拍手お礼SS 刹ライ *朝*
ここ最近、朝食の時間にあいつを見掛けなくなった。
「あ、おはよう刹那」
「おはよう」
戦況が切迫していないため、食堂にはトレミークルーのほとんどがいる。
広くはない室内をぐるりと見回し、食事の乗ったトレイを持ってアレルヤの隣に座った。
「…あいつはもう、来たか?」
「え?あいつ?」
「彼ならまだ来ていない」
アレルヤの正面でコーヒーを飲んでいたティエリアが答えた。
「…またか」
「ブリーフィングまでは個人の時間、だが…怠慢だな」
「え、と?彼ってロックオンのこと?」
「あぁ、少し前までは一緒に朝食をとっていた」
「ダラダラと食べていたがな」
ティエリアは余程気に入らないのか、眉間に皺を寄せ刺のある言葉を零す。
俺は朝食が終わってからも、ブリーフィングの時間になるまで食堂に残ることにした。
タイムリミット10分前、誰もいなくなった食堂のドアが開く。
端末から目線を上げると、予想通り緑の制服の彼が立っていた。
「……おはよう、ロックオン」
ふらふらと歩くそいつに俺が声を掛けると、緩慢にこちらを見遣る。
そこで初めて俺に気付いたようだ。
「……あ、刹那。はよ、なんで?」
「お前を待っていた」
「…はぁ、なんで…?」
「待っていたかったからだ」
「……はぁ」
身のない返事をしながら、食事トレイを横切り冷蔵庫を開ける。
そこからゼリー状の携帯食料を取り出しまたふらふらと俺の斜め前に座った。
「……食事は」
聞くと、ソレを怠そうに吸いながら「ん」と答える。
「ソレか」
「……ん、だってちゃんと朝から必要なエネルギーとか、計算されて一個になってんだぜ?いいじゃんコレで」
「…悪くは、ないが…」
ココにはそんなもの一つを食事にしようとする人はいなかったから、少し驚いた。
ライルはけだるそうに、前髪を掻き上げる。
「あ〜〜…俺さ、低血圧なんだわ…」
「てい、けつあつ?」
「朝弱いの。起きて暫くは動けねーし…食事も、ほんとは摂りたくない」
「それはダメだ」
「わかってんよ…だからこうして食ってんだろ」
「飲んでいるの間違いだ。脳はものを噛むことで活性化すると聞いている」
「……無理、食ったら気持ち悪くなる」
「最初は食べていた」
「割と緊張しててね、アンタらと同じようにしなきゃって思ってたから」
飲み終わったソレをごみ箱に向かい放り投げた。
見事に中に吸い込まれる。
「でも最近は無理、ココに慣れてきたのかね?朝キッツくて…」
「慣れ…」
「ほら、アンタも遅刻すんぞ」
立ち上がり出て行こうとするライルの腕を捕まえた。
「な、んだよ」
「お前がココに慣れてきたというなら、嬉しい」
「ッ…」
「だがもう少し、固形物も摂取した方がいい。それに対しても、少しずつ慣れて行けばいい」
「あ、あぁ…」
―――慣れてきた、というライルの言葉が嬉しかった。
いつもどこか諦めたような、悔しそうな顔をしていた彼が、少しでも安心出来る場所になってきたなら…
「…行くか」
「っ、あ、アンタ」
「なんだ」
「笑ったの初めて見た、ビビったー」
「…嬉しいことがあれば誰でも笑う」
「…はぁ、そうか。そうだなぁ」
まだ怠いのだろうか、俺に腕を引かれても文句を言わずついて来る。
むしろ微重力の廊下をレバーを掴まずに、ふわふわと漂えるのが気持ちいいのか満足そうにしていた。
このままトレミー内を二週でもすれば寝てしまいそうな表情だ。
胸が暖くなる。
ホットミルクを飲んだ時のような感覚。
溶けて、甘く暖かな感覚が全身に広がった。
1番暖かいのは、ライルを掴んだ掌。
「…着いたぞ」
「ん、ぁ?あー…サンキュ…」
本当は手を離したくなかった。
離せば、この暖かい感覚は消えて行くだろうと直感したから。
案の定、ブリーフィング中は暖かくも寒くもない、いつもの感覚だった。
翌日もまた、俺は食堂に残りライルを待った。
昨日より僅かに早い時間にライルは姿を現し、俺を見付けると困ったように微笑む。
「はよ」
「おはよう」
昨日と同じものを取り出した。
ただ、その手にはもう一つ。
「…固形だろ?ソーセージ」
俺の目の前に座ったライルはそう言いながらソーセージを剥いて口に入れた。
「あぁ、栄養価も高い。良い判断だ」
「そら、どーも」
面倒くさそうに咀嚼する。
昨日の会話をちゃんと覚えていて、実行してくれているライルに身体が暖かくなった。
また、ブリーフィングルームまで引っ張ろう。
今度は手を繋いでも許してくれるだろうか
「ん…」
「なんだ?」
半分の長さになったソーセージを目の前に突き出された。
「…やっぱ、無理。食べね?」
眉間に皺を寄せ苦しそうな顔を見て、思わず苦笑する。
「あー、また笑ったな。しかも今度は嬉しいの笑い方じゃねーし」
「少しずつ慣れて行けばいいんだ。最初は半分か…」
ソーセージを受け取り、残りをすぐに平らげた。
見ただけで気分が悪くなったらしく、少し顔を青ざめさせて目を逸らす。
ゼリーを飲み終わったライルは投げる気力すら失ったのか、ヨロヨロと立ち上がりごみ箱に捨てた。
「行くかぁ」
「あぁ」
フラフラするライルの手を取り、握る。
少し驚いたようだが、特に文句も抵抗もせずまた廊下を進む。
少しずつ、少しずつ慣れて行けばいいんだ。
お前が安心出来る場所になるように
お前が朝食をちゃんと摂れるように
手を繋いで、ブリーフィングルームに向かうことが
日常になるように
そうなればイイと、俺は今日も一人、お前を待つ。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
拍手ありがとうございました!
やっとこさ拍手にお礼置けた〜^^;(安心)
これは多分、続き物にしたいな(笑)
低血圧なライル、可愛くないスか?(笑)
食も細いと可愛い。もっとちゃんと食べなさい!って言ってやりたくなるくらい
きっとティエあたりにしっかり食べろ!って怒られるんだよ^^
刹那とライルが自然に一緒にいられるような関係になればイイなぁ…
ほら、やっぱダブルオーとケルディムってコンビ多いじゃない?
近接戦闘型と後方支援型なワケで。
そのマイスター同士が、自然に寄り添えるようになるって、すごくイイ!!
まぁ、単純にイチャコラしてる刹ライが見たいだけですけどね!!!(万死)