拍手お礼SS  ニルライ *スイートスイート*



街を歩けば甘い香りが漂ってきそうな程、世間はバレンタイムードだった。
多くの店が客を獲得しようと様々な新作チョコレートスイーツを売り出している。

パティシェもショコラティエも大忙しだ。






「今日も帰って来ないのか…」

メールに目を通し呟く。
テーブルに額をつけて思いきり溜息を吐いた。

「絶賛売り出し中のショコラティエ様は、弟なんか眼中にありませんか」

顔の横にある雑誌を横目で見遣り、紙面で照れ臭そうに笑う片割れに舌を出す。

ニールは若いながらもいくつもの賞を取った、今話題のショコラティエだ。
彼は今、彼の師匠が経営している小さな店で働いている。

掻き入れ時である今はほとんど店で寝泊まりしせっせとチョコを作っていた。

「…バカニール、チョコなんか嫌いだ」

兄を奪ったチョコが嫌い。
ライルは悔しげに呟くが、ニールがショコラティエになったキッカケは自分にあった。









そしてバレンタイン当日。
会社の休み時間に喫煙所でぼんやりと煙草をふかしていると、女性社員達がきゃあきゃあと騒ぎながら側まで駆けてきた。

「ディランディさん!」
「ん?どした?」
「テレビテレビ!」
「は?」

興奮した様子でライルの腕を掴み喫煙所から引っ張り出す。
慌てて煙草を消して彼女達についていくと、休憩室の大型テレビに自分と同じ顔が映っていた。

「げ」
「生放送なんですって!」
「お兄さんですよね?」
「私もあそこのチョコ買いましたよ!」
「あはは…そりゃどうも…」

休憩室内の社員達の視線が突き刺さり辛い。
そんな自分とは反対に、画面の中の兄は照れ臭そうながらも自信たっぷりにインタビューに答えていた。

『ショコラティエを目指したキッカケなどはありますか?』
『キッカケ…小さい頃、俺の大好きな子がチョコ大好きだったんですよ。
俺の作ったチョコも喜んで食べてくれて』
『それがキッカケなんですね。やだぁロマンチック!』
『あはは、いやそんな』

兄の発言に思わず眉間に皺が寄る。
キラキラと輝く視線を向けてきた彼女達が今は悪魔にしか見えなかった。

「お兄さんの初恋の人ですか?!」
「その人とはどうなったんですか?!」
「どんな人でした?!」
「あ〜〜…いや、悪いけど…俺もよく知らない、し…」
「「えーーーっ!!!」」
「ガキの頃は俺、離れて暮らしてたからさ」
「そうなんですかー…」
「残念…」
「そんなわけで、俺もう一服したいんだけど、戻っていいかい?」
「あ、はい、すみません私達思わず…」
「いやいや、仕事中の兄を見ることなんてないから新鮮だったよ。ありがとな」

軽く手を振り背を向ける。

平常心を保とうと肺に吸い込んだ煙りに噎せて、なんとも情けない気持ちになった。











「お帰り!ライル!」

玄関を開けた途端に鼻孔を襲う甘い香。
そして嬉々と弾んだ声に迎え入れられた。

「…兄さん、もう帰ってたのか」
「おう!急いで帰ってきたよ!だって今日はバレンタインだもんな!」
「…うざいくらいテンション高ぇ…」
「ごめんなー、暫く一人ぼっちにしちまって…。
でも今日早く上がるためだったんだぜ!」
「わかったわかった。そこどけよな」
「らーいるー♪ぷりーずはぐー♪」
「はいはい…」

広げられた両腕におとなしく収まってやる。
兄からはむせ返るようなチョコの香がした。

「さ、お姫様。こちらへどうぞ」
「なっ……んだそりゃ…きしょい」
「いいからさ、ほら、俺からの愛を受け取ってくれよ」

手を引かれ導かれたのはリビング。
テーブルの真ん中にはハートの形をしたチョコレートが置かれていた。
ピンクにホワイト、赤やキャラメル色、様々な色のハート型チョコが綺麗に大きなハートマークを作っている。
他にも驚く程繊細な細工をされたチョコが飾ってある。

テーブル丸ごと芸術作品のようなそれに言葉を失った。

「……す、げぇ…」
「ライルのために作ったんだ。貰ってくれるか?」
「…あ、あんた、仕事は?」
「ん?仕事終わった後にコツコツ作ってたんだよ。
でもそのせいで帰れなくて寂しい思いさせちまって…ごめんな」
「………ほんと、バカだなぁ」
「え?!酷いぞライッ−」

ひょいと口に運んだチョコレート。
甘い味が広がると同時に兄の唇を塞ぐ。

「んっ……ライ、ル…」
「…美味しい。ありがと、兄さん」
「へへ、やっぱお前に喜んでもらえるのが1番嬉しいよ!」
「当たり前だろ?兄さんは、俺のためにショコラティエになったんだもんな」
「その通り、俺の最愛の人」



小さい頃に兄が作ってくれたチョコレート。
驚く程美味しかったチョコレート。

兄の言うチョコが好きな兄の大好きな子はライルだ。

「やっぱ兄さんのチョコ、すげぇ美味い」
「だろ?お前のことだけを考えて作ったチョコだからな」
「…大好きだよ、兄さん」
「俺も愛してるよ、ライル」



甘い甘いチョコレートと

甘い甘いキス








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拍手ありがとうございました!

甘いもの大好きなライルとか可愛いなって。
ショコラティエな兄さんカッコイイなって。

ラブラブ甘々なニルライはもう可愛くて可愛くて!
むしろ兄さんはライルをチョココーティングしちゃいたい気分です。
いつかやろうと思ってるといい^^





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