*Think*



楠月様に捧げます

*二期後設定
*刹那とライルが悶々してます

許せる方のみど〜ぞ





彼の支えになりたいと、そう想うことは……




「愛している」

愛しているから、彼の支えになりたい、と。
告白を受けたライルは表情を変えず、ただ小さく溜息を吐いた。

「……無理だ、刹那」














アロウズが崩壊し、世界は一時的ではあるが平和を取り戻した。

世間から姿を消したCBは、秘密裏に活動を続けている。
主に地上での小さな紛争に対し、それが大きくなる前に介入し潰している。

介入行動の殆どは生身だ。





「こんなもん、か…。サポートは刹那に任せる。あんま前には出るなよ」
「了解した」

エージェントが用意したマンションの一室。
刹那とライルはスメラギの指示を再確認していた。

「…ま、よろしく頼むよ」
「あぁ」
「じゃあ俺、先シャワー浴びてくるわ」

リビングを出て行くライルの姿を見送り、刹那は知らず入っていた身体の力を抜いた。

(……二人きり、だ…)

周りに誰一人と知り合いのいない場所で二人きりになったのはこれで二回目。
しかも一つ屋根の下で数日を共にする。

(…正直、困る)


あの告白以来、二人はそういう関係を持った。
刹那が押し切ったカタチではあったが、ライルは受け入れたのだ。

でもそれは、ただ“受け入れた”だけ。

刹那はゆっくりと瞳を閉じた。
頭にぼんやりと声が響いてくる。
無意識に耳を澄まし、神経を集中させた。

(――で、あそこは右……―せつな――……後から…――)

刹那はハッと目を見開いた。

「駄目だ」

勢い良く立ち上がり、ベランダへ出る。
下の行き交う人々に意識を向けた。

(…聞いては、駄目だ。ライルの声は聞きたくないんだ…)

頭ではそう思っても、心がライルの声を欲している。
洪水のように押し寄せる大勢の声の中から自然とライルの声を探してしまう。

(――アニュー…)

今度こそ刹那は頭を抱えた。



「お前を……支えたい…」

その声が、涙に濡れた声じゃなくなるように―。















「なぁ、その能力ってさ、どんくらい聞こえるんだ?」

朝食を摂っていた時に不意に問われ、刹那はギクリと固まる。

「どれ位…とは…」
「だから……距離とか、音量とか、かな」
「…距離は…宇宙であればそれなりに広範囲で、ここではあまり遠いと聞こえにくい、な」
(じゃあ、俺のは丸聞こえか)

突如頭に響いた声に顔をしかめる。

「…ライル…」
「それ訂正しろ。俺はロックオン・ストラトスだ」
「……すまない」
「…とにかくさ、それ、有効に使えよ」
「有効に?」

ライルはニヒルに笑み、ブラックコーヒーを口に運んだ。

「手に入っちまった能力だ、コントロールして有効に使うんだよ。それはかなり便利なもんだぜ」
「…了解した」

ライルは、恐ろしく前向きな時がある。
それは少し切なくなるような、切り捨てたかのような前向きさなのだが。

その切り捨てた中に、ライル自身もいるような気がして――


「ラ……ロックオン、俺はお前を支える…」
「あぁ、今回はアンタのサポートが…」
「そうじゃない」
「…なんだよ」
「……ずっと、俺はお前の傍に」

言いかけた時、ライルがマグを机に叩き付けるように置いた。

「無理だと、俺は前にもそう言ったはずだ。それ以上言うな」
「……でも、」
「下見に行ってくる」

朝食は少し残っていたが、ライルは逃げるように部屋を出て行ってしまった。

「…俺は、お前から家族も、ニールも、アニューも奪った。……でも、だからこそ…」

お前の傍で、お前を守りたいんだ。
開いてしまった穴を俺が埋めたい。

「…そう想うことが、お前を苦しめているのか………」














下見と称して逃げ出したものの、あまりポイント近くをうろつくわけにも行かず喫茶店に入る。
刹那の言葉が頭から離れない。

「チッ…」

刹那―自分から奪った男。
そして与えようとしてくれる人。

与えられるモノに対して臆病になってしまい、差し出された手を掴めずにいるのだ。

「…どうせ置いていかれる」

もう失うことは辛いから
最初から、何も持っていたくない。

ライルは本日二杯目となるブラックコーヒーを飲み干した。















「こちらロックオン、ポイントを確認した」

今回のミッションは過激派である残党カタロンの抑圧だった。
元の仲間達に銃を向けることは辛いが、相手は交渉にライルを指名してきたため仕方ない。

カタロンの目的は、CBを抱き込むことだろう。

『相手は?』
「まだ来てないみたいだな。あ、そうだ刹那、集中しろ」
『なん……』
(聞こえるか?)
『……あぁ』
(無線より楽だし早い。聞こえるようにしとけよ)
『…努力はする』

直接頭に響く声に頷く。
まだ力をコントロール出来ていないから自信はなかった。

宇宙でGN粒子を撒き散らした状態であれば、意識せずとも聞こえるのだが。

それに地上では無数の声が頭に流れ込んでくる。
強い想いであればある程その声は大きく聞こえた。

(…ライルの声だけを探すんだ)

それならば得意だろう。
刹那は自身に言い聞かせ、無数の声の中からライルを探し続けた。





(きた)
『!』
「こちらロックオン、ターゲットと合流する」

ライルはその場にいるエージェント達に声を掛ける。
相手からは“ライル一人で来い”とのことだったが、そんな要求飲んでいないことなどわかっているだろう。

「…よう」
「ジーンワン、だな?」
「一度会ったことあるよな?確か中東の…」
「あぁ、覚えていてくれたなんて光栄だよ」
「顔を覚えるのは得意なんだ。さて、本題に移ろうか?」

ライルが一歩足を踏み出した瞬間、ターゲットの男がライルに突進した。
ライルは舌打ちを一つ零し、身を翻す。

「いきなりだなぁおいッ!」
「悪いが人質になってもらうぞ!」
「そうは行くかっ、よっ!!」

監視のエージェントから各エージェントに連絡が回っただろう。
相手は今のところ一人。
近接戦闘な上に肉弾戦であり、ライルの動きは極端に鈍るが躱すことならば出来る。

ライルの反射神経はズバ抜けていた。

「っらぁ!」
「チッ!」

無理に距離は詰めない。
射程内に入った瞬間に引き金を引く。
相手も動きを予想し巧みに躱していた。

(
―遅い…トラブルか?)

エージェントが助けに入らないことを不信に思い周囲に視線を巡らせた時、頭上で発砲音が響いた。

「!」
「約束が違うなぁ、ジーンワン!」
「…チッ」

男は笑い、ライルへと距離を詰める。
両脇の建物から次々に発砲音が響く中、インカムにエージェント達の声が届いた。

『こちらT!奇襲を受けた!』
『ポイント089まで後退を!』
「了解!…意外と頭脳派じゃねぇの!」
「お褒めにあずかり光栄だ!」

相手はエージェントが隠れている場所を予測し、ライルと接触している間に場所を突き止め奇襲を仕掛けたらしい。
過激派にしては統率のとれたプレーだ。

よほどCBを抱き込みたいとみえる。

(
俺らは武力介入はするが、むやみやたらと武力を行使しちゃいねぇ。てめぇらとは違うんだよ…)

相手の隙をつきライルは全力で駆け出した。

(
…刹那、おい刹那、刹那!!)
「なんだよっ、応答しろ!刹那!」

思わず声を張り上げるも、刹那からの返答は、ない。





「くっ…!」

突然の相手の一撃をなんとか躱すが、無線が犠牲になってしまった。
即座に意識を集中させ声を探すが、ココにはあまりに多くの声が溢れ返っている。

「わからないっ…!」

ライルの声、奇襲を受ける前にそればかりを気にしていたのが裏目に出た。
もっと周りにも意識を向けていれば、奇襲が起こることを予測できたのに。




「…はぁっ…ライルッ」

五人もの敵をなんとか倒し、息を整える間もなく刹那は外へ駆け出した。

「刹那!」
「っ…!ラ、ロックオンは?!」
「ポイント089に向かっている!」
「了解した!」
「道を開きます!」

合流したエージェント達とポイントへ向かう。

(―ヤベっ…)
「?!」
(誘導されたっ…クソッたれが)
(ライル!どこだ!どこにいる?!)

やっと拾えたライルの声に意識を集中させれば、ライルを追っているものの声も響いてきた。

(もういい。足くらいなくなってもいいんじゃないか?)
「!ふざけるなっ…!」
「刹那、ロックオンがポイントをズレて052の方へ!」
「了解」

刹那は酷い頭痛を感じながらもひたすら声を追った。





「はっ、は、はあ、ち、くしょ…」

埃っぽい廃ビルの中。
ライルは壊れた無線を投げ捨てた。

「刹那…無事、だよな…?」

不安が押し寄せてくる。
刹那に限ってやられることはないと思うが、保障などどこにもない。

(……俺はただの人間だ。イノベイターになりたいとも思わない。思わねぇが…)

彼と、同じものになれたなら。
ライルはゆっくり深呼吸を繰り返し瞼を閉じる。

(
…素直に、お前の手を掴むことが出来るかもな…)

彼は新人類であり、人類を導く存在。
彼と意識を共有できない自分はただのヒトだ。

それでも、ただのヒトである自分はわかりあうことが出来る。

(
だから、俺はヒトでいい。…兄さん、アニュー…それで、いいよな?)

グ、と拳銃を握り締めた瞬間、靴音が耳に届いた。

(
…まだ死ねるか。俺はまだ何もしていない。俺は、まだ)

刹那に何も伝えていない。

ライルは拳銃を構えた。

「!な、」

姿を現した男に標準を定めた時、足元に筒状のモノが転がる。

「終わりだ、ジーンワン!」
(―爆弾ッ…!)

推測するに殺傷能力は高くないだろうが、確実に足をやられる。

(ッ、刹那!!)
「ライル!!!」
「ッ?!」

身体に衝撃が走り、視界が反転する。
爆発音が響き次いで発砲音が鳴り響いた。

刹那の腕の中、ライルは顔をしかめる。

「っ、て、」
「無事か?!」
「…あ、いっ、つ」
「ッ…け、怪我を…」
(…なんて顔すんだよ…たく…)
「ラ、ライル…」
「サンキュー、助かった。左肩がちっと痛いだけだ。生きてるし、走れるぜ」

ライルはすかさず立ち上がり出口へ駆け出した。
刹那もその後を追う。

「大通りに出ればエージェントが車を!」
「オーライ!」



エージェント達に守られながら大通りを目指し、車に乗り込んだ。
怒涛のように過ぎた時間を頭の中で整理しつつ、ライルはやっと身体の力を抜く。

「…は、はあ〜〜〜〜〜あ、やっちまった…」
「…ミッション失敗、か」
「アイツらの背後には頭の切れる奴がいる。恐らく現職政治家だろうな」
「スメラギに報告しよう」
「俺は疲れた…。しといてくれ」
「了解」

夕闇の中、刹那達は何回か車を変え遠回りをしつつマンションへ戻った。















「今日は、すまなかった」

帰り着いてから一度も口を開かなかった刹那が、ライルの部屋にやって来て唐突にポツリと言った。

「…なんの話?」
「……俺がもっとうまく力を使えれば、奇襲は予測できた」
「ああ、それね…。でもなぁ刹那、普通は予測できないもんだぜ?」
「…普通じゃ、ないんだ、俺は」
「その通り」

ライルはベッドから離れ、ドアの前に突っ立っている刹那の額に人差し指を突き付ける。

「お前は皆とは違う。……違うからこそ出来ることがあるんだ。今は辛いかもしれねぇが…」
「…ライ、ル?」

刹那の瞳が虹色に光り出した。
ライルの声が、鮮明に頭の中に響いてくる。

(ごめんな、わかってやれない。お前の辛さを共有してやれない)

(俺は…ヒトだから。お前の傍にはずっといられないよ)

(でも、それでも、お前が傍にいると言ったくれた時、本当に嬉しかった)

(助けに来てくれてありがとな)

(傍にいたい)

(愛して欲しい)

(俺も、お前が―)

「ライルッ!」
「っ、」

刹那はライルの身体を抱きしめていた。
その時ライルは思考を読まれたことに気付き、慌てて身を離そうともがく。

「は、はなしっ」
「好きだ」
「なっ…」
「好きだ、愛している。独りにしたくない。傍にいたい。傍に、いたいんだ…」
「…せつな」
「いさせてくれ、頼む。お前の支えになりたいんだ」
「…人の話、聞かねーし、おまえ」
(ちくしょ、俺の気持ち聞こえてんならわかれよっ…)
「わかっている。だが、どうしても」
(…バカで、強引で、ガキのくせに…俺は、俺は…)

ライルは恐る恐る刹那の背中に腕を回した。
諦めたように大きく溜息を零す。

「…支えてみろ、俺は重てぇぞ」
「…任せろ」
(あーあーあー、バカは俺だ)
「…ありがとう、ライル…」
(…兄さん、アニュー…)
「彼らの分まで、俺はお前を支えたい。愛したい」
(綺麗事言いやがって)
「わかっている…でも、本心だ」

刹那は身体を離し、ライルの碧の瞳を覗き込んだ。
刹那の瞳も赤茶色に戻っている。

お互いの瞳にお互いが映ったのを見て、刹那はふわりと微笑んだ。

「愛している、ライル」
「……そのうち、ね」
(
まだ、認めらんねーよ)
「俺はお前を愛し続ける。それだけでいい」

想うことが辛いなら、俺がただひたすらにお前を想う。
それでお前が苦しまないなら、見返りなどなくて構わない。

「…愛している…」

刹那のキスを受け入れ、ライルは瞳を閉じた。




(
………俺も……愛して、る…)













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楠月様に捧げます!!!

本人様に限りお持ち帰り自由です。

テーマは“空白の二年間で、大切な人を作らないと決めたライルとそんなライルの支えになりたい刹那”でした!

刹ライ設定でしたのでとりあえず身体の関係からスタートしてみました…(苦笑)

刹ライは、お互い悶々考えなければすんなりくっ付くと思うんですよねー。
なのにお互い大切なモノに対して臆病だから遠回りし過ぎちゃうって感じです。


もっと素直になれよおおっていう結論^^

思わず戦闘シーン的な描写をしましたが難しかったです!!!
でも難しい分すっごく楽しかったです(笑)
ライルと刹那をどこまで追い詰めてやろうか、とか(外道)


ちなみに灰色になってるトコは刹那に聞こえていない声です^^

リクエストありがとうございました!
悶々刹ライ楽しかったです^^




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