*雨降って*




*パラレル設定


許せる方のみど〜ぞ



朝起きると、隣にあった温もりがなかった。

どんよりした気持ちでパンをかじる。
目の前には、走り書きのめちゃくちゃなメモ。
ソレを睨みつけながらパンを飲み込んだ。

今日で5日。
兄さんとまともな会話を交わしていない。



「兄さんのバカ…」














「お帰り兄さん!」
「ん〜、ただいま〜」


あれから更に一週間、仕事で家に帰ってこなかった兄がやっと帰宅した。
玄関で荷物を受け取る。

「疲れてるなぁ」
「あぁ、やっと寝れる…」
「寝れるって…晩ご飯は?今日な、」
「悪い、飯はいらないや、寝かせてくれ」

リビングを通り過ぎると同時に、俺の手から荷物を奪った。
俺に見向きもせずに寝室に消えていく。

「……今日、料理頑張ったんだけど…」

一人残された俺は、ポツリと呟いた。


並べた料理を見て、イライラが沸点に達する。
掻き込むように自分の分を食べ終え、兄のために用意した料理をゴミ箱にぶち込んだ。

荒々しく寝室のドアを開けると、二人のベッドに大の字で寝転がる兄の姿。

「……っ、俺の寝る場所ねぇしっ…!」

兄さんは凄く疲れてんだ。
わかってる。
でも、二週間近くほったらかしで…これはなくねぇか?

俺は上着を取り、家を出た。










朝までパブで呑んで昼近くに帰宅したが、兄さんはまだベッドで寝こけていて、 一度も起き出した気配はない。

「…あぁもう、なんだこれ、どーしよう俺…」

治まらないイライラのせいで、力一杯頭を掻きむしった。





「お、おはよ、ライル」
「……おそようございます」
「あはは…だな、うん」

夕方頃、やっと起き出してきた兄は、バツが悪そうにしながら俺の隣に座る。

「えーと、飯、とか…」
「レトルトでも食べれば?冷凍庫にピラフがあるよ」
「あ、そうか、ん、サンキュ」

兄はそそくさとキッチンに逃げた。
惰眠を貪った後は、空腹を満たすってか… 俺とのスキンシップは二の次か!!

イライラに任せて怒鳴り散らしそうになり、慌てて外に逃げる。
背後から慌てた兄さんの声。
聞こえないフリをして玄関を閉めた。

わかってる、わかってんだよ。
兄さんは仕事で忙しい、疲れてる。
だから怒りたくない、ガキみたいなことしたくない。

でも やっぱり、辛いんだ。










「お帰りライル、どこ行ってたんだ?」
「……カフェ」
「そうか」

公園で頭を冷やして帰宅すると、兄は笑顔で出迎えてくれた。
優しく抱きしめられる。

「いきなり出て行っちまうから、心配したんだぞ」
「…あぁ、ごめん」
「腹減ってるか?晩飯にしよう?」
「…ん」

久しぶりに感じた兄のぬくもりに、涙が出そうだった。









「兄さん、起きてる?」
「………ん〜…」
「にーさん」

先にベッドに入っていた兄に擦り寄る。
さっきまでずっと甘やかしてくれて、俺はすっかりご機嫌になっていた。

ぼんやり目を開ける兄さんの頬や額にキスをする。

「なぁ、兄さん…」

唇に触れようとした時、くるりと寝返りをうたれて未遂に終わった。

「え、ちょ、にい」
「悪ぃ…すげー眠ぃんだわ…」
「へ…?」

そう呟くと、すぐに寝息を立て始める。
とても一緒に寝る気分になれなくて、毛布と枕を抱えてリビングに行った。










『悪い、急に仕事が入った。今日は帰れないかもしれないから先に寝ててくれ』

テーブルに置かれたメモを見て、怒りを通り越して涙が溢れる。

「に、いさん…バ、バカ、くそ…っ」

涙が止まらない。

どうしようどうしようどうしよう。


兄さんはそれから二日、帰ってこなかった。














ソファで眠るライルを見て、罪悪感で一杯になる。
眉間に寄るシワを伸ばすように指先で撫でて、キスをした。

「ごめんな、ライル」










完全に疲れがとれていないまま、また徹夜仕事をこなし、朦朧とする頭で自宅に帰る。
先程ライルに『帰る』とメールをしたが、返信はない。

怒ってるだろうなぁ、と思った。
いや、それ以上に悲しんでいる。
アイツは甘えたで寂しがり屋だから。

「…しっかりしねぇとなぁ」

玄関の前で平手を一発。
気合いを入れて、ドアのぶを回した。

「ただいま!ライル!」

元気に出した声が、シンとした室内に響く。
直感的に、これはヤバイ、と感じた。

「ラ、ライル〜?」
「お帰り兄さん」
「おっ、おう、ただいま!」

静かに現れたライルは、無表情のまま俺の荷物を取り、口を開く。

「飯も出来てる、風呂も沸いてる」
「え?あ、サンキュ!飯にしようかな」
「あぁ」

確かに、リビングのテーブルには綺麗に料理が並んでいた。
でも、気になることが一つ。

「……えーと、ライル、のは?」

そう、俺の分しか用意されていないのだ。
恐る恐る尋ねると、簡潔に一言もらう。

「俺もう食べたから」
「そ、うか…」
「じゃあ、先に寝る。おやすみ」
「え?え、ちょ、ライル、ちょっと待てよ」

目の前でドアを閉められた。
しかもやんわりと。

「ら…ライル…」

このドア一枚が、もの凄く硬い鉄の壁のように感じる。
いつものように怒鳴って泣き喚いてくれた方が断然いい!

「ライル、あの…」

そっと中を伺うと、既にライルは頭まですっぽりと布団をかぶっていた。

「……ちょっと、さ…話せない…?」

返事がない。

ライルは完全に殻に閉じこもっていた。









料理は美味しい。
いつも通りのライルの美味しい手料理だ。

一人で食べる飯を寂しいと感じたのは久々だった。
最近はただ仕事のために食事を摂っていたから、美味しいとかまずいとか感じなかったし。

ライルは、自分で作った料理を一人で食べてたのか…
俺の我が儘で、ライルには会社も辞めさせて一人ぼっちでこの家にいた。
そんなライルを俺は何日もほったらかしで。

「…最低だな、俺」

美味しいスープが、味を失くした。














「ライル、ごめん」

布団の中で丸まるライルをそっと抱きしめる。

つむじにキスをして背中を撫でると、ライルが身じろいだ。

「少し、話したいんだ。頼むよ、ライル」
「………や」
「…ライル」
「やめろよ、離せ」

ライルは腕を突っぱねて俺から距離を取る。
だけど許さず、無理矢理力ずくでその身体を抑え込んだ。

「ッ、兄さんっ!」
「やっぱり泣いてた」
「!」
「……ごめんな、ライル」

無数に残る涙の跡に舌を這わせる。

「俺が全面的に何もかも悪い。ごめん、寂しい思いさせて、本当に悪かった」
「……仕事、だろ、悪く、ないじゃん…」
「お前を泣かせちまったんだ、悪くないわけあるかよ」

ライルの指先がそっと俺の目元に触れた。

「…クマ、酷い」
「ん?あぁ…寝てないし、な」
「俺、怒りたくなかったんだ…。兄さんに、迷惑かけたくなかった。だから、だからなるべく関わらないようにしたのにっ…!なんで、バカぁ…」
「…ごめんな」
「寂しいだろ、何日も!も、やだ、怒鳴りたくない。怒りたくない。離せよっ」
「うん、うん、ごめんライル。怒鳴ってくれよ、怒っていいから」
「やだやだっ!」

涙を散らして頭を振る。
ライルは俺から離れようと必死で腕を突っぱねた。
怒りたくない、なんて。
なんでこんなにライルは優しいんだろう。

愛おしさが募り、その分傷付けてしまったことに対し罪悪感が膨らむ。

「ごめんな…許してくれ、ライル…」
「うっ、ふっ…うぅーっ」
「ライル」

抵抗を止め、縋り付くように身体を預けたライルが声を殺して泣いた。
その姿に胸が締め付けられる。

「ライルッ…」
「ば、かっ…にいさん、の、ばかっ、ふ、うぇ、ひっ、っく…」
「ごめん、ごめんな、っ…ちくしょう、謝ることしかできねぇとかっ…!」

自分が情けなくて、ライルを強く抱きしめる。
ライルは遂に声を出して泣きはじめた。










暫くして泣き声は小さくなり、鼻を啜る音に変わっていく。

「……ライル?」
「…う、ごめ、おれっ…」
「なんで謝るんだよ。悪いのは俺だろ?」
「だっ、ら…怒りたくなかった…」
「怒っていいんだって」
「…ふ、う…じゃあ…我が儘、言う」
「なんでも言ってくれ」

ライルがそろり、と顔を上げる。
赤くなった目と頬と鼻先が可哀相で思わず口付けた。

「…にいさん…」
「ん?」
「…もう、あんま長いこと独りぼっちにしないでくれ…」
「あぁ、もちろんだ」
「仕事が忙しくなったら、仕方ないけど、でも…一日一回はちゃんと会話して、 それで…」
「それで?」

ライルがそっと顔を近寄せ唇に触れるだけのキスをする。
触れ合った唇は熱くて、離れていくのが惜しくなって思わず後を追ってしまう。

「ん、は…キス、しろよ」
「ん?もっとか?お安いごょ」

唇を寄せた途端にライルの手の平が壁になって未遂に終わった。
人差し指を立て、かさついた俺の唇を押さえる。

「……一日一回は、キスしろよ」
「ッッ…!」
「返事は?」
「もっ、もちろんだ!!てゆか、何回でもする!」
「わっこら!今はいいっ」

愛が溢れてたまらなくなって、ライルをベッドに押し倒し喚く唇を塞いだ。
何度も何度も角度を変えて貪り、ライルが弱々しく胸を叩いてきたところで漸く唇を解放してやる。

「はっ、はっ、はぁ、あ…はっ…バ、カ…」
「へへ、ライル…愛してる」
「…俺もだよ、バカ」
「……ごめんなぁ…ほんと…だめ、な…やつで…」
「え?兄さん?ちょ」

気持ちはまだまだライルを愛したいのだが、身体がついていかない。
許してもらえたことで緊張の糸が切れた。
身体から力が抜け、思考回路に靄がかかる。

ライルの声を心地良く聞きながら夢の世界に旅立った。














「おはよ、にーいさんっ!!」
「ぐえっっ!!!」

腹部に重たい衝撃を受ける。
無理矢理夢の世界から引き上げられた俺は、霞む視界にライルの姿を捉えた。

「ら、かはっ…らいる?」
「よくも放置してくれたな」
「な、なにが…ちょ、重っ、ぐええ」

俺の腹にライルが跨がるなんて、眺めは最高なのだが、いかんせん胃をもの凄い勢いで圧迫してくる。
なにかでそう。

「らい、るっ、ごめ、あやまる、あやまるからっ」
「いい雰囲気で寝るなんて、甲斐性なしにも程があんぜ、兄さん」
「う、ぷ…すみません…かんべ、ん」
「はぁ…」

ライルがやっとどいてくれ、飛び起きて競り上がってきたものをなんとか胃に落とす。

「うええ…死ぬかと…」
「にーさん、朝飯」
「え?あ、あぁ、作ってくれたのか?」
「作って」
「え?」
「だから、兄さんが作って」

ムッとした顔がすげぇ可愛い。
やっぱり感情を抑えているライルより、こうやって痛いことでも我が儘でもなんでもしてくるライルが愛しい。

何をされたって、俺はライルを愛してる。
むしろもっと我が儘言って困らせて欲しいくらいだ。

「愛してるよ、ライル」
「…俺も」
「なぁ、俺からもお願いしていいか?」
「なんだよ?」

ライルにそっとキスをして、頬を人差し指で撫でる。

「今度俺がなんかしちまったら、ちゃんと怒ってくれよな。殴ってくれたっていい」
「…マゾ?」
「かもな」

俺が苦笑すれば、ライルも困ったように笑った。















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デレライルが可愛いです!!!
そして兄さんはマゾでもありサドでもあります(爆)

ライルに虐められたりするのは大好きな兄さん。
てゆうかライルにならなにされてもいい兄さん。

ライルは普段はサドっぽくて、ベッドの中だとマゾだと可愛い!(万死)




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