*ブラザーコンプレックス5*
*パラレル設定
*商社マンライル
*CBがなんでも屋さんです
許せる方のみど〜ぞ
日曜日、兄が早朝に慌ただしく出て行ったため今は家に一人きり。
遅い朝食、早い昼食、二度寝の結果がこの時間だ。
「今日はどうすっかなー」
テレビをつけながら思わず独り言を呟いてしまう。
昨日まで兄に仕事の予定はなく、一緒に出掛ける予定だったワケで。
「……にーさんのボケ」
レトルトのピラフを口に運び、悪態をついた。
「もしもし?なに、どうした?」
『ライル〜っ、今家にいるかぁ?』
食事の後、まったりとソファーに沈んでいたところに携帯が鳴った。
着信は兄からで、首を傾げながら電話に出る。
「いるよ、今日の予定アンタのせいで狂ったからな」
『ホントごめん!埋め合わせは絶対するから!』
「はいはい、で、なに?」
『あっそうだ!俺の部屋のパソコンにさ…データスティック刺さってねぇ?』
「ちょっと待って…えーと…………あぁ、あった」
『やっぱりか!!!』
「うわっ、でけー声出すなよ!」
『ライル〜〜ぅ』
「今度は猫撫で声かよ…」
『……あの、さ?もしもさ?俺のトコまでさ?持ってきてくれたり…しない?』
「……ちゃんと言え」
会話しながら、データスティックを抜き取り、自室に足を向ける。
『う…大っ変申し訳ありませんが…そのデータスティックを届けていただけませんでしょおかっ…?!』
「オーライ兄さん、会社に行けばいいんだよな」
上着を羽織り、ポケットにデータスティックを突っ込んだ。
財布はケツポケット、テレビを消して照明を落とし、玄関に向かう。
『サンキュウゥゥライルぅ!会社までのナビ、携帯に送るから!』
「兄さんの会社に行くの、初めてだな」
『あぁ、そういやそうだな』
「…じゃ、今から出るから」
『ほんとありがとな、愛してるぜライル』
「…バーカ」
通話を切ると、直ぐさま送らてきたナビソフトを起動させる。
オレンジ色の球体が画面の中で跳ね、ナビを始めた。
『ハロ、ハロ!ロックオンノアイボウ!ヨロシクヨロシク!』
「ハロさん?よろしくな」
会社で呼ばれている兄のあだ名に軽く吹き出しながらも、AIに挨拶をした。
兄の職業は、所謂なんでも屋。
兄は探偵のようなことをすることが多いが、店番やハウスクリーニング、工事等、色々な仕事を請け負うそうだ。
高層ビルを見上げ溜息をつく。
この中に無数の部署があり、それぞれにあった仕事を行う、というわけだ。
その中でも難易度の高い依頼を請け負うのが、兄がいる部署。
“ソレスタルビーイング”
社名が刻まれた壁を見ながらエントランスホールに入る。
中央にある受付に行くと、可愛いらしい女性に深く頭を下げられた。
「こんにちわ、ライル・ディランディ様でございますね?」
「あ、あぁ、はい。えーと、ニールから…」
「お話は聞いております、どうぞ奥のエレベーターに乗って57階までお行き下さいませ」
「あぁ、ありがと」
一見すると、普通の会社。
でも擦れ違う人達の中に、あからさまにカタギではないような人もいた。
いたる分野のエキスパートを集めたこの場所は、異様な空気が流れているような気もする。
「…なんか、ちょいと後悔」
上へ登るに連れて乗り合わせた人達は減っていき、一人になった時についに呟いていた。
「ここ、か…えーと、兄さんは…」
「あれぇ?ロックオン?」
通りかかった女の子に声をかけられる。
「えっと、俺…」
「あぁ!ライルさんだ?そーですよねぇ〜っ」
「え?あ、あぁ」
「こっちにどーぞ!今ロックオン、席外してるから、中で待ってて下さ〜い♪」
「えっ、これ、兄に渡してくれれば…」
「あ!私はクリスティナ・シエラ、クリスって呼んで下さい!よろしくお願いしますね!」
「あぁ…よろしく…」
背中を押されて仕事場に連れていかれた。
みんながみんなパソコンと睨めっこをしている中に入るのは、正直気まずい。
「みんな〜!ロックオンの弟さんがきたよー!」
「あらまぁっ、そっくり!」
奥の席、所謂部長席に座っていた女性が声を上げた。
チラりと視線をくれる奴、無視の奴、凝視する奴、様々な対応に少し居心地が悪くなる。
「そこにどーぞ、今お兄さんね、他部署に助っ人中なの。すぐ戻ると思うわ。あ、ミレイナ!お茶お願い!」
「はいですぅ!」
室内の端っこにある黒い皮張りのソファーに腰掛けた。
すぐさまコーヒーを目の前に置かれ、見上げると
「ライルさん初めましてです。私はミレイナっていいます。ストラトスさんにはお世話になってますですぅ」
「え、えっ?君も社員?」
「もちろんです!」
「…はぁ、凄いな」
「うふふ♪でわでわごゆっくりです」
見た目十代前半の少女にニコリと微笑まれ、苦笑を零す。
暫くコーヒーを啜りながら眺めていると、目の前に人影が現れた。
「よぉ、てめーかぁあのキザ野郎の弟ってのは」
「…アンタ誰?」
不敵に笑う青年に見下ろされ、少しムッとしながら言葉を返す。
「ムカツク程そっくりでいやがる。あぁ、俺ぁハレルヤ様だ」
「…おめでたい名前だな」
「あぁン?てめー喧嘩売ってんのか?」
「アンタが売ってんだろーが」
「言うじゃねぇか、てめ…」
「やめろハレルヤ」
最初から喧嘩上等モードの青年、ハレルヤの肩を誰かが引いた。
「ンだよ、チビ」
「アレルヤに替われ」
「嫌だね…あぁ?うるせぇな、てめーは黙ってろよアレルヤ!」
「…?」
独り言を始めたハレルヤを押しのけ、少年…が俺に右手を差し出す。
「刹那・F・セイエイだ」
「ん、あぁ、ライル・ディランディ」
「ロッ…ニールには世話になっている」
「こちらこそ」
刹那と握手を交わし、微笑むと、刹那はぎこちなく笑った。
「ごめんなさい!ライルさん!」
「へあ?!」
「さっきはハレルヤが失礼なこと言って…あ、僕はアレルヤ・ハプティズム。仲良くして下さいね」
先程のハレルヤが、いきなりにこにこしながら俺に握手を求めてくる。
頭が軽く混乱して、刹那に説明を求め視線を移した。
「彼は二重人格者だ」
「…二重、人格?え、マジ?」
「はい、ハレルヤは僕の第二人格です」
「……そんな奴ホントにいるんだ」
「えぇ、いるんですよココに」
手を取られ、勝手に握手をされる。
「貴方のことはロックオンから嫌というほど聞かされてます」
「はは、は…なんか悪いな」
「アンタの写メを山ほど見せられるしな」
「…まじで…悪い」
ココでも兄のブラコンっぷりは発揮されているらしく、被害者?二人に頭を下げた。
「でもね、貴方の話をしている時のロックオンはとても幸せそうなんですよ」
「へっ?」
「これでもかと目尻を下げてな」
「……うぅ」
途端に恥ずかしくなり、身を縮こめる。
「あのクソ兄貴…っ」
「ふふ、確かに少しうざったい時もありますけど、貴方には大分救われてるんです」
「…どういうこと?」
「僕達の仕事は時に非常に危険なこともあります。そんな時や、皆気が立ってる時、ロックオンは決まって貴方の話をしだすんですよ」
「ほとんどどうしようもない惚気話だがな。あまりにもロックオンが幸せそうに楽しそうに話すものだから、俺達も毒気が抜かれる」
「ハレルヤがうるせーブラコン野郎が!なんて言った時なんて…ロックオンなんて言ったと思う?」
「…ブラコンの何が悪い…かな」
俺は兄が前に胸を張って言った言葉を呟いた。
二人は顔を見合わせて、苦笑する。
「そりゃもう大声で」
「殴りてぇ〜…」
「とにかく、アンタには世話になった」
「俺の知らないところでな」
それから思ったよりも会話が弾んでいると、ドタバタと音を立てながら誰かが室内に飛び込んできた。
「ロックオンストラトス!!まだ話は終わってませんよ!」
「ライルー!!」
「あはは、来た来た」
「騒がしいな」
猛スピードでこちらまで迫ってきた兄に、嫌な予感がして身構える。
「ライルゥ!」
「だぁあああ止まれバカヤロウ!」
制止虚しく、飛びついてきた兄によりソファーに沈んだ。
「ありがとなぁっライル!持って来てくれて!」
「は・な・れ・ろ〜っ」
「つーかなんだお前ら、俺のライルと楽しそうにおしゃべりしやがって!」
「ロックオンが興味をもたせるから悪いんですよ」
「ライルはアンタが話す以上に可愛いな」
「だろ〜?俺のライル可愛いだろ〜?って、コラ刹那!ライルは俺んだぞ!」
殴りたい。
無性にそんな気分になり拳を握り締めた。
「ほらっ兄さん!コレ!」
「おっ、サンキュー。ほらティエリア!ちゃんとやってあるぜ!」
「忘れてきておいて何を偉そうにしてるんですか。まず弟から離れるなさい」
「えー、やだよ、ライルと俺は磁石みたいなもんなんだし」
「全く…この目で見たくなかった光景だ…。貴方のイメージに関わりますから離れなさい」
「俺のイメージとかどーだっていい!」
「いや、離れろよ兄さん」
「ライル?!酷い!」
無理矢理引っぺがし、座り直す。
兄はぶーぶー言いながらデータスティックをティエリア?に渡した。
「チェックしてきます。問題無かったら帰っていいですよ」
「マジか!ライル、もうちょい待っててな?この後デートしような!」
「バッ、なっ、違っ…違うからな!」
兄の問題発言を、慌ててごまかそうと刹那達を見る。
そんな俺を何事もなかったように三人が見返してきた。
「貴方とロックオンの関係は知ってますから、気にしないでもらいたい」
「……あ?」
「偏見とかしないですよ僕達」
「むしろつい最近まで肉体関係がなかったという方が不思議だった」
「……………え、あれ?兄さん…?」
「え?えへへ?皆に話ちゃった…」
「…そうか、バレバレか……って…」
冷や汗を流す兄の口に人差し指を突っ込み、思いきり左右に引く。
「いひゃああああひ!」
「こンのクソ兄貴!なんてことしやがる!!」
「ひゃひゃ、ぁひふ〜っ!はへへ〜っ!」
今後大して係わり合わないだろう人達にでも、この関係を知られるのは死ぬ程有り得ないことだった。
禁断なのだ、この関係は。
「まぁまぁ、大丈夫ですから」
「いたたた…口が裂けるかと思ったぜ…」
「裂いてしまいたかったわ!」
「だってー!お前の知り合いには言ってないんだし、いいじゃねーか!」
「言ったらマジ殺す!」
「ロックオンが言ってた通り、恥ずかしがりやさんなんだね〜」
「誰だって恥ずかしいだろ!」
「愛し合ってるんだから、いいじゃないですか」
「ッ、う…ぐぅぅ」
「良いこと言うなぁアレルヤ!」
「アンタは黙ってろ!」
「悪かったよ…ライルー、そんな怒るなって」
どうやら誰も俺達に対しての偏見はないらしい。
「今時同性愛なんて珍しくないわよぉ?」
「だよなぁミス・スメラギ!」
「え゛」
「この部署の責任者のスメラギ・李・ノリエガよ。よろしくね♪」
「…どーも…」
「さーて、アレルヤ刹那、仕事に戻ってちょうだい」
「「了解」」
去って行く二人と入れ違うように、いつの間にかいなくなっていたティエリアがやってきた。
「問題ありませんでした。これでいけます」
「だろ!」
「ロックオン、可愛い弟さんとの一日を邪魔しちゃってごめんね?もう帰っていいわよ」
「全くだぜ、さ、帰ろうぜーライル」
「…なんか疲れた」
「大丈夫!俺の車で寝ていいぞ!」
「あぁ…」
「お疲れ様ーロックオン。また来てね、ライル」
「はぁ…」
気軽に見学に来ていいような会社じゃない気がするが。
一応笑顔を返しておく。
「いやー、ライルを見せびらかせて満足した!」
「……は?」
「え?いや、ミス・スメラギとかがさ、そんなに可愛いなら連れてきて見せなさい!っていうもんだから」
「………おい、忘れ物したのは芝居か?」
「いや、アレはマジ。ちょー焦った」
「…兄さん…」
「んー?」
「一度その口を裂いてやる」
「ひだだだだだだだだだ!」
運転している兄は抵抗できず、手加減なしに頬を抓ってやった。
「なにすんだライル!」
「精神的に被害を被った!慰謝料払えクソ兄貴!」
「なんだそりゃ!」
口論で兄が俺に勝てるハズもなく
本日の夕食は高級レストランでフルコースが決定。
ニールのブラコン度合いは、ちょっと考えものだと再確認した日だった。
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ブラコンシリーズ第五弾(笑)
オールキャラっぽくなりました!!^^
刹那もハレルヤもアレルヤも、どうやらライルを気に入った様子です。
フェルトは淡い恋心がライルのせいで散ったので、ライルを遠くからずっと恨めしげに窺っていたという裏話があったり。
CB公認の関係にライルは今後頭を抱えるハメになるだろうと思います。
今後大した関わりがないだろうとか、そんなワケないだろうライル…^^