない人間だろ?

俺なんかのために、そんな声を出さないでくれ。



ニールの頭は混乱した。
思わず、ライルの腕を掴む。

「…兄さんの抱えた何かを、共有できなくてごめん。俺が弱いせいで、兄さんの何かを壊して…ごめん、な…」

上げた顔は、悲しみと後悔に満ちていた。
ニールは息を呑む。

「……さっき、助けてくれてありがと。それと、もう金は振込むなよ。俺は大丈 夫だから」
「ライルッ…」
「じゃあ、兄さん。またいつか会えたら…」
「ライル!」

勝手にドアを開けて出て行こうとしたライルを無理矢理引き寄せ、抱きしめた。

「っ…に、」
「嫌だ、ライル!」

無理な態勢で抱き込まれたせいで、よくわからない場所が引き攣る。

「い、いたい、兄さん」
「お前は俺を憎んでんじゃないのか?!お前は俺を、必要となんかしてない…! 」
「…憎む、とか、ないよ。子供の頃はそりゃあうざかったけど、アンタは世界でたった一人の…俺の家族だ」
「…ラ、イル…」
「兄さん、な、離してくれ。キツイ」

ニールの腕がそっと離れる。
狭い車内で態勢を整えたライルは痛んだ腰を摩った。
そしてニールを真っ直ぐ見つめ、微笑む。

「アンタの支えになれたら、良かったのにな」

ニールが自分を望んでいないと、そう決め込んだ言葉だった。
お互いがお互いに、自分は必要ない存在なんだと思い込んでいる。

「…ばかやろ…」
「兄さん?」
「お前の、こと、ずっと…俺には、ライルしかいないのに…!」

今度は正面からライルの身体を抱きしめた。
ライルはビクリと身体を震わせたが、逃げようとはしない。

「ライルは俺の生きる意味だ。お前がいなけりゃ、俺は生きてる意味なんてない 」
「…また、大袈裟だな。それにそんなの嘘だろ?」
「嘘なわけあるかっ」
「俺達何年間会ってないと思う?こんな希薄な関係で、そんなこと言われたって信じらんねーよ」
「希薄…?俺らは双子だろ?切っても切れない糸で結ばれてんだ、希薄なわけね ーだろ」

ライルの頬を両手で包み、額を触れ合わせた。
揺れる瞳に笑いかける。

「兄さん…俺は、兄さんから逃げて…そんな俺を、兄さんも置いてったんだろ?俺なんか、兄さんにとってはなんの意味もない存在で」
「なんの意味もない存在に、仕送りなんかするかよ」
「…それ、は…兄さんが、イイ人だから。ダメな弟を放っておけなくて…」
「違う、ライル」
「でも、だって…兄さんは小さい頃から俺なんか気にしてなかったじゃないか…!」
「ライル…」
「俺がどれだけ兄さんにアたろうと、はぐらかして流して、一度も本気でぶつかってきてくれなかった!眼中になかったんだろ?俺なんかっ…」

自身をけなす言葉ばかりが出るその唇を、思わずニールは塞いだ。
半開きだったそこに舌をさしいれ、ビクリと逃げた舌を追って絡める。
熱い咥内を舐め回し、腰を抱き寄せ身体を密着させた。

「は……ライ、ル…俺は、お前に嫌われるのが怖かっただけなんだ」
「ん、ふぅっ…は、ぁ…?」
「これ以上嫌われるのが嫌で、逃げてたんだ。俺なんだよ、逃げてたのはっ…ラ イルのこと、こんなに好きなのに!愛してるんだ、ライル!」
「兄さん…」
「なぁ、信じて…俺にはお前だけだ。ライルが俺の全てだ。ライル、ライルがいてくれれば、他には何もいらない!」
「……兄さん…ニー、ル…」

記憶の彼方にあった兄の泣き顔が、ライルの胸を締め付ける。

「俺は…ニールの支えになれて、いたのか?」
「あぁ、当たり前だろっ…!」
「…ニールも、俺のこと愛してるって…自惚れていいの?」
「ばかやろう、お前がいなきゃ死んじまうくらい、俺はお前を愛してるよ」
「ニール…俺、俺も、愛してるんだ…!」

ライルはついに涙を零した。
ニールはその雫をそっと舐めとる。

「ごめん、ニール。この感情が怖くて、逃げてた。ニール、好きだよ、ニールが大好き…!俺のこと、許してくれるか?」
「最初から怒ってもいねーよ。なぁ…らいるぅ…」

またそっと唇を合わせる。

もう離したくない

離れたくない

やっと抱きしめることが出来た片割れを手放す気など消え失せていた。









「お前を、さらってもいいか?ライル」






世界を見渡せる場所へ、招待しよう。











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一期で木陰に隠れてライルを見詰める兄さんには衝撃を受けたなぁと

きっと地上に降りるたびにライルのストーキングをしてたんだろうなぁ…^^
同じ髪型にして、同じ嗜好品を買い込んで、ライルの顔を目に焼き付けて、宇宙に戻るんだよ!

なにかがキッカケで、ライルを攫ってしまうといいなって!

ライルもニールのそばにいたかったから文句一つ言わず付いていきましたとさ^^


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