*狂愛*



*二期後、ニール生存、パラレル設定
*ニールが限りなく病んでます
*流血的、非人道的な表現があったりしますので、お気をつけ下さい

許せる方のみど〜ぞ






焼けるような激痛に、視界が赤に染まった。

ぐるぐると目が回って、気持ち悪くなって、意識が遠退く。





「…ライル、ごめんな。綺麗な足にこんな……でもな、俺はお前のこの傷も、とても愛おしいよ」

優しい声音で、歌うように呟く兄に、あらん限りの罵声を浴びせたかった。
しかしそれは口に噛まされた布のせいで叶わない。

あまりにも酷い激痛に、ついに脳みそは思考を止め、意識を手放した。























「………ぁ」

吐き気がするような悪夢から開放され、見慣れた天井をぼんやり眺めていると、嬉しそうな声が掛かる。

「ライル、おはよう」

声の方を見遣れば予想通りニールの笑顔があった。
あの悪夢とは、似ても似つかない優しく明るい笑顔。

「に、さ…」
「水、飲めよ」
「ん」

寝起きだから声が出ないのか、いつも以上に掠れる声に違和感を覚えつつも水を流し込んだ。

「は…にーさん…」
「どうした?」
「怖い夢、見た」
「そか…もう大丈夫だよライル」
「うん…でも、怖くて、こわく……て」

愛していた、双子の兄に足首の腱を切られる夢。
痛くて痛くて泣き叫びたいのに、罵りたいのに、声を出せない恐怖。
淀んだ瞳と貼付けたようなニールの笑顔。

タスケテタスケテ、ダレカタスケテ!!!

いくら叫んでも、声は誰にも届かなくて。





ふと、ニールに縋り付こうとして気付いた。
両足の違和感に。

「……ぇ、あ?」
「どうしたの、ライル」

動きを止めたライルを、ニールから抱きしめる。
ニールの肩に顎を乗せ、そこから見える部屋の中をぐるぐると見回しながらうるさく鳴りだした心臓を宥めようとした。

「に、さん。俺、あし…俺の…」
「うん」
「あしが…ねぇ、あしがうごかない」
「…そうだな」
「っ……!あぁぁああぁぁぁぁあああ?!!」

悪夢が一瞬にして現実に変わる。
溢れた恐怖にライルは叫んだ。

暴れ出したライルをニールは抱きしめ、耳に吹き込むように何度も大丈夫だと繰り返す。
落ち着かないライルをベッドに押し倒し、素早くサイドテーブルに置いてあった注射器を首に注した。

「ぅあ゛ぁっ」
「…ライル、大丈夫だよ。ライルにはずっと、俺がいるからな」
「…ぁ、あ…にぃ…」

薬によって遠退いていく意識を必死で繋ぎとめながら、ニールに手を延ばす。
今だに頭は混乱しているし、兄に対する恐怖もあった。

でも、それでも縋り付けるのは目の前の兄しかいなくて

「兄さんっ…!」
「愛してるよ、ライル」
「……に…」

意識はついに途切れた。























「ライル、今日は天気がいいから散歩に行くか」

洗濯物を干し終えて部屋に戻ってきたニールは、車椅子に座り本を読んでいるライルに声を掛けた。
ライルは嬉しそうに笑顔を向け、こくりと頷く。

「どこに行くの?」
「んー、西の方の原っぱかな。今綺麗にコスモスが咲いてっから」
「いいね」

筋力が落ち、痩せ、すっかり軽くなったライルの身体を抱き上げ外出用の車椅子に乗せる。

乱れた髪を丁寧に櫛でとかして額にキスを贈った。

足が冷えないように柔らかな膝掛けをしっかりと掛けて固定する。

「行くか」
「うん」

ギシリと、車椅子が鳴って動き出した。
ニールが操る車椅子の上で、ライルはただニールの話に耳を傾ける。





こんな生活を始めて、一年が経っていた。







突然、ニールに拘束され猿轡をされ、足首の腱にカッターの刃を充てられたあの日から、ライルは歩くことが出来ない。

信頼し、愛していた兄からの残酷な所業に、最初は怒り泣き叫び、抵抗をした。
精神は不安定になるし、兄を見るだけで恐怖から過呼吸になる。

ただそれも、一ヶ月と少し経てば治まっていた。

ニールのことは愛していたし、何より頼れるのも縋れるのもニールしかいなかったから。

足が動かない自分は、ニールになんでもしてもらわないと生活が出来ない。

ある日ニールに尋ねてみた。

『なんでこんなことをしたんだ』

ニールはきょとんとしてから、ライルを抱きしめキスをしてにこりと笑って答える。

『愛してるからに決まってんだろ』

その笑顔を見て、その返答を聞いた瞬間、ライルは全てを諦めていた。



愛してるから、誰にも渡したくない。
誰とも話させたくない。
俺以外を見なければいい。俺だけに頼ればいい。

俺の傍から、離れないように。

ニールの、純粋なる狂気に、ライルは畏怖を感じた。
愛され過ぎることの重さを初めて知る。





兄を歪めたのは自分だ。

兄から逃げなければ、兄の願い通り普通の生活をしていれば

兄は壊れなかった。





これは何千もの命を奪った自分への咎だと、ライルは受け入れた。







「寒くない?」
「ん、大丈夫」
「綺麗なとこだよなぁ、去年より増えたかな」
「去年は俺、来てない」
「俺一人だったな。でも今年は二人で来れた」

車椅子では花を潰してしまうため、これ以上先へは進めない。
そっとライルの膝裏に腕を入れ、首に腕が絡んだのを確認してからその身体を持ち上げた。

「真ん中まで行くぞ、ちゃんと掴まってろ」
「うん」

ライルを横抱きにし、さわさわとあまり花を傷つけないようにゆっくり進む。
たまに甘えるように頬に擦りついてくるライルの頭に何回も唇を落としながらやっと目的の場所に着いた。

抱いたまま腰を下ろし、膝の上にライルを乗せ、膝掛けをしっかりとかけ直す。

「綺麗だなぁ〜」
「すごい、夢見てるみたいだな」
「夢だったら嫌だね」
「なんで?」
「ライルとこうしている時間が、虚構なモノになるのは嫌だ」
「……そう、だね」
「ライル、愛してるよ。愛してるっ」
「うん、俺も」

甘い香に包まれながら、二人は深く深く口付けを交わした。
性欲を刺激するような、激しいキスに、ライルは力無くニールの胸を押す。

「にっ…ん、も、ダメだって…」
「悪い、ついな」
「…つい、で、こんなとこでこんなキスすんなよ」
「はは、じゃあベットの上なら?」

悪戯にライルの首筋を舐め上げ、びくりと震える身体に満足そうに笑った。

「んっ…言わなくても、わかってんだろ…」
「ライルの口から聞きたい」
「……夜にしてくれ」
「くっ、可愛いなぁお前。了解」
「セクハラ…」
「恋人同士にセクハラもなんもねーの」

今度は子供のような触れるだけのキスを顔中に贈る。

「なぁライル、今夜のご飯は何にしようか」
「なんでもいいけど」

他愛もない会話をしながら、ずっとニールの手はライルの身体を撫で回していた。
足を撫で、腹を撫で、頬を撫で頭を撫でる。
たまにキスをして、それの繰り返し。

「…冷えてきたかな、帰るか」
「ん」

来た時のように抱き抱えられ、車椅子で家への道を辿る。

―本当に自分は、ニールがいないと生きることが出来なくなってしまった

ライルは沈み行く夕日を見ながら思う。
鼻歌を歌うニールに気付かれないように、ギリと唇を噛んだ。



ニールなしではいられない身体に、事実、そうされた。
性的な意味でもニールなしではいられない。
ニールの思う通りに身体を作り上げられ、それでも心まではまだ堕ちてくれない。

いっそ、本気でこれが幸せなのだと思えたらどんなにか楽だろう?

まだライルは自身の足で歩きたいし、ニールに文句も罵倒も浴びせたかった。
ニールから離れないまでも、自分の意思で、それなりの距離を保ちたかった。









「ライル?」

ニールがそっと問い掛けると、ライルの身体が大袈裟に揺れる。

「にぃ、さん」
「どうした、どこか痛いか?寒い?」
「あのな、お願いがあるんだ」
「なんだ?なんでも聞いてやるぞ」

―嘘つき
なんでも?

じゃあ俺に自由をちょうだい

ライルはその言葉を飲み込んで、微笑みながら別の言葉を舌に乗せた。







「帰ったらすぐ、めちゃくちゃに愛して」

思考から、逃れる術。
繰り返していれば麻薬のようにクセになるそれ。

いつか心まで溶かされて、これが自分自身が望んだ幸せなんだと思い込むための行為。





ニールは驚いた顔をしてから、嬉しそうに、それは嬉しそうに笑った。









「仰せのままに、お姫様」

ニールの笑顔に、心のどこかがドロリと溶ける。

さぁ早く

早く全て溶かして下さい





動かない足を、誇れるその日まで

俺はニールにそうやってねだり続けるんだ













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病んでるニールと、可哀相なライルでした。

イメージ絵の方にも書いたけども、ライルのことが好き過ぎて精神的におかしくなる兄さん好物!

再生治療で治せると思うけど、兄さんはライルを軟禁状態にしてるので病院なんて一切行かないよ。
わざわざ田舎の田舎に家を建てて、車で3〜4時間走らないと医者がいないくらいの偏狭に住んでます。
ライルはニールから逃げられない代わりに、諦めました。

足首の腱が切れてても、Hにはなんら問題はないですよね、多分。
ライルはニール仕様に作り上げられます^^

ここに刹那達を介入させてみるのも面白いかもしれ…ない…


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