*煙草と酒と、悪い癖*
*パラレル設定
*ニルライ、同居
*クラウスと仲良しなライル、クラウスを毛嫌いなニール
許せる方のみど〜ぞ
「吸い過ぎじゃないか?」
自宅の前で蹲っていた友人に声を掛ける。
その足元に散らばる、無数の煙草の吸殻を見ての一言だった。
「……クラウス」
「私の家だからって…容赦ないな」
「…悪ぃ」
「どうしたんだい?」
「……〜っ」
翡翠の瞳が、みるみるうちに潤っていく。
クラウスは慌ててライルの肩を掴む。
「ライル?!」
「う、うっ…クラウスウウゥゥウッ!!」
わーん、と。
大声を上げて泣き出した友人を、ただ呆然と見詰めた。
この子は今いくつだ?
確か私と同い年のハズだ。
では既に成人男性だ。
「ラ、ライル、落ち着け。頼むから落ち着いて泣き止んでくれ」
「あああああっ!うあああああ!!」
「……ど、どうしたものか」
困り果てたクラウスは、何事かと様子を伺いに顔を出した隣人のおかけで正気に戻った。
ライルの口を掌で覆い、強制的に声を抑える。
自宅の玄関を開けて中に連れ去った。
「う、ひ、うううっ…うあ、あうっ、いうううううっ」
「…ライル、とりあえず、紅茶でも飲もう」
いまだに泣き止む気配のないライルに、ミルクティーを差し出す。
ライルは泣きながらそれに口をつけた。
「ッ、あぢっ!」
「あっ、すまない!」
「うっ…うあああああっ」
「……はぁ、どうすればいいんだ私は…」
熱い紅茶で舌を火傷したことで、また涙腺を刺激したようだ。
クラウスは頭を抱える。
「いた、いっ…うえっ、あうううっ!ふ、うあ、あっ、いたっ、いいいっ」
「……ライル」
精神的に疲弊したクラウスは、強行手段に出た。
絶対にしないと、自身に言い聞かせていたことを実行に移す。
「ん、んう!」
ライルの後頭部を掴み、だらしなく開いた唇に噛み付いた。
舌を差し入れ、火傷した舌を舐め回す。
「ふ、うう、んむ、むー」
「ふっ……やっと泣き止んでくれたか…」
「……はん、そくっ」
真っ赤な瞳にじろりと睨みつけられ、クラウスは苦笑した。
「すまない。こうでもしなければ、君は泣き止んでくれそうもなかったんだ」
「………ん。そ、だな」
「本当にすまない」
「…いいよ、こっちこそ悪かった」
落ち着いたライルを見て、クラウスは柔らかく笑う。
(本当にライルは、キスが好きだな)
もう冷めてきたであろう紅茶を、ライルに促した。
「………で、何があったんだい?」
「…ケンカした」
「ケンカ?まさか、ニールと?」
「ん」
「………へぇ、また珍しいこともあるんだな」
「珍しくねーよ。ガキん頃はしょっちゅうさ」
「でも今は、君達は恋人同士じゃないか」
ライルは唐突にガクリとうなだれ、黙り込んでしまう。
どうやら地雷だったらしい。
先程までとは打って変わって、ライルは静かに泣き出した。
「……すまない、ライル。私が悪かった。泣かないでくれ」
「う、ふ…ううう…ひっ、う…」
もはやなぜ自分が謝っているのかはわからないが、とにかく平謝り。
「ライル、すまない。ライル…事情を話してくれ」
「に、さっ…兄さん、俺、浮気っ…」
「は?」
「うわ、きっ…してるって…!してな、のに!」
ライルの途切れ途切れの言葉でも、クラウスは長年の付き合いから意味を汲み取ることができた。
「君が誰と浮気なんかしてると、勘違いしてるんだ?ニールは」
「うっ、う、うぅ…」
涙に濡れ、赤くなった瞳がクラウスを上目遣いで見遣る。
「くら、ぅ、すっ…」
「……………は?」
なんとも間抜けな声が出たことか。
クラウスは笑顔が引き攣るのを感じた。
「お、れっ…クラウスと、浮気してなっ…!」
「……あ、あぁ、そうだな。私もした覚えはないよ」
「なのに、にーさっ…う、ううううっ」
「よしよし、わかったから。もう泣くな、ライル」
「にーさんのばかあああぁあぁっ」
三度目の号泣。
とりあえず家中の窓は閉めたから、もう思う存分泣かせてやることする。
「…毛布を持ってくるよ」
「やはり、な」
毛布を持ちリビングに戻ってきた頃には、ライルはソファーに倒れ込み寝息を立てていた。
泣き疲れて寝てしまうだろうと、クラウスの予測は当たる。
「全く、困ったものだ…」
ライルに毛布をかけ、ライルが残した紅茶を飲んだ。
着替える気すらおきない。
目の前でスヤスヤと眠るライルの顔に落書きでもしてやろうかと、そんな腹いせもする気がおきなかった。
「嫌だね」
朝食後、クラウスからの提案にライルはすぐさまNOを返す。
クラウスは盛大に溜息をつき、ライルを睨んだ。
「だが、このままでは埒があかない」
「でも嫌だ」
「君は私の家に住む気か」
「泊めてよ、兄さんが謝ってくるまで」
「……君は、本当に浮気していると疑われたいのか…」
他人に心を開かないライルに、ここまで信用され、懐いてくれたのは嬉しい。
だがしかし、このままニールに浮気相手として誤解を受け続けることは、生命の危機を意味するのだ。
「…私も、一緒に行こう。きちんと誤解を解くんだ」
「……兄さん、頑固だし…」
「大丈夫だ、説得してみせる」
「…クラウス〜」
ライルは子犬のような鳴き声を立て、クラウスの両手を握る。
「アンタやっぱ大好き!さすが俺の親友だ!」
「…あ、あぁ、ありがとう…」
誤解を受ける原因はライル自身にあるなぁ―と、クラウスは軽い目眩の中思った。
ライルは玄関の前で硬直してしまっている。
クラウスは優しくその背を押した。
「大丈夫だ、ライル。私を信じろ」
「…………ん」
ライルは恐る恐るドアを開け、自分の家へ一歩踏み出す。
「ライルッ」
「っ……」
物音に気付いたのか、リビングから焦った表情のニールが飛び出してきた。
ライルは可哀相なくらい身を縮こませている。
「た、ただ、いま…」
「………なんでソイツがいんだ」
敵意、よりも強いであろう視線を投げかけられ、クラウスの背筋には冷や汗が伝った。
「送ってきたんだよ。ついでに、話し合いでもしてもらおうかと思ってね」
「…てめぇと話す必要なんてないね」
「兄さん…」
「とりあえず、お邪魔するよ。ほら、ライル」
「あぁ…」
ニールはずっとクラウスを睨みつけたまま、リビングに戻る。
クラウスとニールが向かい合って座り、ライルはお誕生日席にちょこんと座った。
「……さて、ニール。君はなにか勘違いをしているようだが?」
「そうかい、てめぇにゃ関係ないことだぜ」
「関係あると思うな。ないと言うなら、その誤解を改めてほしい」
「…喧嘩なら買うぜ?」
「私は、話し合いに来ているんだ」
「話すことなんかない。もういい、帰ってくれ」
「私とライルは、親友だ。邪推されてはたまらない」
「…帰ってくれ」
「君が彼を愛するあまり、彼の周りにいる人間全てを排除してしまいたいという気持ちはわかる。
だが、それではライルは泣くばかりだ」
「お前には関係ないっ!俺とライルの問題だ!」
「では何故彼の言い分を聞かない!」
突如大声を出したクラウスに気圧され、ニールは言葉を飲み込んだ。
ライルは目を見開いて固まっている。
「……いいかい、ニール。愛しているなら、彼の全てを受け入れるんだ。彼も君を愛しているんだよ」
「…………兄さん…」
そっと、ライルは戸惑いがちにニールの袖を引いた。
「…俺が好きなのは…兄さんだけなんだ…」
「ライ、ル…」
「誤解だって、クラウスは友達だって…何回言っても…聞いてくん、なっ…」
ライルの瞳から、大粒の涙が溢れ出す。
「ラッ…」
「こら、ライル。泣いていては話し合いは出来ないよ」
「う、うっ…わかって、る!クラウスのバカ…」
仲介してやったのにバカ呼ばわりか、とクラウスは肩を竦めた。
「兄さん、兄さん…俺、兄さんだけが好きだ。
兄さんがっ…刹那達と仲良くしてんの、俺だって面白くねーのに…」
「ライル…………ごめん…」
ニールが、折れた。
優しくライルの頭を撫で、謝罪を口にする。
「俺が悪かった…。だから、泣かないでくれ」
「…おそ、いっ…ばぁかっ!」
「悪いな…」
「……全く、やれやれだ」
巻き込まれたクラウスは、和解できたならと、早々に立ち去ろとした。
ハタと気付いたニールがクラウスを呼び止める。
「ちょっと待ってくれ」
「…なんだい?」
「一つ、聞きたい」
「あぁ」
「ライル、携帯貸して」
「え?あ…」
ライルの携帯を受け取り、さっさと画像フォルダを展開し、目当てのモノを表示した。
そして携帯をクラウスに突き付ける。
「これは一体、どういうことなんだ」
クラウスは、ヒクリと表情を歪めた。
その画面に映っていた画像とは
ライルがクラウスに思いっきりキスをしているところで。
しかも、唇に。
そしてクラウスもまんざらではない表情だった。
これが、喧嘩の原因。
「………ライルに、聞いてないのか?」
「忘れたの一点張りだ」
「…………ライル…君は………」
二日酔いのような目眩と頭痛と疲労感が襲ってきて、立ち上がろうと浮かしていた腰を落とす。
「……忘年会の、時に…」
クラウスは深い溜息とともに語り出した。
「王様ゲームをしたんだ。君は知らなかったい?ライルは酔うと………」
目をパチクリさせるライルを、恨みがましく睨む。
「キス魔になるんだ……」
「………はぁ?!」
「え、えっ?嘘っ」
「この時君は前後不覚になるまで酔っていて、私もそれなりに酔っていて…君と私に、王様から命令が下り、キスをした」
「そうだったっけ?!」
「ラララライルっ!お前がキス魔なんてお兄ちゃんは知らないぞ!」
「俺だって知らないし!」
「酒のせいで上機嫌になっていた君は、意気揚々とディープキスをかましてくれた」
「うそぉぉおぉ?!」
「そもそもニール、明らかに第三者が撮った写真だと気付かなかったのかい?
それに、ライルの手にはしっかりとギネスが握られているし、
写真のプロパティーにも、年末の日付がちゃんと記載されている。
総合的に、冷静に考えれば…酒の席のおふざけだとわかるだろう……」
「っ…う、うわぁ…」
「俺、キス魔なのか…」
「君達兄弟はっ…お互いのことになると視野が狭まり過ぎる!」
クラウスはバンッと机を叩いた。
双子は揃って身を縮こまらせる。
「全く!寄宿舎にいるころから私は君の被害に遭っているし、今度はニールにまで恨まれる始末だ!」
「「ご、ごめん…なさい」」
「お互いに愛して合っているのは大いに結構だが、私を巻き込むのはやめて欲しい」
「「はい…すみませんでした…」」
「いいかい、今度からは喧嘩をする前に冷静になって話し合いをしなさい。私を巻き込むな」
「「了解…」」
クラウスはすっかり萎縮してしまった双子の肩を叩き、立ち上がった。
「…もう泣くなよ、ライル。君に泣かれるのは中々堪える」
「………ん、」
「それと、ヤケになって煙草を吸い過ぎるなよ。あれはさすがに吸い過ぎだ」
「わかった…」
「ニール、ライルを頼むよ」
「……言われなくても」
「彼が泣くのは、必ず君が関わっているんだ。自信を持て」
「オーライ」
「……はぁ、では。私は帰るとしよう」
「クラウスッ、ごめんな。ありがと…」
「……仲良く、な」
「ん!」
昨日から一緒にいて、ライルの初めての笑顔をクラウスは満足気に眺める。
手のかかる、しょうがない子だ。
そんなライルを放っておけず、随分と長いこと親友をやっている。
「またな、ライル」
「おう、今後ともよろしく」
ライルのふざけた返事に、クラウスは笑った。
「お前、俺と一緒に呑んでる時ほろ酔いくらいしかしねーじゃねーか」
「それは、兄さんが酒強いから」
「はぁ?」
「俺一人だけ酔っ払うなんて、屈辱的だ」
「…………お前なぁ…あっ」
「わっ、何すんだ!返せよ煙草!」
「ダメ、今日からしばらく禁煙!」
「なんでぇっ?!」
----------------------------------------------------------------------------
痴話喧嘩に巻き込まれるクラウスさんでしたとさ^^
ライルはテンションがおかしくなってる時に、キス魔になるといい。
イラついてる時は煙草を1ダース空ける勢いで吸います。
クラウスのことが嫌いな兄さんは可愛いと思います!!!