*I believe
…3*
*パラレル設定
*ニルライ、刹ライ
許せる方のみど〜ぞ
信じたくなくて、逃げ出した。
信じたかった。
信じられなかった。
こんなにも愛しているのに、あの人は何故、酷いことをするの―
「……兄さん?」
意を決して帰って来た家には、人の気配はなかった。
昨夜見つけて目を疑ったあの赤いハイヒールもない。
「……いねぇの?」
最後まで躊躇って向かえなかった寝室のドアノブに手を掛けた。
ゆっくりと入った中には、昨夜の名残など微塵もなくて
もしかしたらアレは幻だったのではないかと、錯覚してしまう程。
スーツを脱いで、ネクタイを緩めただけでベットに腰掛けた。
とても自分のベットに座る気にはなれなくて、ニールのベットから自分のベットを眺める。
『昨日…兄さんは…』
自分のベットで行われた行為が脳裏に蘇り、無意識に唇を強く噛んだ。
そのまま寝転がる。
「ぁ…」
兄さんの、匂いだ―
そっと枕を抱き寄せ、布団に包まる。
ニールに抱きしめられている時のような感覚に、疲れていた身体は簡単に眠りに堕ちていった。
ニールに想いを告げられて、奪うようにキスをされて、逃がさないとでも言うように身体を暴かれた。
最初は怖かったし、驚いていた。
それでも、ライルはニールが好きだった。
愛していた。
だからニールの想いは嬉しくて、ニールを許す。
抱きしめて、俺も愛してると囁いて。
激情のままに抱いてしまった身体を労るように、ニールは優しくキスをしてくれた。
ニールからの愛情が変わることなど、失くなることなど考えたこともない。
ニールが、自分以外に愛を囁くことなど有り得ない。そう信じていた。
なのに―
「んっ…」
「…ライル」
頭を触られている感触に意識が浮上し、掛けられた声に一瞬で覚醒する。
「にっ…!」
「おかえり」
視界に収めた兄の姿に竦み上がり、跳び起きて後退った。
足までは動かなくて、座ったままの状態で僅かに距離があるだけの、情けない逃げ様。
「…兄さん」
「……随分、遅い帰宅だな」
「それはっ…!」
アンタが部屋であんなコトをしてたからだろう―!
叫びたかった言葉は声にならず、奥歯を噛み締めた。
「どこにいたんだ」
「…どこだっていいだろ…もう、ガキじゃないんだ」
「良くない、お前がどこに行っていたのか知っておかないと、心配なんだ」
「……何ソレ」
兄の本気で心配する顔に、腹の底から怒りが込み上げてくる。
自分勝手なことをしたのはニールが先だ。
俺は悪くない。
俺は被害者だ。
ライルは吐き捨てるように言った。
「浮気してる奴に心配されたって嬉しかないね」
ニールが、目を細める。
浮気を否定しないことはつまり、肯定したということ。
「…女が良かったなら、余所でヤッてくれりゃいいのに。信じらんねぇ…」
「ライル…」
「俺なんか嫌になったんだろ、我が儘だし出来は悪いし?」
「ちょっと、待て」
「最初からおかしかったんだよ、兄さんはただ家族に飢えてただけだ。俺を愛してたワケじゃない。第一、こんな関係…禁忌だ」
「ライルッ!」
肩を強く掴まれて、咎めるように名を呼ばれた。
ニールはじっとライルの瞳を見詰める。
「…ン、だよっ…!性欲処理できる都合のいい奴は残しておきたいってか?」
「違う」
「女とこれみよがしにヤっといて!俺と別れたいならそう言やいいだろ!」
「違う!ライル、聞けよ」
「嫌だっ!俺は、俺はっ…」
ニールの腕から逃れるために暴れ狂った。
ニールも必死でライルを押さえ付ける。
「こんなにっ…!ニールが好きなのに!!」
「ラッ…」
「無理矢理タガ外させといて!飽きたらポイかよ!!ニールなんかっ…ニールなんかぁ!!」
「ライル…」
涙腺が決壊し、泣き出したライルを優しく見詰めた。
抵抗を止めたその身体をそっと抱きしめる。
「兄さんっ…兄さんのバカぁ…!好き、なのにっ…信じてたのにぃ…兄さんはっ、兄さんは俺なんかっ…」
「違うよライル、俺はライルを愛してる…ライルだけを」
「嘘だっ」
「嘘じゃねぇよ、お前が1番わかってるだろ」
「っ…だって、な、んで…女なんかとっ…」
涙で濡れた瞳を覗き込み、目元を舐め上げた。
「ライルが…俺といるのを無理してるんじゃないかと思って」
「え…?」
悲しげに歪められた顔と、その言葉にライルは瞬く。
意味が理解できない、ニールの心が読めなかった。
「だからな、お前が無理してるなら…俺はお前を手放してやりたい…。でも、俺…それ聞くのが怖くて…俺から手放すなんて、出来なくて。
お前の前で女抱いてみて…お前がそれを見て、なんだ、兄さんも本気じゃなかったんだって、別れたかったんだと言うなら…って」
「な、にそれ…意味わかんねぇっ」
「おお…俺もなんかよくわかんね。卑怯なことしたな、って。
ライル、俺に遠慮して言いたいこと言わないからよ…。でも俺やっぱだめだ…お前のこと、手放したくねぇっ…!」
「…兄さん、バカみて…」
「あぁ、バカだった。バカなことした…でもさ、おかげでライルの本心わかったし」
「…そんなに俺、信用なかった?」
「んー…だって、お前愛してる、の一言も言ってくんないんだぜ?」
「伝わってると思ってたよ」
「お前のことになると、必死になり過ぎてよくわかんなくなっちまうんだよ」
「…そう」
「…ごめんな、ライル」
もう一度強く抱きしめる。ライルの両手も、ニールの背に回った。
心が溶け合うように、ピッタリと身体をくっつける。
「ごめんな、俺が、バカばことしたばっかりにこんなに傷つけて」
「…………あ、の」
「ぅん?」
「………………ごめん、なさい」
「…何?どうしたんだ?」
ニールの服を掴む手が微かに震え出した。
罪悪感と後悔が胸に渦巻いて、折角止まっていた涙がまた溢れ出す。
痛々しく泣き出してしまったライルを、慌てて背中を撫でて宥めた。
ニールは何がなんだかわからなくて、優しく宥め、声を掛けることくらいしか出来ない。
「どうしたんだ?どっか痛いのか?ライル…」
「俺、も、ごめっ…兄さんをっ…」
「ライル?」
「兄さん、裏切っちゃっ…」
「……へ?」
「俺、昨日っ…兄さん以外とっ…!」
素早く意味を理解したニールは、カッと頭に血が上るのを感じた。
ライルをベットに引き倒す。
「んぅっ…!」
「ッ―!!」
肩をベットに押さえ付けて、腹に跨がった。
恐怖に揺れる瞳を見て、チッと舌打ちをする。
「悪ぃっ…」
自分の方が酷いことをしたのに、耐えられなかった。
ライルが自分以外の男の下で喘いでる姿など、想像もしたくない。
ライルもそう思ったのだ。
ライルにそんな行動をさせてしまったのは自分だ。
なにもかも自分が悪い。
理解しているのに、ライルのこととなると周りが見えなくなる。
「…俺が、悪いんだっ…」
「兄さん…」
「わかってるけど…でもっ…」
「……兄さん、いいよ。そのまんま、俺を抱いてくれ」
「ライル…」
「それが、俺の罪滅ぼしだ」
優しく微笑むライルに、ニールは愚かな自分を呪った。
「愛してる…ライル」
「……俺も、愛してる」
噛み付くようなキスをした。
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暗雲漂うニルライ長編もどき!!!第三弾!!
ニルライ和解編でした!!
ニールの思惑、こんなんでどうですか…?^^;
私の中で、ライルに対してニールってすごく卑怯な部分があるんですよ。
押し付けて押し通して、でも拒絶が怖くて会わなかったり。
ライルに任せて決めてもらったりね。
そしてぐるぐるした末の兄さんの脳内はいつだって極論に到達する感じ。
ライルもライルで兄に依存してるから、任せっきりだし。
もどかしい双子なんですよ!!お互いを想い過ぎてお互いが見えない!!っていう!!
さて、次はニルライ仲直りH!!(笑)