拍手お礼SS 刹ライ *昼*
食堂に入り、真っ先に目に入ったのはティエリアの怒りの形相だった。
そして、その前で身を縮こませているのはライル。
二人の間には、食事トレイが鎮座していた。
「……どうした?」
声を掛けると、ガバッと顔を上げたライルの瞳に捉えられる。
確実に助けを求めているであろう、その翡翠の瞳。
「彼に食事を摂ってもらおうとしている」
「無理、こんなに食えねぇ」
「こんなに?どこがこんなになんだ?成人男性が食べる昼食の平均量だ」
「俺は普通より少なめでいいんだって」
ティエリアがバンッと机を叩いた。
ライルが竦み上がる。
「少なめ?少な過ぎだ!きちんと食事を摂れ!」
怒鳴られ顔をしかめるライルを見て、ティエリアの眉間に更に皺が寄った。
ティエリアが口を開くその前に、そっとライルの肩に手を置く。
「わかった。俺がしっかり監督するから、ティエリアはもう行っていい」
「っ…しかし」
「このままでは埒があからない。そうだろう」
「……わかった。ロックオンのことは君に任せる。頼むぞ、刹那」
「あぁ」
ティエリアは不満そうにしながらも食堂を去るった。
その背中を見届けてから、ライルは大袈裟に溜息をつく。
「だはっ……キツかったー…」
トレイをよけて机に突っ伏すのを横目に、自身の食事を取りにいき、ライルの目の前に座った。
「食べよう、ロックオン」
「なんか…長いことこれ見てたら腹一杯に…」
「気のせいだ。食べないとティエリアに言うぞ」
「ひでぇ!なんだよ、アンタ俺を助けてくれたんじゃないのか?!」
「刹那だ」
「はぁっ?」
「アンタではなく、刹那と呼んで欲しい」
「……りょーかいだ。わかったから、なぁ、協力してくれよ刹那ぁ」
甘ったれた声に、思わず破顔しかける。
つい甘やかしたくなるのはこの男の気質によるものだろうか。
きっとニールに限らず、彼を好きになった者達は彼を甘やかしまくっていたのだろう。
「……協力はする。だから食べろ」
「…ほんとか?」
「あぁ、約束する」
「…わかった」
渋々と食事に手をつけたのを見て、口許が綻ぶのを感じた。
そして数十分後、ライルがちらちらと俺を伺い始める。
「…………どうした」
「え、と。ギブ、かなーなんて?」
「…もう少しで終わるじゃないか」
「そのもう少しが入らないんだって」
「もう少し頑張ってみろ」
「意地悪…」
気付いたことは、ライルは頭ごなしに押し付けられるのが嫌いだということ。
やんわりと行動を促せば、ライルは必ず実行する。
「ううう……せつなぁ〜」
残りが苦手な煮物だけになった時、ついにライルはフォークを置いた。
「…わかった、よく頑張ったな」
パッと上げた顔は、嬉しそうで
俺の胸もほわりと暖かくなる。
「っしゃ!ごちそーさま!」
この8つも年上の男は、俺よりも表情は幼く感情表現も豊かだ。
連れて来た頃は捻くれた態度しかとらなかったが、ここ最近は素顔を見せてくれる。
「全くよぉ、ティエリアだってもっと食った方がいいぜ。あの細さ!」
「平均より少し絞った程度だろう」
「そーかねぇ」
「ティエリアは栄養バランスを考えて食事している。問題ない」
「…それは俺が好き嫌いが多いと?」
「違う、単に食べな過ぎだ」
「あそ…」
ライルはぐったりとうなだれた。
「午後は格闘訓練があるな」
「おー、こんなたくさん食っちまったから、床に叩きつけられでもしたら吐いちまう」
「……有り得なくもないな」
「……アレルヤに初めに言っとこ…」
苦しそうに腹を摩るライルを見て、苦笑がもれる。
すぐにジトッと睨まれた。
「なんでもない」
「やわなやつ、とか思っただろ」
「思ってない」
「嘘だな」
「…可愛い奴だと思っただけだ」
「はいはい……てっ、はぁ?!!」
ライルは途端に頬を真っ赤に染める。
「さて、俺は行く」
「ちょ、ちょ待てコラ刹那っ!いくら後輩だからって年上をからかうなっ…」
「からかってない」
「なお悪い!!」
「そうか」
「そうかぁ?!」
ぎゃあぎゃあと喚きながら俺の後をついて来ていたライルの声が、唐突に止んだ。
「…ライル?」
「う、ぇ…気持ち悪ぃ」
「大丈夫か」
「騒ぎ、過ぎた…」
小さな胃は、軽く許容量をオーバーしていたのだろう。
ライルの腕を肩に回し食堂へと引き返した。
「水だ」
「サンキュ…」
「…あぁ、アレルヤか」
『どうしたの?刹那』
「ロックオンが体調を崩した。少し休ませるから、先に訓練をしていてくれ」
『え?大丈夫?わかったけど…無理はしないでって伝えといて』
「あぁ」
会話を聞いていたであろうライルを見遣る。
「だ、そうだ」
「どーも…」
「…すまない」
「ん?なんでアンタが謝るんだ?」
「無理をさせた。強要するべきではなかった」
「…俺が自分で大丈夫だと思って食べたんだ、アンタには関係ねぇよ」
「……そんな悲しいことを言わないでくれ」
「…へっ?」
「お前の力になりたい、お前に頼りにされたい、そう、思っているんだ」
「…刹那…」
「だから、遠慮せずに俺にはなんでも言ってくれ、頼む」
「………ん、あー…そう、だな…」
「…胃薬を持ってくる」
「あ、あぁ、サンキュ」
気まずい雰囲気に耐え切れず、俺はその場を後にした。
必要とされたい。
ライルに俺を見て欲しい。
俺に特別な想いを抱いて欲しい。
ライルの特別になりたいんだ。
「刹那…アンタ一体どういうつもりなんだよ…。俺のこと…あんま惑わさないでくれよ」
ライルが頬を赤くして呟いた言葉は
刹那には届かない。
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一番最初にあるSS朝の続きです!^^
ついにティエリアに怒られるライル。
ティエはマイスター全員の身体データを頭に入れてあります。
戦闘データやシュミレーションデータももちろん入ってます。
満腹でぎゃーすか騒ぐと気分悪くなりますよねっていう^^
そして刹那の言動に対してまんざらでもないらしいライルでしたとさ^^