拍手お礼SS  ニルライ *伝える*



不意に兄の名前が耳に届き、グラウンドに目をやる。
バットを鋭く振った後カキーンと小気味よい音が聞こえ、ぼんやりと白球を追った。
続いて聞こえてきたのは大きな歓声。

「……ぁ」

腕を空に突き上げてグラウンドを走るのは兄の姿。
その眩しい笑顔をぽやっと見詰めた。

『…やっぱ兄さん、カッコイイ…』

ホームランをかましホームに帰還したニールがチームメイトとハイタッチを交わす。
うっとりとその様子を見守っていると、後ろから肩を突かれた。

「おわ」
「ふふ、ライルったら。先生が見てるわよ」
「やべ…サンキュー、アニュー」

普段、兄に対してツンとした態度をとっているせいか
こういうふとした時に見ることができる兄の勇姿に見とれてしまうのだ。

最後に一度だけ、兄の笑顔を見てから黒板に意識を集中させた。




「ラーイル!!」
「…なに?」

昼休み、約束しなくても教室に迎えに来る兄を一瞥。
兄はニコニコ笑いながら俺の分の弁当を持って腕を引っ張ってきた。

「昼飯行こう。屋上でいいか?」
「…ま、いいけど」

わざとゆっくり立ち上がる俺の背後からクスクスと笑い声が聞こえてくる。

「…ア、アニューっ」
「ふふふ、ごめんね?なんでもないの。行ってらっしゃい」
「っ…うぅ…」
「早く、ライル!」

兄のいない場所では兄に対してデレデレの俺を知っているアニューは、
単純に微笑ましく思っているのだろう。
くすくす笑いをいまだ継続中だ。

恥ずかしいのでさっさと兄の後を追う。








「なぁ、ライル。俺さ、さっき体育だったんだけど」
「へー」

中身の少なくなったいちごミルクを啜り、適当な返事をした。
自慢なんて兄から殆ど聞いたことがないが、ホームランが嬉しかったから
自慢でもするんだろうと思いながら先を促す。

「…あのさ、アレルヤがさ」
「ん?アレルヤ?」
「そう、アイツが、お前が見てるって言うもんだから…兄さんちょっと張り切っちゃったよ」
「………な゛っ?!」

気付かれてた?!
途端に頭に血がのぼる。

「ホームラン打ったんだぜ。見ててくれた?」
「しっ…しら、知らねぇ!」
「えー、俺が見た時にはお前こっち向いてなかったからちぇーって思ったんだけど。
カッコイイとこ見せたかったなぁ」

へらへら笑う兄は、きっとアレルヤから俺がホームランを見ていたことを聞いているだろう。

ちくしょう恥ずかしい

「兄さんっ、デザート!」

話題を変えようと勢いよく手を出してデザートをねだる。
相変わらずへらへら笑う兄が更に頬を緩めて「はいはい」とビニール袋を漁った。

「今日はミルクプリンな」
「ん」
「んで、俺のはみかんゼリー」

簡単に変わる話題。
兄はわかっていて、俺の機嫌を損ねないよう二度と体育の話しには戻らない。

いつも思う。
一言、かっこよかったと言ってやれれば、どれだけ兄が喜ぶだろうか。

「………うまい」
「うん、うまいな!ライル、一口交換こしようぜ?」
「いいけど」

兄のスプーンでみかんゼリーを口に運ばれ、いつもならやめろと言うけど
今回は素直になれない詫びとして文句を言わず口を開けた。
目を見開いて固まった兄。

「…なに」
「い、いやなんでも?!ほれ」
「ん、うまい」
「……あ、あの、ライル」
「ん?」
「俺にも、さ…」
「…はい、口開けろよ」
「!!」

嬉しそうにパカッと開いた口の中にミルクプリンを放り込む。

行動するより言葉にする方が恥ずかしいんだ、俺は。

「んまい!!」
「よかったね」
「えへへ、ラーイル、あーん」
「調子乗ンな」

兄の額をぺちりと一発。
苦笑いの兄はそれでも幸せオーラが身体中から吹き出ていた。










「ホームラン、かっこよかったよ」

鏡に向かって呟く一言。
いつか貴方に届きますように。







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拍手ありがとうございました!


9月のカレンダーの兄さんが震えるほどカッコイイので思いついたネタ^^
どうしてもカッコイイと言えないツンデレライル可愛いです^^
ライルは体が先に動いちゃう子だから、言葉にするのは死ぬほど恥ずかしいってね!



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