*Happiness*



*二期後、本編設定

許せる方のみど〜ぞ




「すげぇ、綺麗だ」

ライルの呟きを聞いて、やっと肩の力が抜けた気がした。









トレミーは今、CB所有の無人島に来ている。
過去に何度も訪れた島。

待機中にみんなで食事を作ったり、髪を切ってもらったり、今思うと楽しかった思い出も多い。

そしてロックオンに…ニールに叱られ、諭され、銃を向けられ、許された場所。

「じゃあマイスターはゆっくり寛いでいてちょうだい。イアン、頼むわね」
「了解だ、お前さんもゆっくりしてていいぞ?」
「やだ、私はいいのよ。疲れてないもの、手伝うわ」

トレミーのメンテナンスに立ち寄ったこの島には、一日だけ滞在することになった。
メンテナンスが終わればすぐにでも出発するが、とりあえず、24時間という猶予を得る。

「イアン、俺もなにか手伝おう」
「バカ言え刹那、お前さん達に1番休んで欲しいんじゃ」
「でもよぉ、休めって言われても…」
「…そうだ、ねぇ刹那。ロックオンはこの島初めてだし、案内してあげたら?」
「それがいいですぅ!お二人でブラブラするですよ!」

フェルトの提案にお互いの顔を見遣った。
ライルは肩を竦め、お前に任せたと目で訴えてくる。
俺も深く息を吐き、頷いた。

「わかった、暫く二人で散歩でもしよう」
「オーライ」
「気をつけてね」

ライルを連れて、島の裏側に向かうため足を踏み出す。

「ジャングルだ、すげー」
「随分森が成長した。前はこんなに視界が悪くなかったんだが…」
「そりゃ、木なんてのは一年ですげー伸びるもんだぜ?なぁ、ココでは皆何をし てたんだ?」
「…そうだな、主に任務の待機場所だったが…、アレルヤとティエリアがカレー を作ったり、砂浜で肉弾戦の訓練をしたりしていた」
「ちょ、あの二人がカレー?」
「あぁ、アレルヤは料理が上手い。しかしティエリアに目茶苦茶にされていたな …」
「…なんか、ティエリアの方は想像通りだな…。刹那と…兄さんは?」

そう聞いたライルの瞳を見れば、穏やかな感情が伝わってくる。
俺も目を細め、この島での出来事を思い返した。

「俺は料理には参加しなかった。というより…あの頃の俺はほとんど一人でいた 。ニールは料理に参加したがアレルヤに追い出されたな」
「ブッ、なんだそれ!兄さん料理下手くそだったのかぁ?」
「あぁ、下手だったらしい」
「ハハ、兄さんの弱点みっけ」
「ふ…」

穏やかに笑うライルにツられ、俺も笑みを零す。
あの頃の俺は、人と関わるのを嫌い、エクシアの中に閉じこもっていた。
今ではそれがとてつもなく勿体ないことに感じる。

ニールに、人の暖かさを教えてもらった。
ニールに、人の尊さを教えてもらった。

俺は彼のために、今何ができるだろう。

「海だ」

ライルの呟きに、俯いていた顔を上げる。
眼前に広がるのは青い海。
太陽の光を受けて宝石のように煌めき、寄せては返す白い波が美しさに拍車をか けていた。

「すげぇ、綺麗だ」

ライルを見上げると、海の色と同じ瞳が、海と同じように光を受け煌めき、穏やかな波のような感情を湛えている。

「……あぁ、綺麗だ」

その時初めて、俺は心から穏やかになれていた。



「なぁ、入ろうぜ!」
「は?」
「海!せっかく海が目の前にあんのに、入らなきゃ損だ!」

ライルはそそくさとブーツを脱ぎ、ズボンを捲り上げて砂浜へと走り出す。
途中で振り向いたライルが大きく手を振った。

「来いよ、刹那!」

楽しそうに海に足を浸すライルの元へ俺も同じように走り出す。

「何年ぶりかな、海。やっぱ気持ちいい」
「俺は、初めて入った」
「……はぁ?!」
「この島にはよく滞在したが、海に入ったことはない。ニールは…アレルヤを引っ張って、お前と同じように足だけ浸して遊んでいた」
「…そっか、勿体ないなぁ」
「…!」
「そこに海があったら入るもんだぜ?刹那」

ライルの笑顔と、記憶の彼方にあるニールの笑顔が重なる。
俺は今、彼のためにできることがわかったような気がした。

「そう、だな。遊び方を教えてくれ」
「ハハハッ!なんだそれ、遊び方なんか、千差万別、たくさんあるさ。まぁとり あえず…」

にやりと笑ったライルが途端に背を向け走り出す。

「追いかけっこだ!捕まえてみやがれ!」
「ライル?!」

足元だけとは言え、水の中を走るのは中々難しい。
なのにライルは身軽にひょいひょいと逃げて行ってしまう。
追いかけども縮まらない距離。
ライルは笑うが、俺はとても笑える気分じゃなかった。

いなくならないで欲しい。
傍にいてくれ。
逃げないでくれ。

「ライル!!」
「おっ…わぁ?!」

必死で伸ばした腕がライルを捕まえる。
後先考えずにひっ掴んだものだから、二人してバランスを崩し倒れた。
派手な音を立てて海水に浸かる。

「…………ぶっっ」
「…す、すまない…」

全身びしょ濡れになってしまったお互いを呆然と見詰め
ライルは噴き出し
俺は謝罪を口にした。

「あっははははは!そうそうこれだ!この展開だよ!」
「な…どういう意味だ?」
「こういう展開が、1番楽しいんだ。それっ」
「っ!ライル!」

ライルに水をかけられ、とうとう始まったのは水遊び。
年甲斐もなく二人で水をかけあい、じゃれて、走って、転んで、海を堪能した。

遊び疲れて、浜辺に座り込みゆったりと海を眺める。

「ぶはぁっ…はぁ〜〜…なんかスッキリしたなぁ」
「…ライル」
「んん?」
「……ありがとう」
「うん、こちらこそ」

俺もライルも、お互いを見ることなく ただ穏やかに海を眺めたまま言葉を交わす。
ライルが不意に身を寄せて、頬にキスをしてきた。

「ラ、イル…」
「こんな綺麗な風景を、世界中の人が平等に見れる世の中にしような」
「…あぁ」
「…ん、さってと!カレー、作るか!」

立ち上がったライルが両腕を空高く伸ばし、朗らかに笑った。
そんな彼に自分も唇を寄せれば、苦笑したまま受け入れてくれる。

「カレー作り、今回は俺も参加しよう」
「当たり前だっつの。材料あるかねー」
「確かルーは非常食用箱に入っていた」
「お、なら後はジャガイモさえありゃいいな!」
「……いや、よくないと思うが」
「ジャガイモ〜ジャガイモ〜…っと、先に服着替えなきゃな」

砂だらけになった足をブーツに突っ込み、俺達は来た道を戻った。











「あらあらあら〜、随分男前度が上がったこと!」
「お二人とも髪の毛がぺたんってなってますぅ!」
「おいおい、どうしようもないな」

口々に感想を述べられ、俺達は身を縮こませてトレミーへ入る。
シャワーを浴びて、制服を洗濯に出して、トレミーに備え付けてあるTシャツと ズボンを身につけキッチン脇にある食料保管庫を漁った。

「あったあった」
『ロックオン、カレー?カレー?』
「そうだよハロ、ハロも手伝うか?」
『ハロ、テツダウ、テツダウ!』
「よーし。生野菜はないからなぁ…具なしカレー…」
「仕方ないな。また次は材料を揃えよう」
「だな!」

島の格納庫の中に、いつかカレーを作った時のテーブルや鍋が保管してある。
トレミーメンテナンスをしている皆の傍らで、いそいそと浜辺にそれらを設置した。

「刹那、ロックオン。何するの?」
「カレーを作るんだ」
「カレー…」
「フェルトはカレー、知らないのか?」
「うん」
「よーし、じゃあとびっきり旨いの作ってやるぜ」
「食べ物…なの?」

フェルトは気になって仕方ないようだが、渋々メンテナンスへと戻る。

ライルは、料理が得意らしい。

「一人暮らし歴が長いもんでな。俺は割と自炊してた方」
「そうなのか…、だがカレーではわからないな」
「おっ、言うねぇ」
「今度何か作って欲しい」
「…愛妻弁当とか?」
「作ってくれるのか?」
「……おねだりの仕方による」

背伸びをして、ルーを真剣に掻き回すライルの耳元に言葉を吹き込んだ。

「頼む、俺のために作ってくれ」
「ッ…!ばっか!近ぇよ!」

離れようとする頭を掴んで引き寄せ、赤くなった耳たぶを食む。
ライルは奇妙な悲鳴を上げておたまを落とした。

「ばかやろう!!」
「作ってくれるか?」
「〜〜ッッ!わぁったよ、機会があったらな!」
「嬉しい」

カレーの中に取っ手まで浸かってしまったおたまを救出し、ライルは赤い顔をそのままにカレーを黙々と掻き回していた。





「あらぁ!美味しいじゃない!」
「…美味しい」
「とっても美味しいですぅ!」
「ふふ、カレーなんて久しぶりに食べたわ」

女性陣からの称賛に、二人してこそばゆい気持ちになって微笑む。
ラッセとイアンも旨い旨いと言いながら食べてくれた。

「次はちゃんと具も入ってるやつ作るよ」
「楽しみだわ、よろしくね二人とも♪」
「はい!ミレイナもお料理してみたいです!」
「よしよし、じゃあ次はミレイナも手伝ってくれな」
「私も…」

控えめに手を挙げたフェルトに、ライルは破顔した。

「頼むぜフェルト」
「っ…うん!」

穏やかな笑い声が砂浜に響く。
波の音と、みんなの笑い声。
俺はそれらの音に耳を傾けていた。

幸せだ。
たとえ一時の平穏でも構わない。
俺達は、世界に喧嘩を売ったテロリスト集団CB。
立ち止まる場所などない。
ただ、少しだけ、こうして穏やかに過ごせたらそれでいい。

仲間がいて

そして隣には

「…ん?どうした、刹那」
「……いや、なんでもない」

ライルがいる。




ニール…俺はライルに幸福と平穏を教わった。

俺は今お前のために、全力で生きようと思う。




仲間と

愛しい人とともに










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CBのみんなには幸せになって欲しいですね…!

三十路とは思えない無邪気なライルをたまには(笑)
ロックオンとして生きることを決めたライルは強いと思います。

やっぱりオトナですから
刹那を暖かく包み込んでくれる優しさと全てを許す強さを持ってるはずだ!!!


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