*ファントムがする約束*



*最終回まで見ていない頃に書いたものなので、矛盾だらけです
*まさかライルが寄宿舎にいたなんて…
*ニールにあんなにコンプレックス抱いてたなんて…
*CBとしての決意はあんな風に決まるなんて…

捏造も甚だしいです。許せる方のみど〜ぞ








右目が鈍く痛んだ。
後頭部が重たい。

これは典型的な疲労だろ。

ロックオンはメットを外し、座席脇に放った。

「っはぁ〜〜〜〜〜あぁ、疲れた…」
「キュウケイ、キュウケイ」
「そ、休憩な。ハッチ開けてくれ」
「リョウカイ、リョウカイ」

最近いくら訓練しても命中率が上がらない。
ロックオンは焦っていた。

「……兄さん…アンタはいつも先に行くよなぁ」

初代、ロックオン・ストラトスである兄の狙撃能力の高さに追いつけない。

自分だって銃は得意なのだ。

でも兄には勝てなかった。

「…兄さん」

戦いたいんだ、俺も。

この世界と

このガンダムで

歪んだ世界に、弾丸を―



俺から全てを奪った脆い世界に破壊と再生の楔を

「………ニー、ル」

ふわりと無重力空間に出たような浮遊感を感じた時には、ロックオンの意識は夢の中に堕ちていた。







「ライル、ラーイル」

そっと自分を呼ぶ声が聞こえる。
重たい瞼を持ち上げた先には、15年程前の自分と同じ顔があった。

「…なに、ニール」

幼い彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ライルの肩を揺する。

「隣あけて、一緒に寝よ」
「……もうすぐ15になる奴が言うな…」
「あっコラ、寝んな!入れろってば」

しつこく肩を揺すられ、ライルの眉間にギッと皺が寄った。

「…眠い…」
「…寒いんだよ、ライル。一緒に寝て」

懇願するような響きを滲んだ声に、意識がふわりと浮上する。
ぼやける視界に半身を収めると、こっちまで寒いような気になってくるから困るのだ。

「布団から出るから、寒くなるんだ」
「布団が暖まらない。ライルと一緒なら、あったくなるハズだ」
「なんつー屁理屈…もう、わかったよ…入れば」
「サンキュ!」

ニールは嬉しそうにライルの隣に身体を潜り込ませる。
重なるくらい近くに枕を置いて、嫌そうな顔をしたライルを捕まえた。

「おいっ」
「ライルあったかい」
「苦し…っひぁ!冷たっ…バッカ、ちょ、ニール!」

正面から抱きしめて、パジャマの中に冷えた手を滑り込ませる。
生理的な震えで跳ねる身体を押さえ付けて、ニールはライルの体温を奪っていった。

「〜〜っ…ニールなんて大嫌いだ」
「俺はライルが大好きだ」
「ブラコン」
「上等」

間近で見詰めた空色の瞳に、自分が映る。
瞳の中の自分はひどく間抜けな顔をしていた。

「……負けたぁ…」
「何が?」
「色々とさ…寝ようぜ、ニール」

ライルもニールの身体に腕を回す。

「…あったかい」
「うん、あったかい…」

額をくっつけて、瞳を閉じた。
ニールの掌が何度もライルの頭を撫でる。

その心地良い感覚に、ライルは再び眠りの底に堕ちていった。

「……大丈夫だ、ずっと傍にいる」

何言ってんだ、寂しくて布団に入ってきたのはニールだろ

なんで…そんなこと…



ライルの反論は、胸の中で中途半端に終わった。







「…ロックオン?」

格納庫のダブルオーの調子を見に来た刹那は、隣のケルディムのハッチが開いている事に気付く。

『狙撃の訓練か?』

ふわりとケルディムの前に降り立った刹那は、中を覗き込み息を呑んだ。

「ッ?!」

くたりと背もたれに身体を預け瞳をつぶるロックオン―ライルと、屈み込むようにしてライルの頭に、顔に掌を滑らせ撫でているロックオン―ニールの姿を見たからだ。

「ロックオ…!」

ぼやけたような姿のニールは刹那を振り返り、悪戯っぽくウィンクをして、人差し指を立てて口元に持っていく。

静かにな

と、言うような仕草。

刹那が手を伸ばそうとした瞬間、ニールは幻のように消えた。



「っ……」
「…ん」

身じろいだライルに気付いた時には、二人の目線はバチッと音を立てるかのように合う。

「……せつな…」
「…起こして、すまない」

しかもこの至近距離だ。
ライルの思いっきり訝しむような視線にいたたまれず、目を反らした。

「…なんだ、刹那だったのか?」
「?何のことだ?」
「俺の頭触ってたろ」
「……いや」
「ん?だって、撫でられてたような…つか、あ〜〜」

バツが悪そうに頭を掻くライルに、今度は刹那が訝しげな視線をやった。

「……兄さんの、夢を見てた。俺の頭何度も撫でてくるんだ、あの人」

刹那はハッとする。
困ったように笑うライルに胸のどこかが締め付けられた。

「そんな夢見たの、お前さんのせいかと思ったんだが?」
「…いや、何もしてない」
「…へーぇ、そうかい」

信じていないであろうライルに弁解しても無駄だと、刹那は半分入っていたケルディムのコックピットから出る。



ライルに背を向けて、先程のことを思い出し、一人微笑んだ。

「…本当に、ニールが撫でていたとは思わないのか?」
「あ?なんか言ったか?」
「……何も」
「?なんだよ」
「ただ、お前は愛されているなと、思っただけだ」
「……はぁ?」

振り返り見たライルの表情は本当にニールにそっくりで

刹那はより一層笑みを深くする。

「お前は、愛されている。ニールにも、俺にもだ」
「…………………え」

白い肌が薄赤く染まっていくのを見てから、刹那は地面を蹴った。





守るさ、ニール。

お前が愛したたった一人の人間を。

お前が俺に託したライルの未来を。

個人的な感情がそこに含まれても、お前は許してくれるか?



愛しいと感じる心を、殺さなくても…





「…なんなんだろうな?ハロ」
「ロックオン、セツナ、ロックオンノコトスキ!ロックオンノコトスキ!」
「んぉぉっ?なんかややこしいぞ?お前が言うロックオンってのは…」
「ロックオン、スキ、ロックオンダイジ、ダイジ!」

パタパタする耳に少し癒されながら、ライルはまた背もたれに寄り掛かった。

「……兄さん、あんたもしかしてココにいるのか?」

暖かみを感じた頬に、自身の掌を当てる。



ニールの空気が



残ってる―



「…傍にいるって、約束しろよ…ニール」

そっと掌に掌が重なった気がした。



夢の中でニールは大丈夫だと言った。

ならきっと、大丈夫なんだろう。



俺はここで、世界と戦うんだ。

ロックオン・ストラトスとして

ライル・ディランディとして

ニール・ディランディとして

ガンダムで―













----------------------------------------------------------------------------
3〜4話あたりで、すっごく妄想して初めて書いたOO小説でした。
あの頃はまだ期待してた…ニールはライルのとこに真っ先に化けて出てきてくれると思っていたのに…orz
きっとライルが気付かないだけでCB加入した瞬間からライルの背後霊になってたよ。

Return