*月のひと*
夜月様に捧げます
*なんちゃってかぐや姫パロディ設定
許せる方のみど〜ぞ
「ライルは俺の嫁にする」
「いいや僕のだ」
「私のものです」
「お前らいい加減にしろよっ!!ウチの可愛いライルは絶対やらねーからな!!」
「……あのなぁ…」
三人の男に求婚されているのは、ライルという姫(男だが)であった。
ライルと同じ顔をした男が庇うように前に仁王立ちしている。
彼は光り輝く竹の中から生まれたので、世間ではかぐや姫と呼ばれていた。
この世ならざる美しさに国中の男達がライルを娶ろうと屋敷に押しかけてきたが、育ての親であるニールに追い返され、今残るは三人の男達である。
「何故だニール。ライルももう年頃だ、結婚した方がいい」
「そうですよ。幸せにしてみせます」
「私の元に来い、ライル」
「だからやんねーっつってんの!」
同じ顔の男、ニールは、ライルの育ての親であり彼を溺愛していた。
「最初から最後まで独り占めなんてズルイ…」
「うるせぇ!なんと言われようとライルはやらん」
「あの…俺もよく知らない奴のとこに行くのはちょっと……」
「ほら見ろ!」
「今から知ればいい」
そう言ってさりげなくライルの手をとる刹那。
その手を横からティエリアが叩く。
「抜け駆けはよくないな」
「そうだよ刹那」
「コラてめぇらライルに触ンな!」
ニールはしっかりとライルを抱きしめ防御態勢に入った。
そんなこんなで毎日のように三人の男との言い合いは続き、ライルはいい加減うんざりしてくる。
例えどのような無理難題を押し付けようとも、この常人離れした三人はやってのけてしまうので、追い返すことも、百歩どころから一億万歩譲って一人に決めることも出来ない。
そもそもニールにライルを嫁に出す気が更々ない。
ライルもライルで、誰、とも言わず曖昧に返事を濁し続けていた。
「ライル、最近よく空を見上げてんな?どうした?」
「ん…いや別に、なんでもねぇよ」
「……そうか、やっぱこうも毎日アイツらが押しかけて来ちゃあ疲れるよな!よし任せろライル!俺がアイツらを狙い撃ちにして…」
「疲れるけど犯罪はダメだって、兄さん」
「そうかぁ?アイツら撃っても死なない気がするんだよなぁ…」
「はは、確かに」
ライルから笑顔がふと消え、また満天の星空へと視線をやる。
そんなライルの様子を見て、ニールはその肩を抱き寄せた。
「…兄さん?」
「なんでも言えよ。どんなことを聞いても、俺はお前を見捨てないし手放す気はないからな」
「…どうにもならないこと、かもしれなかったら?」
ニールはそっとライルの唇に唇を寄せる。
砂糖のように甘く囁くように、告げた。
「どうにかするさ、必ずな。だから安心しろ、ライル」
「ははっ、アンタのその自信はどっから湧いてくんのかねぇ」
「そりゃあ、お前を愛する気持ちからだな」
「そりゃどーも」
ニールはライルを正面から抱きしめ、自身の肩に顔を埋めさせる。
その瞳に、星空を映さないように。
ライルの代わりに空を見上げ、苦しげに目を細めた。
「ずっと一緒にいような、ライル…」
そのニールの言葉に、ライルは返事をしなかった。
「最近ライル元気ないよね」
いつものように集まった三人で、ライルを待ちながら会話をしていた時、アレルヤがふとそう口にする。
「確かに…様子がおかしい」
「貴方達を断り切れなくて疲れているんじゃないですか?」
「ティエリアは自信家だね…」
「ニールのブラコンぶりに疲弊してるのかもしれない」
「有り得る」
「コラコラコラ、お前ぇらなに自分のこと棚に上げてんだ!」
客間へと入ってきたのはニール一人だった。
「ライルは?」
「最近夜眠れないらしくてな…今昼寝してるみたいだから、起こせねぇ」
「…なにか、悩みでもあるのでしょうか…」
「それなんだけどな……」
ニールはその場に腰を下ろし、両手を組んで額に当てる。
暫く考えてから、ゆっくりと口を開いた。
「…あいつ、夜になると空を見上げて切なそうな顔するんだ」
「空を?」
「ここ最近になってからだ。今までは全くそんなことなかった。お前らが嫌で途方に暮れてるもんだと思ったが違うらしい」
「…………」
「…空、か。そういえば、そろそろ満月ですね」
ティエリアがそう言うと、刹那がぱちくりと瞬きをした。
「満月」
「どうした?刹那」
「…わからない、が…俺も、ここ最近夜空からなにかを感じるような…」
「なにか、って?」
「……わからない。ただあまり、歓迎したいものではない、ような…」
「満月に近付くにつれ、ライルの様子がおかしくなり、刹那も何かを感じている…と」
四人は黙り込み、しばし考え込んだ。
ニールが大きく溜息を漏らし、後ろ頭を掻く。
「とにかく、だ!俺はなにがあろうとライルを守る。絶対にだ」
「俺もだ」
「当たり前でしょう」
「そうだね」
「お前ら…そんなこと言ってカッコつけたってライルはやんねーからな!」
ニールがそう叫ぶと、三人はフッと笑い口々に抗議を始めた。
「兄さん?みんな来てんの?…て、なんだぁ?騒がしいな…」
ライルが入ってきた途端、四人の言葉は一斉にライルへと向く。
飛び交う愛の言葉に、ライルは恥ずかしそうに笑った。
そして、月がほんの僅かに欠けた夜。
ライルはついにポロポロと涙を零した。
「ラ、ライル?!」
「う、ぅえ、ううっ…」
「どうした?どっか痛いのか?辛いのか?」
ニールはライルを抱き寄せ頭を撫でる。
ライルはニールの背に必死にしがみつき、嫌々と頭を振った。
そんなライルを宥めるため、背中を摩り耳元で何度も大丈夫だと囁く。
「にい、さっ…にい、さん!」
「大丈夫、大丈夫だ、ライル」
「や、だ…うう、なんでっ…」
「大丈夫だから…」
しゃくり上げるライルを抱え、月明かりの届かない部屋の奥へと移動する。
膝の上にライルを乗せたまま、ニールはライルの瞼に何度もキスをした。
「ライル、話してごらん。俺は大丈夫だから」
「う、う……で、もっ」
「なにがあっても、お前を守る」
「……にい、さん…おれ…」
ライルは意を決したように、ゆっくりと口を開く。
顔を見て話すのが辛いのか、ニールの肩に顔を埋めたまま小さな声で語り出した。
ライルは月の住人であり、明日の満月の夜、月から使者が訪れ、帰らなくてはならない、と―――。
「て、わけだ」
翌日、ニールは訪ねてきた刹那達に事情を説明した。
「この世の人ではないだろうなと、思ってはいましたけど…」
「月の…」
アレルヤとティエリアが眉間に皺を寄せ呟く。
刹那はまっすぐにニールを見詰め、口を開いた。
「ライルは、帰りたいのか」
「……いや、帰りたくない、ここにいたい、と言って…昨夜、泣いたんだ」
ニールが目を伏せ苦しげに言う。
しばしの沈黙―刹那がおもむろに立ち上がり、三人を見回した。
「ならば、やることは一つだ。ライルを守る」
「…刹那…」
刹那の凜とした強い声音に、三人も力強く頷く。
「お前らが逃げ帰ったって、俺一人で守るつもりだったけどな!」
「ふふ、僕らが逃げ帰るなんて思ってたんですか?」
「有り得ないな」
四人は拳を突き合わせた。
月が昇り、どんどんとその輝きが増していく中、刹那達は屋敷の庭に立っていた。
その背後に、ニールとライルがいる。
「…兄さん、やっぱり無理だ。あいつらにヒトが敵うわけねぇよ」
「やってみなきゃわからんだろ」
「わかるだろっ!ヒトじゃないんだぞ!」
ライルは刹那達に向けて声を上げる。
「刹那!もういい、帰ってくれ…!アレルヤも、ティエリアも!俺は、お前らが傷つくとこなんかみたくない!」
「そんなの俺達も同じだ」
「え…?」
「ライルを泣かした奴を、許せるわけないよ」
「1番傷ついているのは貴方でしょう」
「お前ら…っ」
ニールがライルの肩を軽く叩き、片目をつぶってみせた。
「ライルを愛してる、皆それしか考えてねぇよ」
「兄さん…」
その時、月が一際強く光り輝いた。
「ッ!」
「っ来たか!」
『ライル、約束の日だ』
まるで脳に直接語りかけられているような声に、刹那達は困惑する。
いち早く我に返ったニールが銃を構えた。
「来るな!ライルは帰らない!!」
『ライル…こちらへ』
「行かせねぇ!!」
「う、くっ…」
脳に響く声に、ライルは弱々しく首を振る。
『…約束を、違える気かい?ならば、いたしかたないね』
「!避けろ!」
刹那が叫んだ瞬間、光の玉から矢が降り注いできた。
ニールは自身を盾にライルを守り、三人もそれぞれ矢に対抗する。
『人間風情が…僕らに勝てるとでも?』
「勝つ、そしてライルを守る」
『随分と愛されて…たかが数年で、ライルのどこを愛したんだかね』
「愚問だな。全てだ!」
「一目惚れってやつかな?」
ティエリアとアレルヤが堂々とそう叫んだ。
光は一瞬怯んだように弱くなったが、次の瞬間今まで以上に光り輝く。
「ッッ!ぐ、」
「な、んっ…」
「お前らっ!」
前にいた三人が、まるで重力が加算されたようにじわじわと身体を地に近付けていった。
「やめろ!!」
「ライル!出るな!」
「ぐあっ」
ティエリアが地面に伏し、呻き声を上げる。
刹那もアレルヤも歯を食いしばり耐えるが、方膝を地につけ今にも倒れ込みそうだ。
『ライル、このままでは彼らが潰れてしまうよ。助けたいなら、わかるだろう?』
「っ…みんな…」
「来る、なっ…ライル!」
「僕達は、へ、き…です…」
「でも!っ、兄さん!離せよ!」
「ダメだ!!」
「ニール!!!」
「俺達はお前を守りたいんだ!!!」
「っ…!」
ニールの言葉に、ライルは動きを止め、俯く。
「…下がってろ、絶対守る」
ニールは光の前に一歩踏み出し、銃の引き金を引いた。
しかし弾丸は呆気なく弾かれ、加算された重力により地面に突き刺さる。
「チィッ」
『姿の見えないものにそんな攻撃、無駄だと思わないのかい?』
「やってみなきゃわかんねーな!」
『ヒトは…浅はかだね』
更に光が増し降り注ぐと、ニールはがくんと地面に膝をついた。
「ぐ、くっ!!」
「にいさっ…」
『もういいだろう?ライル、月へ戻るんだ』
「行かせない!」
「ライル、逃げろ!」
「っ…おれ、は…」
ライルはふらりと前へ足を踏み出す。
「「「「ライル!!!」」」」
ニール達にかかる重力はライルにはかからず、軽々と足を進め光の前へと立った。
「やめろ!!ここにいたいって!お前そう言っただろ!!いていいんだ!!いてくれよ!!ライルが、ライルがいなくなったら俺はッッ!!!」
「行かせ、ないっ…!」
刹那が歯を食いしばり、立ち上がる。
一歩一歩、足を引きずるようにライルへ近付こうともがいた。
刹那の姿を見て、三人も必死に体を起こす。
『さあ、ライル』
「…俺は」
ライルがゆっくりと顔を上げ、月を睨みつけた。
「帰らない!!!」
『なっ』
「みんなにも、もう戦わせねぇ!」
ライルが四人を守るように両手を広げた瞬間、重力が消えた。
「っ、ライル!」
「俺はここにいる、俺の居場所はここだ!」
「ライル、貴方という人は…」
四人はライルに駆け寄る。
そして、月を見上げた。
「感情のねぇアンタらなんかんトコには、戻らない!」
『…本気なのかい?』
「ああ!」
『…君と彼らは共に生きていけないよ。君は独り残される』
「それでもだ!俺はここにいる!」
『彼らに取り残されても、どんなに願っても、君はもう天には昇れない』
「それでいい、兄さん達のいる、ここにいる」
月の光が、徐々に弱まっていく。
『………好きにするがいい』
風に消えるような小さな声を残し、月は雲に覆い隠された。
「……終わった、のか?」
「あぁ…」
「ふ、意外とあっさりですね」
刹那達はドカリとその場に座り込む。
ニールはいまだ空を見上げ続けるライルを、強引に抱きしめた。
「おわっ!」
「ライル!ライルライルライル!よかった!ライル!!」
「ちょ、兄さん、苦しいって」
「あ、ずるい!」
刹那達も一斉に立ち上がりライルに抱き着く。
ライルはぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、笑い、一粒だけ涙を流した。
「お前ら!苦しいって!」
「ライル、決心はついたか」
いつものように三人から愛の言葉を浴びる程かけられ、ライルは困ったように笑った。
「まぁ、一応?」
「なにっ?!お兄ちゃん聞いてないぞ?!!」
ライルの初めての返答に三人は身を乗り出し、隣にいたニールは慌てふためく。
自分の顔を覗き込み、情けなく眉毛を下げているニールに、ライルはそっと顔を寄せた。
「………え」
「「「な」」」
「…いまんとこ、兄さんが1番、かな」
ライルは頬を染め触れあった唇を手の甲で押さえながら、呟いく。
「らっ、らいるーーー!!!」
「ぅおわぁ!!!」
感極まったニールがライルに抱き着きそのまま押し倒し、まるで許可がおりたとばかりに顔中にキスをした。
「……今は、と言ったな」
「うん、今は、だって」
「確かに今は、と言った」
三人は顔を見合わせ、同時にライルにしがみつくニールを引っぺがしにかかる。
「いずれ俺が1番になる!」
「私は今すぐにでもなる自信があります!」
「僕だって!」
「なーっコラ!てめぇらせっかくのイイトコ邪魔すんな!!!」
「ちょ、重いって!刹那!アレルヤ!ティエリア!兄さん!!」
いつもの日常が、穏やかに始まった。
----------------------------------------------------------------------------
夜月様に捧げます!!!
本人様に限りお持ち帰り自由です。
テーマは“かぐや姫パロディ(ライルがかぐや姫)で、マイスターみんなでライル争奪戦→最後はニルライで甘々”でした!
完成がだいぶ遅くなってしまいすみませんでした!;
かぐや姫が難しかった…。そしてなんか争奪戦してなくてごめんなさい!!!協力戦になってしまいました…!orz
かぐや姫を調べていたら、月の住人VS姫の取り巻きのがしっくりきたので^^;
協力戦が楽しかったです!やっぱりマイスターズなので!刹那達が揃うと絆モノが書きたくなってしまいますね^^;
ちなみに月の住人はイノベさん達を意識しました(笑)
ライルに流れる時間はヒトとは違うので(イノベーターみたいなもん)、ともに生きることは出来ないって感じにもしてみたり。
リクエストありがとうございました!
マイスタズで和もの?パロしたの初めてで楽しかったです!(笑)
嬉しいお言葉もありがとうございます、頑張ります!
Return