*祈りの代償*



*パラレル設定
*ニルライ幼少時代
*ニールが病んでます

許せる方のみど〜ぞ




俺は知っていた。
ライルを、俺だけのものにする方法を。

ガキの俺は、それが正しいと思い込んでいたんだ。




「ニールじゃないとできないもん!」

ライルと揉める女子達を見てほくそ笑む。
その言葉を待っていたんだ。

俺がなんでもライルより出来れば、みんな俺を頼ってくる。
ライルのことは、みんな忘れてくれる。

ライルを必要とするのは俺だけになる。

そうすればライルは俺だけのものだ。

思惑通り、ライルの周りには僅かな友達しかいなくなった。
まぁ、許容範囲だ。
ゆっくり時間をかけてライルを独りにすればいい。

ライルも、俺だけを見るしかなくなる。
だってそうだろう?
お前を必要としてるのは俺だけなんだから!

間違っていたと気付いたのは、ライルが転校すると言い出した時だ。

「なんで!どうしてだよライル!!」
「もううんざりなんだ!俺はアンタのおまけじゃない!!」
「なに言ってるんだ?!おまけなわけないだろう!お前は、俺の全てでっ…」
「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!」

ライルは、俺の前から消えてしまった。

悲しくて悲しくて何日も泣いた。
俺は間違っていたんだ。

気付いてからは毎日、早朝のミサで祈った。

他にはなにもいらない。
だからお願い、ライルを返して。

ライルを、俺に返して!





「…兄さん」
「………ライル?」

あの忌まわしいテロの後、叔母さんの家で呆然としていた俺の前に、ライルが現 れた。
俺の真っ黒な世界に、眩しいくらいの輝きを放つライルが立っている。

「兄さん、あの…」
「ライル、ライル」
「…あぁ、ただ、いま…」

爆発に巻き込まれた身体は、まだ軋んで痛むけど
ライルの身体をしっかりと抱きしめた。

あれだけ泣いたのに、俺の瞳からはまた涙が溢れ出る。
ライルは優しく俺の背中を撫でてくれた。

「兄さん、ごめんな。すぐに来れなくて…。ごめんな」
「うぁ、あ、ああぁあ…ラッ、いるぅっ!」
「あぁ、いるよ、ここにいるよ」
「あぁあ!うっ、かはっ、あああああああああ!」
「兄さんっ…!」

泣きわめく俺を、ライルはずっと抱きしめていてくれた。




空っぽの棺が、黒い土の中に埋まっていく。
俺の手を握ったライルは、静かに涙を流していた。

強く握られる掌を見て
俺はまた気付いたんだ。



神様は、俺から父さんと母さんとエイミーを取り上げ ライルを…返してくれた、と。
ライルを手に入れるには、同じくらい大切なものを差し出さないとダメだったんだ。

ライルは帰ってきた。

学校を卒業して、ハイスクールは俺と同じところを選んでくれた。
俺達は、叔母さんの申し出を断り二人で生家に住んでいる。

「兄さん、俺今日は遅くなるかも」
「なんで?」
「宿題を友達とやるんだ」
「…俺もいちゃダメか?」

幼かったあの頃の過ちは繰り返さない。
常にライルより一歩下がって、それでも、ライルの隣は譲らないように。

ライルは変わった。
俺がテロで情緒不安定になっていると医者に告げられたライルは、俺を大事にし てくれた。

「いいよ、兄さんも一緒にしよう。いつもの面子だから、気まずくはないだろ? 」
「ライルがいればなんだっていいさ。俺はライルがいれば、それでいい」
「また、そういうこと言う。兄さんは立派な人なんだ、もっと自信を持ってよ」
「なんの自信だよ?」
「その気になれば、俺なんかよりずっとモテるってこと」
「ライル以外いらない」

そう言って抱きしめれば、戸惑いながらも背中に回るライルの腕。
心地良い、ライルの身体に安心した。




時が経つにつれ、俺の感情にも変化が訪れる。

キッカケは、ライルに彼女が出来たことだった。
自分でもおかしいと思うのに自制が効かず 泣いて、喚いて、その女を殴ろうとしていた。

「ライルは俺のだ!ライルは、ライルは俺のなのに!!」

振り下ろした腕を止めたのは、ライル。

「兄さん!!!」
「っ…あ、あ、だっ…て、だって、らいる…」
「…兄さん、いい加減にしろよ。俺はアンタの所有物じゃねーんだぞ」

昔のように、ライルが消えてしまう前に見せた表情で 女の肩を抱き家を出ていく。

扉が閉まってから、俺は悲鳴を上げた。

なにかがこわれるおとをきいたんだ。



目を冷ましたのは、白い天井がある部屋だった。
ここは嫌いだ、怖い。
あの忌まわしい日を思い出す。

「…にい、さん?」
「………らいる…」
「…あ、よ、か…にい、さ…いきて…」

ライルの手が震えながら俺の手を握った。
持ち上げられた俺の手首は、包帯に包まれている。

「なんでっ…なんで、こんなバカな、ことっ…」
「…らいる…」
「兄さんっ…やめてくれよ…頼むから…頼む、から、俺を独りにしないで…」

笑ってしまった。
だって、おかしいことこの上ないだろう?

「なにを言ってるんだ?先に俺を独りにしたのは、お前だろう?」












「兄さん、今日は何時に帰ってくる?」

朝ご飯を食べながら、小首を傾げ可愛らしく聞いてきたライルに微笑む。

「早く帰るよ」
「そうしてくれると助かる。だって、ヒマなんだ」
「なにか欲しいものはあるか?本、買ってこようか」
「ほんと?じゃあね…」

食事中だというのにライルは席を立ち、ジャラジャラと音を立てながら自室に消えて行った。
暫くして戻り、差し出されたのは一冊の本。

「この作者の本、買ってきて。なんでもいいよ」
「オーケイ。なるべく分厚いのな」
「ん」

本を受け取り、作者の名前と出版社のメモをとる。

ニコニコ笑うライルの頭を撫でてやった。


「でもやっぱ、早く帰ってこいよな?寂しいから」
「わかってるよ。ごめんな、独りにして」
「………いいよ、兄さんがいるから」

ジャラリと、音が鳴る。
ライルは廊下の途中で立ち止まり、俺にキスをした。

「行ってらっしゃい、兄さん」
「行ってきます、ライル」

ライルは玄関まで出てこれない。
足首に繋がる鎖の長さが足りないからだ。


自分の命を捨てようとした俺に 神様はご褒美をくれた。

ライルの全て、というご褒美だ。
家族と、俺の覚悟を代償に 神様がライルをくれた。








父さん、母さん、エイミー ごめんなさい。 俺は今、とても幸せです。












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がゅん漫画から思いついたネタです。
こうやって徐々に兄さんがライルを自分のモノにしようとしてたらイイなぁと^^

しかしうちの兄さんは歪んでるなぁ^^;


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