*よりどころ*



由希様に捧げます

*二期後設定
*クラライはすでにデキあがっていたけど、お互いのために別れました


許せる方のみど〜ぞ






『そう、休暇を貰ったんだよ。暫くは表立って動けねーからな』

通信先の彼は、今までとなんら変わりない飄々とした声音でそう言った。






「久しぶりぃ、クラウス」
「やぁ」

アロウズが解体し、世界に平和が訪れしばらく経った頃。
終戦後に音声通信のみでさっさと別れを告げた旧友が、ユニオンの青空の下に立っていた。

「…君は、全く…変わらないな」
「はは、アンタはちっと進行したんじゃねーの?」
「苦労が多いんだ」

私の額を人差し指で突きニヤりと笑うライルは、何も変わっていない。

彼が、この世界の平和の礎を築いたなんて誰も思わないだろう。

「休暇はどれくらいなんだい?」
「んー…まぁ、当分。休暇って言っても待機と変わらねーし。呼ばれりゃ戻りますよ」
「そうか…。でも、休暇になった途端、私に会いに来てくれるとは思わなかったな」
「…根に持ってるだろ」
「当たり前だろう。私と共に来てくれという誘いを簡単に“やだ”で断り、その上地上には帰らないなんて、顔も見せずに告げるんだからな」
「そりゃあ…」

ライルは気まずそうに後ろ首に手を回す。
彼が煙草を始める前にあったクセだ。

「真っ当な道を歩むアンタと、俺が会うのは、だめだろ」
「…まだ真っ当な道を歩む前だったんだが」
「だめなもんはだめなの。アンタの顔見たら決心揺らぎそうだしな」
「…!」
「ほらクラウス、さっさとホテル行こうぜ。腹も減ったし、喋れる内容にも限度がある」

まだ言いたいことは山程あったがライルの言い分も正しく、歩き出した彼の後ろに続いた。









ライルはルームサービスの料理を旨そうに次々と口に運ぶ。
ライルのイメージの中に食べる姿があまりなかった私は面食ってしまった。

「なんだよ、食べないのか?」
「あ、いや…君が酒以外で旨そうに食べる姿があまりに珍しくて」
「あー…あそこのな…」
「うん」
「食事、なんつか、味気ないんだよ。栄養、カロリー計算ばっちしで身体にはイイだろうけど」
「…まぁ、そうだろうな」

武装組織の提供する食事がやたら脂っこくて栄養の偏るものなハズはない。

「でもさ、内容は充実してくるみたいだぞ。なんでもいつ死ぬかわからない俺らには、食事だけでも満足いくものをっていう。今はじり貧だからなぁ」
「……そうか…」

“いつ死ぬかわからない”―そのライルの言葉に胸が締め付けられる。
ステーキを切る手を止めた私の額を、ライルは肩を竦めてから指で弾いた。

「つっ」
「そんな顔すんなよ。それは、皆同じだ」

風の止んだ湖面のように澄んだ碧の瞳が、私を映していた。
どうしようもなく、切なくなる。

「はは、アンタは昔からお人よしだな」
「君には負けるよ」
「まさか」

全人類のために、戦い続ける道を選んだ君には。












久しぶりに会った旧友は、相変わらずだった。

砂まみれで戦っていた時から、政治の中心に移動した今でさえも
彼は変わらずずっと他人のために生きている。



「シーリンは国に帰ったんだっけ」
「あぁ、マリナ姫の力になりたいと言ってな」
「捨てられたんだな」
「……捨てられたわけではない」
「ははっ、わーかってるよ」

懐かしい感覚だ。
クラウスを茶化して、お互いに笑う。

久しぶりの安息感。

「今そっちは大変だろう」
「ん、まぁね。色々あったから…。そっちこそ新政権の樹立で忙しいだろ」
「それなりにだ。こうして一日オフを貰える程度には落ち着いたさ」

お互いの近況をぽつりぽつりと語って過ごす穏やかな一日。
BGMはニュース番組で、政治的なものからスポーツに娯楽まで。
話題に乗ったり突っ込んだり、学生時代に戻ったように二人で話し続けた。

「ふぁ…」
「ん?眠そうだな」
「……ちょっとな」
「寝ても構わないが」
「まさかぁ、勿体ないだろ」
「…君は、たまにとんでもない殺し文句を言うな」
「ははは、だって本音だし」
「だから……私も男なんだからな」
「嫌ってほど知ってるさ。でももうしねぇよ」

クラウスが苦しそうに押し黙る。

「なぁ、こっち」
「ん?」

隣をポンポンと叩いてココに座れと指示する。
渋々といったようにゆっくりと隣に腰を下ろしたクラウスの肩に、頭を乗せた。

「…ライル」
「肩貸せよ。寝ないから」
「寝ても構わないよ」
「寝ないって」

暖かい。
コイツは昔から体温が高くて、寒い日はよくくっついた。

次はいつ、この温もりに触れられるだろうか。












「……ライル?」

会話がぽつぽつと途絶えていき、規則的な寝息に変わるまでそう時間は掛からなかった。

「寝ないと言っていたくせに」

顔にかかる髪をそっと払う。
寝ているくせに穏やかには見えない表情は、彼がいる場所がそうさせるのだろうか。

それでも、私の傍で気を許してくれる。

「ライル…愛してるよ」

起こさないように気をつけながら、栗色の柔らかな髪に唇を寄せた。





「…悪ぃ」
「ん?起きたかい」
「ん…寝るとは思わなかった。今何時?」
「まだ夕方だよ」
「あー…クラウスは、時間平気なのか?」
「一日オフ、と言っただろう?」
「じゃあ夜もいいんだな」

ライルは頭を肩に預けたまま、そう呟く。
その言葉にドキリとしてから、緩く首を振って思い直す。

「明日の朝まで大丈夫だ」
「…フッ、今アンタやらしーこと想像したろ」
「なっ」
「ムッツリだもんなぁ、昔から」
「…ライル」
「おっと、ノるなよ?」

ライルはおどけた調子で身体を離し、コートをかけた場所まで移動した。

「出掛けるか?」
「定時連絡。ちょっと待ってて。終わったらバーにでも行こうぜ、久しぶりにダーツ勝負」
「君に勝てるわけないだろう」
「ハハッ、負けたら酒奢りな」

閉じられた寝室の扉を見詰め、肩を落とす。

「全く…君の甘えはわかりにくい」

出掛けるために、緩めていたブーツの紐を締め直した。










いつも、いつまでも

地上に唯一残る君のよりどころになろう。
















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由希様に捧げます!!!

本人様に限りお持ち帰り自由です。

テーマは“「クラウスの前だと安心しちゃうライル」で久しぶりにクラウスと会って、うっかり寝ちゃったりするライル”でした!
完成がだいぶ遅くなってしまいすみませんでした!;

うっかり寝ちゃう可愛いライルが表現できなかった…!(爆死)
なんだかどうしても二期後のライルは男前になってしまう!!!
これでもライルはもの凄く安心してるんです…!ご飯もぐもぐ食べる姿とかあんまり他人の前では見せたくないですしね。
肩借りて寝ちゃうとかもクラウス以外はあり得ないんです!^^

ライルがCBに入る時にキッパリと別れを告げたと思います。ライルから。
クラウスも駄々をこねるような子供ではないので、静かに了承したはず。
二人は肉体的より精神的に深く繋がってる関係が理想です^^

リクエストありがとうございました!
久しぶりのクラライ楽しかったです!!



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