*独占*
*一期〜二期開始直後、ニール生存
*イカれた病みニールと、可哀相なライルと、刹那
*ニールがライルに対して酷いことします
許せる方のみど〜ぞ
独り占めしたかった。
だってアイツは、俺の世界の半分だから。
その気持ちを、俺はいつの間にか刹那に語りかけていた。
「なぁ、刹那。俺さぁ、すげー壊しちまいたい奴がいるんだ」
彼は言っていた。
子守唄のように朗らかに。
俺は何も言わなかった。
「両手を縛って、両足をもいで、目を塞いで、ベッドに括り付けておきたい」
「……俺は寝る」
「寝てていぜ、俺は喋ってるからよ」
いつも優しく頼れる存在から、そんな狂気じみた言葉を正直聞きたくなかっただけかもしれない。
布団に包まり、耳を塞いだ。
「アイツの世界を、俺で満たすんだ…。きっと最高の気分になる。アイツは…俺だけのモノなんだ」
強く目をつむり、心臓の音に耳を傾ける。
だが、聞こえてしまった。
聞いてしまった。
「……ライル、俺の、愛しい弟」
「アンタか?俺を呼び出したのは」
「……お前は、逃げろ」
彼と瓜二つの顔が呆然とした。
すぐに訝しげに顔を歪め、軽く首を傾げる。
「どういう…ことだ。アンタ、一体何者なんだ」
「俺は刹那・F・セイエイ。CBのガンダムマイスターだ」
「なっ…」
「お前の住む場所は用意した。早くここから逃げるんだ」
「ちょ、ちょっと待てよ!なんだよ一体!意味わかんねー」
「お前にはっ…お前だけの未来を、自由を掴む権利がある」
彼に足早に近付くが、彼もじりじりと後退った。
纏わり付くような湿気に吐き気がする。
「ライル、お前は、お前だけの」
彼に、狂気に、捕まってはいけない。
ニールはライルを壊してしまう。
「「ライル」」
俺の声と、もう一つの声が重なった。
身体が硬直して動かない。
薄暗い空の下、ギラギラと輝く翡翠の瞳が目の前に四つあった。
「………な、」
「久しぶりだなぁ、ライル…会いたかったよ、ずっと会いたかった」
慰霊碑の後ろから現れたニールは、いとも簡単にライルの身体を腕の中に捕らえる。
「ッ!!ライル!逃げろ!」
俺が走り出したと同時に、ニールの右手がバネのように跳ね上がった。
寸分の狂いもなく定められた銃口に、訓練された俺の身体は動きを止める。
「せつなぁ、お前さんズルイぜ?ライルに1番最初に会っちまうんだもんなぁ」
「ロックオン…」
「しかも、逃げろって?なんで逃がす必要があんだよ。ライルは、俺達と一緒にいることになったんだからな」
「に、兄さん、なのか?本当に…」
「あぁ、そうさ。ライル…あったかいなぁお前…」
「にい、さ…ど、どういう、ことなんだよ」
「ん?あのな、俺達は希代のテロリスト集団CB。…聞いたことあるだろ?」
「…兄さん、が?」
「あぁ、緑の機体、ニュースで見かけなかった?」
「…み、た…」
「うん。それでな?ライルが悪い子だから、CBに連れていくことにしたんだ」
まるで愛を囁いているかのような声音で、ニールはライルに語りかける。
動いて欲しい。
俺の足も、ライル、お前も。
ニールを跳ね退けて走ってくれ。
「わ、るいって…」
「カタロンなんかに参加して…俺がいない間に、俺が用意した箱庭から逃げただろ?」
「っ…」
「俺はライルの生きる未来を、幸せな明日を創るために戦ってたのになぁ。いつの間にかお前は俺から逃げてた」
「…そ、んな」
「だからもう決めたんだ。カタロンなんかにいるような悪い子にゃ、優しくしてやる必要ないって、な?」
ライルが、動く。
逃げようと一歩を踏み出した。
ニールの銃口は、一瞬で俺から外れる。
「っっが、あ!!」
ガクンと崩れ落ちるライルを抱き留めて、ニールは再度俺に銃口を定めた。
「ロ、ロックオン!!」
ライルの太ももから鮮血が吹き出し、地面を赤く染める。
撃った張本人は薄ら笑いを浮かべていた。
「ごめんな、ライル。でもすぐ治せるから」
「い、ぐぅっ…う、うう…」
「ロックオン、何でライルを!」
「逃げようとしたからだよ」
「貴様っ…」
「刹那、お前さんの休暇は三日だったな。俺は今すぐ宙に上がるけど、ゆっくりしてけよ」
ライルを引きずるように出口へ歩いていくニールに、銃を向けることが出来なかった。
確実に、動いた瞬間に俺はニールに狙い撃たれる。
「ライル、痛いよな、ごめんな。移動は車だから、もうちょい頑張ってくれ」
「う、あ、いや、だっ…離せ、よ、離せっ…」
「言うこと聞けって、俺はライルを愛してるんだから」
「ふざ、けんなっ…く、う、くそっ…」
ライルが、俺を振り返った。
「せ、つな」
俺は、ライルを救うことが出来なかった。
何ヶ月もかかり、やっと解き明かしたパスワードを入力する。
白で統一された室内には、同じくらい白い肌をした彼が座っていた。
「……アンタか」
「体調はどうだ、ライル」
「ん、悪くない。さっきすげー揺れたけど…」
「あぁ、戦闘があったからな」
「最近、よく当たるな」
「アロウズも力をつけている。ニールも…完全にトレミーを守り抜くことは難しくなってきたようだ」
「そっか…」
「だが、安心しろ。俺も全力でお前を護る」
「…サンキュ」
トレミーの一室に監禁されたライルのことは、CBの全員が黙認している。
それを認めさせる時の、今まで見たことのないニールの姿に皆圧倒されてしまっていた。
「兄さんは?」
「今の戦闘でケルディムの損傷が酷い。本人は無傷だ。だからイアンと共に修理作業をしている。当分帰ってこないだろ」
「だから刹那がきたんだ」
「あぁ」
髪を梳いてやると、ライルは気持ち良さそうに目を閉じた。
痩せて小さくなってしまった身体を見ると、罪悪感に胸が苦しくなる。
「…すまない」
「謝んなよ」
「すまない…」
「…謝んなって言ってんのに…」
「す…あぁ」
「アンタはなんも悪くない」
「俺はお前をココから出してやれない」
「うん」
「ニールから、逃がしてやれないっ…」
ライルの翡翠の瞳に自分が映った。
情けない顔をしている。
「いいんだ、もう。兄さんは独りぼっちで、ずっと寂しい思いをしてた…。
俺のためだけに、その手を汚して、戦ってくれてた。だから、俺は兄さんの傍にいるよ」
「ライル…」
ココに訪れるようになってから、徐々に変わっていくライルの心境を哀しく思う。
ニールと共に居続けたせいで、ライルは自分を殺し始めていた。
「兄さんのこと、愛してやんなきゃ…。たった一人の家族だ。俺だけが、兄さんの支えなんだろう?」
優しく微笑むその姿が痛々しい。
どうしても考えてしまう。
あの時、ニールより先にライルを捕まえていれば。
ニールが目覚める前に、ライルを見付けることができていれば。
彼の未来はもっと広い世界に繋がっていた筈だと。
「もう、兄さんが来るんじゃないか?早くココから離れないと、刹那が痛い目に遭っちまう」
「……あぁ」
優しいライルの掌が、俺の頭を撫でた。
「俺は、兄さんのことを愛してるよ」
壊してしまいたい、と
今では彼の気持ちが理解できる。
救えないなら
苦しませるなら
………自分だけを見てくれないなら
いっそ壊してしまおうか。
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酷く暗い話でした!!^^;
私はどうにも兄さんにライルのことを監禁させたがるな…。
平和な世界に置き去りにして、金を送りつけて大学に行かせていたっていうのはある意味、軟禁なんじゃないかなって思うんですよ。
ライルの意思で大学も商社も行ったわけだけど、そこには兄の願い通りにって想いがあるわけで…ニールはそれを利用した軟禁を、ライルに強いたんじゃないかなって…
補足説明しますと
ライルの未来を危ぶんだ刹那が、ライルを保護しようと考える。
ニールが再生治療を受けている間に、刹那はライルを探していた。
やっと見つけた頃にはニールも目覚めていて、一刻も早くとライルと接触したところをニールに抑えられる…と。
この刹那は、初めはただの庇護欲だったんですよ。
それがライルに関わるにつれて、徐々に狂った愛情に変化していったっていう。
・・・・・・・・・暗いな