*ブラザーコンプレックス*



*パラレル設定
*商社マンライル
*ライルの同僚などオリキャラ出てきます


許せる方のみど〜ぞ





「え、何。お前フったの?」

休憩室で煙草をふかしていた所、たまたま一緒になった先輩に驚いたように言われる。

「そーなんですよ、酷くないですか?こんなに可愛い子相手に!」
「自分で言うのかっ」

さっぱりしているにも程があるというかなんというか。
先輩に俺にフラれたと告げた一年上の女の先輩がケラケラと笑う。

「…普通本人目の前にこの話題出るか?」
「嫌味よ嫌味、ディランディ君」
「そスか…」
「なんでまたフったんだー?仲良かったろお前ら」
「今はなんか付き合う気になれなくて」
「酷いでしょ?こーんなふわっとした理由でフラれたんですよー私!」
「おーおー可哀相になぁ。酷い奴だなライル」
「俺が悪いんスか」

先輩二人がグルになって俺を虐めてくる。
でも正直、助かった。
同じ部署にいるし、フったことでわだかまりが残るのは嫌だったから。
おおらかな先輩で、ホントいい人だ。

でも、好きにはなれない。

「あ、もしかしてお兄さんが家にいるからとかじゃないよな?」
「なっ…」
「え?!ディランディ君お兄さんいるの?」
「そうそう、しかも双子の!超ソックリな」
「ほんとー?!えー会いたい!」

先輩め…唐突に兄さんの話題を出すとか反則だ。
目を輝かせて俺を見てくる視線が痛い。

「会いたいなぁ、私。ねーディランディ君、会いたいなー」
「あははは!お前コイツと同じ顔だからって!」
「なんですかー?お兄さんの方なら大丈夫かもー」
「おっ前どんだけ面食いだよ!」
「顔は大事ですよ!」

そうかい、アンタ俺の顔目当てだったのか。
なんだか少し悲しいよ。

「お兄さんにアプローチしたとこで無理だと思うぜぇ?」
「えー、なんでですかぁ?」

ニヤリと、先輩は俺を見てすごーく嫌な笑みを浮かべた。
嫌な予感しかしない。

「だってコイツの兄貴、コイツにゾッコンだもん」

二秒後、狭い休憩室に黄色い悲鳴が響く。

「なにそれぇ?!どーゆうことですか!!!」
「あっはははは、すげーブラコンだもんなーお前の兄貴!」
「うるせぇですよ…」
「詳しく!先輩っ、詳しく!」
「あのなー」
「ちょ、止めて下さいよ何知ってんですかアンタ!」
「こないだの飲み会のこととか?」
「うわ最悪!」
「えー!教えて先輩!」
「いやな、二次会が終わってさぁ」
「話すのかよ!」
「よーしもう一件行くぞーって店出たらさぁ、ライルー!ってでけぇ声が聞こえて」

出て行こうとした俺の腕を二人が同時に捕まえた。
動けなくなり二人を睨み付けるが、二人は俺のことなんか見ちゃいない。

「みんなで振り返ったらライルと瓜二つの男が立ってんの!ライル見たら顔青ざめさせて固まってるから意味わかんなくなってな。俺達酔ってんのかなぁみたいな」
「そんなにソックリなんですか?」
「髪型から何から全く一緒、並べられたらわからない」
「すごーい!」

最悪な思い出話だよ先輩。
あの日はホント最悪だった。









「ライル!」

恐る恐る振り向くと、兄の顔。
タッと走り寄ってきていきなり抱きしめられた。

「ぐぇ」
「お前なんで電話出ないんだよ!心配しただろ!遅くなるなら連絡ぐらいしろよー」
「…飲み会だって伝えたハズだぜ」
「もう1時回ってんだぞ!いくら飲み会でもなぁ」
「あぁもう悪かったよ!離してくれ!」

兄さんはそこで初めて同僚達に気付いたように顔を上げる。
ニコッと営業スマイルを向けた。

「初めまして、ライルの兄です。いつもコイツがお世話になってます」

頭を下げる兄さんに同僚達も慌てて頭を下げる。
口々にこちらこそだのいえいえだの呟きながら。

「んじゃ、俺コイツ連れて帰るんで」
「ちょ、兄さん!」
「なんだ、飲み足りないのか?兄さんが家で付き合ってやるよ」
「そーじゃない!」
「もうこれ以上はダメだ。どうしてもってんなら力尽くしちゃうぜ?」
「っ……!」

不穏な空気が漂い始めた俺達を気遣かってか、先輩が控えめに声を掛けてきた。

「あー、ライル。今日はもう帰れよ、な?また明後日な」
「え、あ」
「じゃあなー。みんな行こうぜ」
「ちょっ…」
「いい人だなあの人」
「兄さん…」
「ん?眠いか?車で来てるから寝てていいぞ。ちゃんと毛布も持ってきたから」
「違くて…」
「怠かったら風呂も一緒に入ってやるぜ?」
「〜〜〜〜ッ兄っさん!!!」











あの日帰ってから散々怒ったら酔いが回って、結局兄さんに何から何まで世話を焼かれるハメになってしまった。

「すっごい!!本当にそんなにブラコンな人って世の中にいるんだー!」
「てか、なんで最後の方知ってんスか先輩…」
「曲がり角に隠れてみんなで見てたから」
「最低ですよアンタらっ」
「だってなぁ、見物だろー」
「私も見てみたかったなぁ、二人のやりとり…」

とても残念そうに溜息をつかれた。
溜息をつきたいのはこっちだ。

逃げ道を探してチラリと時計を見ると、休憩時間がそろそろ終わる。

「あ、もう行きますよ」
「今度お兄さんの写真見せてね!むしろ飲み会呼んで!」
「嫌ですよ」
「バカー!」

三人で騒ぎながら部署に帰ると、すれ違った上司から「なんだお前ら、仲良いなぁ」と笑われた。







そして、噂をすれば影とは、誰が言ったのやら。

今日は帰り際にトラブルが起きて、居残りすることになった。
デスクの隅で携帯がひっきり無しに震えている。

「おいライル、携帯」
「ん、大丈夫。仕事関係じゃないから」
「そーなのか?」

兄さんからの着信は、全てグリーンのランプがつくように設定していた。
だから仕事が落ち着くまで無視。
今は兄さんどころじゃねぇ。

次々と帰宅していく同僚達に目もくれずトラブルを解消していく。

そして室内が静まり返った頃、やっと肩の力を抜いた。

「……終わった…」
「お疲れ様〜」
「うおぉっ?!」

一人きりになっていたと思っていたところに、突如声を掛けられて悲鳴が上がる。

声の主を探すと、あの女の先輩。

「…びっくりさせないで下さいよ」
「ごめんね、忘れ物しちゃって引き返してきてさ」
「あービビった…」
「もう帰れるの?」
「え?あぁ、はい」
「じゃあ駅まで一緒に行こ」
「……はぁ」

仕事を終わらせた安堵感と、びっくりしたことによって携帯のことはすっかり頭から抜け落ちる。
着信を告げているランプに気付かず、ポケットに突っ込んだ。







「しかし遅くまで大変だったねー」
「帰り際だったから、時間掛かって」
「しかも先方のミスでしょ?君が処理するとかお門違いね」
「仕方ないでしょ、よくあることですよ」
「そんなもんかしらねー………あ?」
「ん?」

先輩が立ち止まる。
俺を見て、もう一度そっちを見て。

パァッと目を輝かせた。

「あの人?!」
「えっ…」

先輩の視線を追うと、そこには俺と瓜二つの顔。
いや、俺はそんなだらしねぇ顔しない!

「ライル!!」
「げぇっ!」
「やっぱりー!」

二つの嬉しそうな声とは真逆の声が出る。
逃げる暇もなく兄さんの両腕に捕獲された。

隣で先輩はまた黄色い悲鳴を上げる。

「ライル!心配したぞ!なんで電話もメールも返さねーんだよぉぉっ」
「うぜぇぇ!ここ公道!超迷惑!離れろよ!」
「兄さんはな!兄さんはなぁっ、お前がどっかで誘拐でもされたんじゃないかって…!」
「成人男性を誰が誘拐するか!!」
「わかんねーよ!だってお前可愛いもん!俺が監禁しちまいてーくらい!」
「ああああ怖いこと言うなっ!」

ハタ、と先輩に気付いた兄さんは、目で俺に誰?と聞いてきた。

「…この人、俺の一年先に入った先輩」
「初めましてー。お兄さんのコト、今日よーく聞きましたよー」
「初めまして、いつもコイツがお世話になってます。つか、え?何ライル、俺のことなんか会社で話しちゃうの?」
「嬉しそうにすんなっ」
「うふふ〜本当に仲良しなんだぁ〜可愛いな〜」
「仲良しなんですよ〜俺のライル、可愛いでしょ〜?」
「兄さん…」

自分の彼女か子供かペットかなんかの自慢でもしてるかのような表情だ。

「さーて、帰るか、ライル。今日はお前の好きな芋シチュー!」
「俺が好きなのはシチューであって芋じゃねぇ」
「お兄さん料理できるんだー!すごいですねー」
「いやいや、ライルの料理のが美味しいですよ!休日はライルが作ってくれるんだけど、それがまたうまくて」
「あああもういい!いいから帰ろう兄さん!」
「わかったわかった」

ニコニコしながら俺の頭を撫でてくる。
その手を払う気にもなれなくて、されるがままになった。

「疲れたか?」
「ん……」
「よしよし、マッサージもしてやるからな」

額に音がするキスをされ、疲れが増す。
先輩の視線がイタイ。
泣きたい。

「じゃ、俺ら車なんで」
「えぇ、二人の邪魔なんてしないから安心して」
「邪魔だなんてそんな」
「ふふふ、目の保養させてもらったわー。また明日ね、ディランディ君!」
「お疲れ様です…」

兄さんは去って行く先輩にニコニコ手を振る。
姿が見えなくなると、急に俺の腕を引っ張って車に向かった。

「い、たたたっ!兄さん、離せよっ」

無言で突き進んで行くもんだから、少し不安になる。
辿り着いた車の助手席に投げ入れられた。

「ッ!…ちょ、っと…兄さん、何?!」
「……あの人と、やけに仲良かったみたいだな」
「……へ?」
「本当にただの先輩後輩?」

呆れて開いた口が塞がらなくなる。
答えを聞くまで発進させる気はないらしく、ジッと俺を見詰めたままだ。

「………こないだコクられたけど」

兄さんの眉間に深い皴が寄る。

「けど?」
「……断ったから、ただの先輩後輩。マジで」
「フったんなら、あんなに仲良くしてたらダメだろ。勘違いすんぞ」
「してないよ。あの人元からああいう人だったの」
「納得いかない」
「…ホントなんでもないんだって。今日はたまたま帰り一緒になっただけだし」
「……嘘ついてたら、お仕置きだからな!」
「あーはいはい、嘘じゃねーよ」
「信用ならねーなー」
「…ったく、どーしたら信用するわけ?」

いつまで経っても発進させる気のない兄に嫌気がさした。
俺は早く帰って明日に備えて寝たい。

「う〜〜〜ん、ちゅうさせてくれるか?」
「…………はぁ?」
「でことかじゃなくて、可愛い唇に!」
「…マジかよ」
「付き合ってないならいいだろ!」
「チッ…はいはい、わぁったよ!」

兄さんが喜々として顔を近付けてきた瞬間、強く目をつぶった。

柔らかい熱が、唇に触れる。
少し角度を変えて、唇を噛まれ、舌でなぞられた。

「ン…ふ」

れろ、と上唇の内側をなぞった舌がゆっくりと離れていく。
うっすら目を開けたのを狙ったかのように、もう一回キスされた。

「ん!信じる!」
「…満足かよ」
「おう!」
「………ブラコン」
「ブラコン上等!だって俺、ライルのことすげー愛してるもん!」
「そうかい…」







うちの兄は重度のブラコンだ。







兄いわく、ブラコンの何が悪い!!













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ブラコン物語でした(笑)

兄さんはライルの会社の連中に牽制もします。
別にライルがどこの女の子と付き合おうが口出しはしませんが、牽制しやがります。

まだライルに手は出しませんが、虎視眈々と狙いを定めているとこです。
一方のライルは、キスを拒まなかったり、一緒にお風呂入ったりと思わせぶりですが
さて…ライルの本心やいかに(笑)


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