拍手お礼SS  ニルライ *特権*



「いっ、て」

シャワーが滲みる。
痛んだ場所に指先を這わすと、思わず笑みが零れた。





「ライルー」
「わっ、なんだよ兄さん」

背後から忍び寄り、愛しい弟を抱きしめる。
嫌がる態度を見せていても、本気じゃないのがその甘い声でバレバレだ。

「もう部屋、戻るんだろ?」
「あぁ、今日のスケジュールは終わり。シャワーも浴びたから後は寝るだけだよ」
「俺もなんだ」
「あっそ」
「つれないなぁ〜らいるぅ〜」
「だああ、頭を擦りつけんなぁぁ」
「お前の部屋行ってもいいだろ?」

言葉に詰まったライルは、深いため息をついた。
耳を僅かに赤くして呟く。

「今日は…なんもすんなよ」
「えっ?フり?!」
「フってねーよ!!」

大人しく腕の中に収まっていたライルの渾身の頭突きにぐうの音も出なかった。










「ほれ、お手」
「あ゛ぁ?」

冗談のつもりの一言に、ライルが低く唸る。
お兄ちゃんはそんな怖い顔も大好きさ!

「じゃ、なくて…そろそろ爪、気になるんじゃないか?」
「爪?え、あ、あぁ、そういえば…」

手袋を外した自分の真っ白な掌を見詰めた。
その手を奪って、指先にキスをする。

「なっ、なに!」
「お兄ちゃんが手入れしてやるからさ、大人しくしてなさい」
「…いいよ、自分でできるから」
「まぁそう言いなさんな」

ライルはたいした抵抗もなく、口を尖らせているだけ。
つまり、お許しが出たということだ。

嬉々としてポケットからやすりを取り出す。
ソレを見てライルがきょとんとした。

「なに?」
「なにって、やすり」
「いやそりゃわかるが…なんで?爪切りあるよ?」
「爪は切ると痛むんだよ。こうやって、優しく丁寧にやすりで削った方がいいんだ」
「へぇ」
「スナイパーの指先は…ピッチャーの指先と同じくらい繊細だからな。大事にしねーと」
「……そっか」

綺麗な曲線を描いていく爪と、真っ白で細い指。
すごく、神聖なもののように見えた。

「ライルの指は…綺麗だなぁ」
「兄さんの方がいい」

間髪入れずにライルが言う。
思わず面食らってしまった。

「なんで?俺のがゴツイし、分厚いだろ?俺の手は綺麗じゃないよ」



年季が違う。
この手に人殺しの道具を握っていた時間が。




言葉にせずに含んだ気持ちを、ライルは敏感に悟ってしまう。



「俺もすぐ同じような手になる。兄さんは、綺麗だ」



苦笑するしかなかった。

優しい優しいライル。



「ライルは、このまんまがいいんだけどなぁ」
「バカ。俺達双子なんだから、お揃いでいいだろ?」
「……そ、か。そうだな、お前とお揃いがいい」
「ん、オーライ兄さん」




ズクリと痛む傷も、沈んだ気持ちも
ライルが直ぐさま癒して持ち上げてくれる。

お前がいるから、俺は存在していられるんだ。








「よし、綺麗綺麗!」
「甘皮まで取られるとは思わなかった…」
「徹底的にやらせてもらう!なーんてな」
「ブッ!なんそれ教官殿のマネ?!似てねー!」
「そう言うわりにはすぐわかったじゃねーか!」
「だってたまに言うもんソレ」

ライルが屈託なく笑ってくれる。
それが嬉しくて嬉しくて、涙まで出ちまいそうなんだ。

やにわに立ち上がり、ベットに座るライルを押し倒す。
当然抗議の声が上がるが無視して抱きしめた。

「にーさん!苦しい!」
「ライルー、いい匂いー」
「…たくっ、もう寝ようぜ?」
「ん、このまま寝る」
「毛布をかぶれ」
「くっついてりゃ寒くねーよ?俺がお前の毛布になってやるからさ」
「いらないから、つか重苦しくて寝れるか!離れろよー」
「やだね」

観念したのか、ライルは大人しくなり俺の背中に腕を回す。

「……なぁ兄さん?」
「ん?」
「なんで俺の爪伸びてるってわかったんだ?手袋してるし、わかんないだろ」
「……そりゃあ、俺だけの特権、ってやつかね」
「はぁ?何それ…」
「シャワーが滲みたんだよ」
「シャワー?」
「鈍いなぁ、お前さん。だから、昨夜お前につけられた肩の引っ掻き傷に滲みたわけ」
「さ…か、っ、ひ……っ」

みるみるうちに真っ赤に染まっていく頬と、見開かれていく綺麗な瞳。

なんて可愛いんだ俺の弟!



「普段はたいした傷にならないんだけどな?今回はバッチリ傷残ってたから、伸びてんだろうなぁって」
「〜〜〜〜〜っ!」

顔を隠すものが見当たらず、ライルは俺の肩に顔を埋めた。
体温が高い、抱きしめてくる力も一層強くなって、なんて可愛い。

「…な?俺だけが気付くんだ」
「……………ん」
「ライルの爪、これからは毎回俺が手入れしてやるよ」






ライルは小さく、うん、と呟いた。






肩の傷が、じんわりと熱を持つ。



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拍手ありがとうございました!

背中の傷は男の勲章ってなああああ!!!

兄さんはライルのことを心から天使だとか妖精だとかだと思ってればいいよ。
可愛くて可愛くてしかたないんだよ。

引っ掻き傷ってしみるよね…痛い痛い。

ライルの手は、まだニールほど筋肉がついてなくて
ニールは銃を長年扱ってきたくらいの手になってるわけですよ。

二人とも指が細くて長くて綺麗だと思うけどね!!

お互いに一番キレイだと思ってればいいんだこの双子は!
はたからみればとんでもないナルシスト(笑)



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