*ブラザーコンプレックス4*



*パラレル設定
*商社マンライル
*ライルの同僚、オリキャラ出てきます

許せる方のみど〜ぞ





木曜日の夕方、仕事を終えて席を立つ。
まだ居残りするという刹那にミルクをおごって
ティエリアにデータスティックを渡して
ハレルヤに変わったアレルヤに一言入れた。

「じゃー、お先にー」
「お疲れ様ーロックオン」
「ぉ、と?」

出ていこうとした寸前で、携帯が震える。
着信を見ると、ライルの名前。

「ライル?どうした?」
『も、もしもし、あの、ライルのお兄さん?』

焦って上擦った男の声に眉を寄せた。
聞き覚えは、ある。

「どちらさん?なんでライルの携帯…」
『良かった!俺、同僚のもんなんだけど、今病院にいるんだ。ライルが怪我をして…』
「っっな?!」

頭の中が、真っ白になった。











病院の駐車場にノーブレーキで車を滑り込ませる。
幸い人はいなかった。

院内に駆け込むと、一人の男が声をかけてくる。

「こっち!」
「ライルはっ」
「上の階にいるんだけど…」「どこだ!」
「ちょ、ちょっとお兄さん落ち着いてよ」
「落ち着けるか!!ライルはどこだ!」

頭に血が登ってるのはわかるが、冷静になんてなれなかった。
男の腕を掴んで怒鳴る。

「う、い、行こう。案内します、から」

怯えた男に、申し訳ないと思いながらも先を促した。









先導された場所は、待合室。
ドアを開けた男を退かして中に入る。

「ライルッ…!」
「に、さん?」
「ッ……!」

ソファーに腰かけるライルは、目を丸くして俺を見ていた。

「…怪我、おま、あたっ、頭…」
「なんで来てんだよ…アンタだな先輩!」
「わ、悪いライル。だってお前歩けねーしさ、お兄さん呼んだ方がって」
「ライル!大丈夫なのか?!」

両肩を掴んで翡翠の瞳を覗き込む。
ライルは、頭に包帯を巻き、左足にも包帯が巻かれ氷嚢を宛てていた。

「大丈夫だ、たいしたことない」
「だって頭!」
「少し打っただけ、足は捻挫」
「捻挫っ…い、痛いか?」
「そりゃあ…痛いだろ」
「〜〜〜っ!!らいる〜〜〜!!!」
「ぐぇっ」

俺がその痛みを変わってやりたい!
衝動のままライルを抱きしめる。

「く、苦しい痛いっ!兄さん!」
「ライル、ライルライルライル」
「…も、わかったって。大丈夫だ、兄さん。落ち着けよ」
「だって、ライル…ライルが、い、いなく、なっちまったら俺…っ!」
「いるだろ?ここに。大丈夫だ」

ライルの胸に縋り付いて、必死で心臓の音を聴く。
少し速めに打っている脈を感じて、安堵した。

「えー、と。俺、会社に戻るわ」
「あ、どーも。コレが迷惑かけて」
「はは、お前もな。明日は会社休んで療養しろ。部長には俺が伝えとく」
「よろしくお願いします。あと、彼女にもフォロー入れといて下さい」
「わかってるよ、じゃあな。あ、お兄さん!ライルをよろしく」

男の声に、頷いて返した。
部屋から男の気配が消えて、ライルの掌がそっと俺の頭を撫でる。

「…会社の階段でさ、荷物たくさんもった女性社員とぶつかったんだ。咄嗟に庇ったらこのザマだよ。
階段の1番上から転がり落ちちゃって、頭打って気絶したから病院に運ばれたんだけど、ほんとただのたんこぶ程度なんだよなー」
「…異常、ないのか」
「ねーよ、精密検査してもらったから大丈夫」
「そ、か…」
「まぁ足は全治一週間の捻挫だけど」

赤黒く腫れ上がっているであろうソコを見て、涙が滲んだ。

「はは、にーさん、泣くなよ、大丈夫だって言ってるだろぉ?」
「だっ、て…痛い、だろ」
「あーもう、痛い痛い!だからさ、家に帰って早く甘えさせてくれよ」

ライルが、触れるだけのキスをくれた。
俺は目を見開いて固まる。

そして、ガバッとライルを抱え上げた。

「うわぁ?!」
「帰るぞ、ライル」
「まままままま待て!これはない!」
「歩けねーんだろ、こうした方がいい」
「いやいや!無理無理無理!」

お姫様抱っこをされたライルは暴れるが、耳に息を吹きかけてやると甘い声を上げて大人しくなった。

「〜〜にーさんの変態〜っ!」
「恥ずかしいなら、俺にひっついて顔隠してろ」

何かぶつぶつ文句を言いながらライルは顔を伏せる。
しっかりとライルを抱え直し、待合室を出た。

「しっかしお前軽いな…ちゃんと食ってる…よなぁ」
「……ん」

病院を出る時にたくさんの視線が突き刺さり、肌で感じたであろうライルは更に縮こまった。
俺の首に両腕を回して、ぎゅうぎゅうしがみついてくる愛しい存在のおかげで頬は緩みっぱなし。





「いやぁ、役得だった!」
「もうこの病院来れない…」

シートにぐったりと沈むライルとは反対に、俺は意気揚々とシートベルトを締めた。

ライルの怪我は心の底から心配だが、たまには良いかもしれない。









駐車場からソファーに下ろすまでの二回目のお姫様抱っこで、ライルは精神的に参ってしまったようだ。
上半身だけ横になり、お気に入りのクッションに顔を埋めて唸り声を上げている。

「ライルー、ネクタイ解け、息苦しいだろ?」
「うん…」
「とりあえずシャツも脱いで、Tシャツになろう。下は…夜に替えような、今は腫れがひでーから動かすのはやめとこう」
「んー脱がして」
「え?!」

思いがけないライルの言葉にびっくりした俺は、車のキーを足の上に落とした。

「いたっ!地味に痛ぇ!」
「なにしてんの兄さん…ほら、甘やかしてくれるんだろ?早くー」
「あ、あぁ、そうだなっ」

身体を起こしたライルは、怠そうに俺を見上げている。
ライルの前に膝立ちになり、そろりとネクタイに手を伸ばした。

「……兄さん」
「はいっ!」
「声裏返ってるし、つか、何興奮してんの」
「え!いや、ここっ、興奮なんかしてねーよ?!」
「嘘つけ。でも今は無理だからな…勘弁してな」
「あ、当たり前だろ!お前は怪我人なんだぞっ」
「だって今の兄さん、ブチキレて襲い掛かってきそうだし」
「お兄ちゃんの理性をナメるなよライル、俺が何年間お前を前に我慢してたと思うんだ」
「へぇ〜…」

そうだ、俺。
忍耐だ、我慢しろ、頑張れ俺の理性!

今のライルが色っぽいからって欲情するなよ俺!

「よよよよし、ほらバンザーイ!」
「ん」

ライルの肌をすぐさま隠すようにTシャツを着せる。
そしてすぐさま脱いだものを持って立ち上がり逃げるわけだ。

「なー兄さん」
「はいぃっ!」
「このシャツ兄さんのだよ」
「ッッ!」

バッと振り返り見てみれば、確かにソレは俺のもので。
どんだけ動揺していたのか自覚し恥ずかしくなった。

「……ごめっ…」
「まぁこれでいいけどさー。それよりお腹空いたー」
「オーケイ、今作るから、紅茶でも飲んで待っててくれな」

完全に甘えっ子モードなライルは素晴らしく可愛らしい。
弟気質がなせる技なのか、俺にはそんな可愛く甘えることはできない。

紅茶を手渡して、なるべく優しく頭を撫でてやった。















「にーさん、痛いっ…」

夜中、一緒にベッドに入ったライルに肩を揺すられ目を覚ます。
苦しげな声音に慌てて飛び起きれば、涙目で息を荒くしているライルがいた。

「どうした?大丈夫かっ?」
「あし、痛くてっ…熱い、いたっ…ぃ」
「足?ちょっと待ってろ、冷やすモン持ってくるから」
「ん、つっ…」

保冷剤をタオルに包み用意する。
ライルの足の下に枕を突っ込んで、保冷剤を当てた。

「ふぅっ…た…」
「…ライル…どうだ?大丈夫か?」
「ん、冷たい、気持ちー…」
「…どっかに当てたかな?……ま、まさか俺が蹴った?!」
「わかんねーけど…衝撃感じて起きたわけじゃないから、多分違うよ」
「そ、そうか、よかった…」

ライルが痛みに苦しむ姿を見て、ライルが庇った女性社員に恨みを覚える。
彼女に非はないとはわかっていても、悔しかった。

俺がその場にいれば、ライルを護ることが出来たのに。

「兄さん」
「……へ?」
「なんでそんな顔してんだよ、アンタはなんも悪くないだろ?俺が自分でしたことだ」
「…あぁ、でも…やっぱり考えちまうよ、俺がいたら、お前を護れたのにって…」
「…俺が、鈍臭いから…兄さんに心配ばっかかけてごめんな」
「ライルはちょっと抜けてるだけだろ?確かに俺から見たら危なかっしくて仕方ないけどさ」

ライルは決して鈍臭くはない、むしろ天性の瞬発力があり、羨ましいくらい運動神経はいいんだ。
ライル自身がそれを自覚しないで使わないせいで、兄の方がなんでも勝っていると思い込む。

「ライルも、誰も悪くないよな。ごめんな、過去を振り返って後悔するのは俺の悪い癖だ」
「ん…。でももし兄さんが俺を助けてくれて、兄さんが怪我してたら俺すげー後悔する。
だって俺、看病とか苦手だし…やっぱ、兄さんには世話焼いてもらう方がいいし」

アンタの弟で恋人なんだから、甘やかされて当然だろ?

ライルは小さな声で呟いた。
その言葉に、俺は一気に顔に熱が集まる。

「っ…!」
「な、なんだよ…」
「おっっ前!可愛過ぎだ!!」
「わっ、ちょっ」

我慢しきれなくなり、噛み付くようにキスをした。

「ん、ふっ…ばか、やろっ…」
「ご褒美!こんくらい、貰ったっていいだろ」
「〜〜…怪我治ったら、ちゃんと…ご褒美あげるよ…」
「!それって…」

引き寄せて、抱きしめて

耳元に囁く。

「ライル自身?」
「ッッ!!」

真っ赤になったライルは俺の肩に顔を埋めた。
これ以上煽られたらいい加減ヤバイので、そっと肩を押し横にさせる。

甘やかしてやったご褒美がお前自身なら
なんて素晴らしくバランスのとれた需要と供給なのだろう。

「もう寝ろ、お休みライル」
「……ん、お休み兄さん」











痛い思いをしたなら、それに勝る幸せをあげる。

だからライル、お前はずっと俺の傍にいて













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続いてたブラコンシリーズ第四弾(笑)

ライルが怪我をした時の兄さんの動揺っぷりが書きたくて書きました!^^
怪我した時は、ライルのが冷静なイメージです。
兄さんはライルのことになるとすぐパニくりますからね(笑)

ライルは早撃ちが得意らしいので、兄さんより瞬発力があると勝手に捏造。
ライルはやる前にどーせ俺なんてって諦める宝の持ち腐れタイプだと思われます。

捻挫ってしたことないんですが…突き指(ヒビ入り)した時にむしょうに痛くなって目が覚めたことがあったので(笑)


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