拍手お礼SS ニルライ *バイトタイム*
高校に進学しても、相変わらず兄とは疎遠なままだった。
というか、俺が積極的に動かなかっただけなのだが。
「なぁお前バイトとかしてねぇよな?」
突然友人から出たバイトの話題。
「してないけど」
「俺さー喫茶店のバイトしてんじゃん?そんで…人手不足ーとかでさ?お前興味ないかなぁって!」
「……バイト、ねぇ…」
興味は、ある。
国から貰う保険金では学校に通うのが精一杯で、遊び金なんてなかったわけだし。
でも成績が落ちたら奨学生として認められない。
「うーん…」
「なあ!短時間でも短期でもいいんだ!どうかな?!」
「……週2とかでも?」
「いい、いい!ぶっちゃけお前の顔が欲しいのよ!」
友人の発言に思わず呆然としたが、なんだかんだで俺はバイトを始めることになった。
バイトは意外と楽しく、勉強との両立も出来ている。
新しい刺激のおかげか充実した毎日を送っていると、兄からメールが届いた。
定期的に俺の近況を問うだけの事務的なメールだ。
今まで俺はこのメールに対し、二行以上の返信をしたことがなかった。
『普通。怪我も病気もしてない。………バイト、始めた。』
最近気分がいい。
少しくらい、会話をしてもいいかな、なんて。
予想外の返信に喜んだらしい兄からすぐ返信がきて、あれこれ聞かれて初めて三通以上のやりとりをしていた。
少し、嬉しく思った。
「いらっしゃいませー!」
「ライル、2番テーブル頼む」
「あいよ」
学校帰り、4時過ぎの喫茶店は客数が少ない。
忙しくないから楽だし、綺麗なお姉さん達はみんな俺にちやほやしてくれる。
いつも通りの、勤務時間。
それが唐突に壊れたのは出勤してから一時間が経った頃だった。
「いらっしゃいませぇ……?」
入ってきた男は、帽子を深く被りふちの太い眼鏡をしていた。
角の席に座りメニューから目を離したのを見て、嫌な予感に気が進まないが注文を取りに行く。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「コーヒー、と、お前のおすすめケーキで。あ、あんま甘くないのな」
嫌な予感ほど、当たるものだ。
にっこり笑った男を見下ろし、深く溜息をつく。
「…目立たないようにしてきたのは褒めてやる…」
「へへ、久しぶりー」
ニコニコ笑う不審者は、俺と同じ顔をしていた。
「…なんでわかったの…」
「ん、最近お前の学校付近の喫茶店巡り回って。やっと当たり」
「…なんでそんなことしてんだよ」
「聞いてもさ、教えてくれなかったし。どうしても働いてるライルの姿見たくて」
「………さいあく」
「…ごめん…」
恥ずかしいけど、嬉しいのに。
なんでこうも兄相手には反発してしまうのか。
もはやクセとしか言いようがない。
「………ご注文は以上でよろしいですか?」
「あ、あぁ」
「少々お待ち下さいませ」
気まずい空気から逃げるように、俺はカウンターへ戻った。
厨房の友人に注文を告げ、気持ちの整理をつけるためトイレに逃げ込む。
「………はぁ、なんでだよ…」
鏡に映る自分に兄を重ね睨みつけては自己嫌悪に陥った。
なんでこんなにあの人が苦手なんだ。
話ができたらできたで嬉しいのに、兄からの介入はもの凄くカンに障る。
久しぶりに会ったというのに…
こんなんじゃダメだろう、いくつだと思ってんだ。
気持ちを切り替えトイレを出た。
「お、これ6番テーブルなー」
「あいよー」
コーヒーはすでに出されていたらしく、俺のおすすめケーキがカウンターに出されていた。
甘い甘い、チョコレートケーキ。
照れ隠しだと気付いてくれるだろうか。
「お待たせしました」
「お………て、またあっまそうな…」
「俺のオススメだ」
「……そっか」
置かれたケーキを見詰めた兄は、ふわりと、日だまりのような笑顔を浮かべた。
ああ、気付いちまったか。
恥ずかしさに顔を背けながら、ポツリと告げる。
「……たまになら、来てもいいけど」
「え?」
「…近くはないんだから、無駄金使うなよ」
「………へへ。ライルに会うためなら無駄なんかじゃねぇよ?」
ニールの笑顔。
俺はこの笑顔が大好きで、大嫌いだった。
「…ごゆっくり」
「えへへ、サンキュー」
カウンターに戻った俺に、友人がきょとんとしながら声を掛ける。
「ライルー、耳真っ赤」
「っ、うっせバカ!」
「ええええ?!」
これからのバイトは、少し楽しみで、少し憂鬱になるんだろうな、と。
チョコレートケーキを頬張る兄を眺めてそう思った。
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拍手ありがとうございました!
甘酸っぱいニルライも可愛いです!^^
幼い二人のなんともいえない恋模様が可愛いと思う!
ライルはツンデレで素直になれないし
ニールはグイグイ行くけどいざって時に踏み込めない
ライルのバイト先でお茶したです…
ライルの会社でお茶汲みしたいです…
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