拍手お礼SS  刹ライ+ニル *ずっと先も*



「刹那ぁ」

後ろから掛けられた声に振り向けば、へらりと笑う教師がいた。
いや、教師ではなく知り合いか。

「……なんだ」
「宿題、まだ提出されてないぞ」
「…提出しろと言ったのはアンタじゃなくライルだ。俺はライルに見てもらいたい」
「ほほぉ、だから堂々とサボりに行こうとしてたわけか」

今は始業ベルが鳴った後だ。
朝一で英語科教室に提出しなければいけない宿題を提出しなかったのも、
英語の授業が始まろうとしていても教室を出たのは、彼が彼ではなかったから。

たまに彼らはこういう悪戯をする。

「いい歳して、どうかと思うが」
「確証は?」
「なに?」
「俺がライルじゃないという確証」
「……俺が間違えるはずがない」
「ふーん。よく見ろよ?」

一気に距離を縮め近付けられた顔。
眼鏡越しの碧の瞳も、ふわりと香る煙草の匂いも彼と寸分変わらない。

だが、違う。

「俺が愛してるのはお前じゃない」
「………妬けるねぇ」
「…授業、始まっているぞ、ニール」
「お前さんくらいだ、俺達を見分けるのは」
「恋人を見間違うわけがない」
「……ほんと、妬ける。ライルは俺だけのもんだったのになぁ。あーあ」

剣呑に細められていた瞳は、瞬時にふにゃりと柔らかくなる。
大きな手の平が頭に乗り、掻き回された。

「っ、やめろっ」
「ほら行くぞ。お前さんが授業出ないとライルが悲しむだろー」
「む…」



彼は、ニール。
この学校の英語教師、ライルの双子の兄だ。
彼らは異常なまでに仲が良く、二人暮らしをしていて、たまにこうして入れ代わるという悪戯までする。

入れ代わりは、俺がライルの恋人になっても止むことはなかった。







「…怒ってらっしゃる?」
「当たり前だ」
「…昨日は調子悪かったんだよ…」

朝一に学校へ行き、英語科の教室にいたライルを無言で見下ろす。
視線をさ迷わせる姿は罪悪感を感じている証拠だろう。

「ならメールをくれても良かったんじゃないか?」
「いやあの…頭痛が酷くて、メールする気力も……ごめん」
「今回は理由があったが、前回はただの悪戯だった。お前達いい加減にしろ」
「う……」

ライルはそろり、と俺を見上げ猫撫で声を出した。

「刹那ぁ」
「いい加減にやめろ」
「…刹那ぁ、あのな、だってな」
「だってじゃない」

ライルは負けじと俺を下から見詰め、しっかりと手を握ってくる。

「…ライフルに触るの、大好きなんだよ」
「…………」

兄ニールの職業は、競技用ライフルの整備士であった。
そしてライルは銃マニア。

「……せーつな?」
「俺より好きなのか」
「え」
「…俺より、も…」

悔しくなって俯いた。
握られた手を解き、潰す勢いで握り返す。
痛みからかライルは小さく呻いた。

「…刹那、悪かった」
「…学校、で…会う時間は、お前にとっては大切じゃ、ない…のか」
「違う。大切だよ」
「じゃあなんで、」
「刹那」

イスから立ち上がったライルが、そっと身を寄せる。
両腕は俺に捕われているから使えず、頭にほお擦りをしてきた。

「刹那、刹那、聞いてくれ」
「なんだ…」
「…お前は若いから、いつか捨てられちまうかもって、俺は怖い」
「そんなことは有り得ない」
「わからないさ。未来のことなんて…。刹那は来年卒業だろ?
大学には俺はいない。そんでもっとたくさんの出会いがある」
「…ライル」
「毎日顔合わせてると不安が募っちまうんだよ。毎日会えなくなった時が怖い」
「…俺と離れてしまうことが、ライルを不安にさせているのか?」
「…それも、あるけど」
「だったら」

握り締めた両手を眼前まで持ち上げ、薬指にキスをする。
ライルの碧の瞳が大きく見開かれた。

「卒業したら、一緒に暮らそう」


この言葉を聞いた時のライルの顔は、一生忘れられないだろう。







少ない荷物が詰まったダンボールを抱え、今更だがうなだれる。
こうなることは予測できていたはずだ。

「いやぁ、部屋余ってて良かったな!」

快活に笑うのはニール。
その隣でふにゃふにゃと嬉しそうに微笑むのはライル。

「刹那、今日からよろしくな!」
「兄さんの料理はあんまし美味くないけど、我慢してやってくれよ」
「…………あぁ」

今日から俺はライルと同居するわけだが

金のない俺が部屋を借りられるはずもなく、ライルの自宅に居候することになった。
もちろんそこにはニールもいて、恋人と二人きりの生活、なんてものは夢のまた夢だ。



「ライル…」
「ん?」
「……結婚しよう…」
「あはは!就職できたらな!」
「アンタには言ってない」
「無職の男に可愛い弟をやれるかっての」
「く…」
「はは。ま、兄さんの言う通り、生活が落ち着いたら考えような、刹那」
「しかし、俺は今すぐにでも」
「時間はたっぷりあるだろう?だって、ずっと一緒にいてくれるって、刹那が言ったんだからな」

そう言って幸せそうに微笑むライルの顔も、俺は忘れられないだろう。

ライルと共に過ごし、ライルの全てを見続け、
全てを記憶に刻み付けるのだろうと、俺は思った。









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拍手ありがとうございました!

刹ライに介入する兄さんが大好きです^^

教師が入れ替わっちゃアカンやろと思いつつもまあいいか!^^
ニールも教師並みにできます。ライルもニール並みに銃弄れます。そんな設定!
ライフルの整備士がいるかわからないので捏造です。

ライルをニールから引き離すには結婚してマイホームを持つしかないでしょうね。
でもきっと隣とかに越してくる兄さん^^




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